第5話 タイマン

バァン!

 「アザー、いるんでしょ!!でてきな!!!来てやったわよ!!」


とても一国の王族がする振る舞いとは思えず、アジト中にいた人はもちろん、4人組もぽかんとしている。

そんな中、全然会いたくなかった懐かしい声が、聞こえる。


「やあ、リリー。会いたかったよ。」


なにが、「やあ」だの「あいたかった」だの。

別に、お茶会しに来たわけじゃないのだから、私はさっさとこの場を去りたかった。


「しょうもないこと言ってないで、人質解放しなさいよ。気持ち悪いわね。」


「アザー様になんてことを」

「無礼者が。人質ころしますか?」

「まあまあ、落ち着こう。」


そう言って、アザーが家臣らの怒りを鎮める。


こうみると、えらくなったもんだな。おまけに、ただのわがままなガキじゃなくなったのか?

あの頃のように、馬鹿なままだったら、扱いやすかったのに・・・

違う意味で少しがっかりする。


「こんなことまでして、犯罪だってわかってるの?」


「ああ。わかってるさ。リリー結婚しよう。」


「はあ?しないに決まってるわ。あんたみたいなあんぽんたん。」


「そうやっていつも断られるから、人質まで用意してるのさ」


・・・こいつ、人の命を何だと思ってやがる。

馬鹿な理由と、倫理観のなさに苛立ちが募る。


「人質解放してくれないかしら?いつからこんな卑怯者になったの?」


「それが人にものを頼む態度かい?」


空気が凍りつく。


「チッ。土下座でもしたらいいの?」


「まさか!そんなのなにもうれしくないよ!僕はただリリーと一緒に過ごしたいだけなんだ」


「本当にそんなくだらない理由で、この計画を?」


「くだらないなんてひどいなあ」


ああ・・・、だめだ。埒があかない。本当にどうすればいいんだ。


人質がいる以上どうしようもないし頭を悩ませている時、

「ひゅーん!ドーン!」

という音が外から聞こえてくる。


「なんだ?この音は?」

とアジトにいた人が騒ぎ出す。


この音はまさか・・・!

花火だ!水源の近くは、木が多いから、こういう外れの村からどでかいのを打ち上げるのだ。


まずい。ここにいるのはほんとうにまずい。

そう、花火を打ち上げるときは、近くの住民を、城の近くの宿泊施設でくつろいでもらい、現場には、職人と水関係の能力もちで雇われたものしか近寄ってはいけないのだ。

誘拐した4人組はどうだ?人質がとはいえ、なにかしらの罪に問われるだろう。


ええい!どうにでもなれ!博打だ!


「花火よ、ここにいるのはまずいわね。あなたたち一生この国の牢屋で過ごしたいの?」


「適当言ってるんじゃねえ!」

馬鹿の家臣が、噛みついてくる。


まあ適当いってるんですけども


とおもっても言わない。そこで、4人組に目配せする。

きっとここで、途中の話し合いが活きてくる確信があった。


「お、おい。ほんとだぞ。」

「この国の法律は厳しいんだ。規律わ守れない奴は牢屋いき。じゃあ聞くが、今日この村のやつとあったか?」

「そもそも今日は、入国禁止だ。」


アザーの家臣たちの顔が青ざめた。

「アザーさま、やばいっすよ」

「というか、貴様ら、なんで事前にそのことを言わなかった」


「今揉めていても、みんなで仲良く牢屋生活ねえ」


「そ、それだけはいやだ・・・」

「この国の姫なんだから、どうにかしてくれよ。」


どいつもこいつも骨のない奴らばっかだ。頭を抱える。


「それが、人にものを頼む態度なの?」


一気に形勢逆転だ。言い返してやった。気分は最高潮だ。


「リ、リリー様、ど、どうか」


「あんたの家臣ピーピーいってるけど、アザー。」


「あ、ああ。」


だめだ。話にならない。

こんな風な、責任の伴う判断を下す経験が浅いのだろう。


「まず、人質を解放しなさい。話はそこからよ。」


「わ、わかった。おい、あれを解除しろ。」

「はい、わかりました。」


うまくこの場を乗り切れそうで安堵する。

しばらくすると、馬鹿の家臣が帰ってきた。


「アザー様、解除完了いたしました。」


「よし、リ、リリー。つぎはどうしたら・・・」


「あんたたちほんとになさけないわね。ちょっとくらい自分の頭で考えたらどうなの?」


「本当に悪いと思ってる、すまない、たすけてくれ。」


情けなくて、ため息がでる。だけどここで恩を売っておくべきだと思い堪える。


「しょうがないわね・・・」





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お金が欲しくて、物書きになったら、小説の世界に転生してしまいまして。。。 九条もなか @9zyoumonaka

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