死んだ未来を探す
長月瓦礫
死んだ未来を探す
缶を横に振るとからからと軽い音がする。
蓋を開けると、中に数枚のコインが入っていた。
すっかり錆びていて、どのくらいの価値があるかも分からない。
俺はバイクの後ろかごに缶を入れて、また走り出した。
何もないまっさらな大地だ。
星々の間で繰り広げられた戦争が終わるまで本当に長かった。
すべてが消えるまで、攻撃し続けた。
よその星に移った人々が集まり、復興が始まった。
こんな不毛な大地で見つかる貨幣価値はいかほどか。
財産よりも命を優先した結果、星は滅んだ。
何も見つからない。どこに行っても何もない。
『そっちはどう?』
「何もねえ」
俺は道路の真ん中でバイクを止めた。
対向車はない。人がいないなら走らせる車もないということだ。
デバイスにあたり周辺の観察結果を入力し、宇宙船ワカサギ号に送った。
活動時間ぎりぎりまで走らせたが、あの缶以外は何も見つからなかった。
貯金箱だろうか。
貨幣があるということは、硬貨で物の価値を証明できるだけの信頼と文明があり、それだけの人がいた。
村があったと言っても誰も信じない。
人がいた痕跡はほとんどない。
ゲームを遊ぶ感覚でよそに喧嘩を吹っ掛け、未来を叩き売る。
当時の為政者にとっては安い商売なんだろうが、巻き込まれる人々のことを何も考えちゃいない。国のためといいながら、自分たちの利益のことばかり考えている。
安いから気軽に賭けられる。十把一絡げの未来だ。
荒れ果てていく様子を安全地帯で見ている。
とんでもなく、ずるい奴らだ。
『ねえ、実は誰かが見ている悪い夢だったりしないかな。
ほっぺをつねれば目が覚めたりしない?』
「アホなことを言ってないで仕事しろ」
これがただの悪夢だったら、どれだけよかっただろう。
誰かが見ている壮大な夢なら、明るい未来があったかもしれない。
しかし、これが現実だ。
逃れることができなかった悲劇の跡地、二度と手に入らない明るい未来、向き合わなければならない現実なのだ。
今日は諦めて宇宙船に戻った。
何か見つかるまで、この星から離れることはできない。
だから、希望だけは捨てないことにしている。
明日なら何かあるかもしれないからだ。
死んだ未来を探す 長月瓦礫 @debrisbottle00
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