熟年高校生カップル
タヌキング
以心伝心まるで夫婦
俺の名前は鈴木 翔太(すずき しょうた)。高校二年生、どうやらこの物語の語り部らしいが、俺がこの物語の主役というワケではない。
主役とヒロインは嵐山 武(あらしやま たけし)と海原 静香(うなばら しずか)という俺の幼なじみの二人である。
この二人は付き合っているんだが、付き合っている期間が長い、何と齢五歳の頃から付き合っているのである。
「しずかちゃん、すきです。つきあってくだちゃい。」
「うん、いいよ。」
こんな子供じみたやり取りをしてから十二年間ずーっと付き合っているのである。倦怠期もあったかもしれないが、それを乗り越えて最早二人は一心同体と言っても過言では無い。
そんな二人の日頃の日常を切り取ったのが本作品なのである。
昼休み、学校の屋上。今は屋上を開放している学校が少ないというのに、何故青春物の物語になると屋上が出てくるのだろう?という疑問があるだろうが、そんな小さいことを気にしているとロクな大人に成らないぞ。
ともかく昼休みに学校の屋上で俺と武と静香は、いつもの様にお昼ご飯を食べている。まずは二人の会話に耳を傾けてみよう。
「ねぇ、さっき三組の峰田さんとすれ違った時、胸チラ見してたでしょ?」
「見てねぇよ。」
静香の追求に不機嫌そうに答える武。
全く些細なことで言い合いになる二人である。
ちなみに峰田さんというのは驚異のFカップ女子高生であり、我々青少年は彼女の胸に釘付けである。勿論俺だって例外では無い。
「いや、見てたね。気付いてないと思ってるの?」
「うるせぇな、仮に見てたとしても良いだろ?デカい胸が近くにあったら男は皆見ちまうんだよ。そういう生き物なの。」
「ほら、やっぱり見てたんじゃない。全く男って奴は大きな胸が好きなのね。あぁ、どうも貧乳でごめんなさいね。」
「ちっ、また貧乳自虐かよ。いい加減聞き飽きたぜ。」
こんなやり取りをしながらも、静香は魔法瓶の水筒からコップに味噌汁を注いで武に手渡し、武はそれをずずぃとすすっている。阿吽の呼吸の流れである。
武のお弁当を作るのは静香の役目であり、彼女は高校になってからは勿論、遠足、運動会に至るまで全て弁当を用意しており、一度も欠かしたことが無いのだから大したものである。
「ねぇ、今度の修学旅行は京都じゃない。清水寺に行ってみたいわ。」
「清水寺か、俺は一度行ってるんだよな。銀閣寺にしようぜ。」
「そりゃアンタは家族旅行で行ってるかもしれないけど、私は京都に行ったこと無いんだから清水寺行ってみたいわよ。」
「分かった、分かったよ。まぁ清水寺は行くとしてだ。お土産はどうする?俺は俺の家と従妹のよっちゃんに買うけど。」
「アタシのところは家と陽子おばちゃん、それとこの間子供が生まれたハトコの美鈴姉さんの所には子供が喜びそうな物を買いたいわね。」
「OK。」
いや夫婦か。その会話は修学旅行じゃないだろ。節々に出てくる夫婦感。
だがこの二人それだけでは無いのだ。
「あっ、そういえばお前髪型変えたろ。前髪がいつもより短いぞ。」
「あっ、分かる?いつもの美容院の人がコッチの方が良いって言ってくれたの♪」
「うん、似合ってるよ。綺麗になった。」
「うふふ♪もうお世辞言っても何も出ないわよ♪・・・あっ、口元にご飯粒付いてる。」
「えっ、マジで?」
「あぁ、私が取るから、じっとしてて・・・はい、取れた。」
「ありがとう。」
「うふふ♪良くってよ♪」
そう言いながら取ったご飯粒を自分の口でパクリと食べる静香。12年も付き合ってるくせに未だにラブラブなのだから凄い。
もうお互いの家に「ただいま」言いながら行き交う間柄だもんな。いくら世界広しと言えども、こんなカップルはこの二人だけだよな。
「ちょっと翔太。アンタそろそろ好きな子の一人でも出来ないの?」
・・・えっ?俺?
突然の静香からの質問に戸惑っていると、今度は武が俺に話し掛けてくる。
「翔太お前もそろそろ身を固めないと、いつまでもブラブラしてたら駄目だろ。」
いやいやブラブラしてて良いだろ。まだ高校生だぞ俺達。
「好きな子居ないなら、私が良い縁談持って来たから。一年生の飯田 良子(いいだ よしこ)ちゃん。この子大人しいけど優しい子でね。翔太にピッタリの相手よ。」
そう言って写真を見せてくる静香。いやお見合いかよ。この歳でお見合いとかしたく無いわ。確かに眼鏡かけてて大人しそうな可愛い子だけど、こんなお見合いみたいな出会い方はしたくはない。
「おぉ、良さそうな子じゃないか。俺があと十歳若かったらな。」
「ちょっとお父さん、浮気は許しませんよ。」
と冗談を交わしながらフフフッと笑い合う二人。冷静に突っ込ませてもらうと十歳若かったら七歳だからな。お前等の年齢設定いくつだよ。
この後、俺は飯田 良子ちゃんと、なんだかんだで付き合うことになり、そのまま順調に付き合いを重ねて五年後に結婚するのだが、その時の仲人を務めたのは言うまでもないよね?
熟年高校生カップル タヌキング @kibamusi
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