第6話 

「うーん、どうしたられーくんはわかってくれるのかなあ……」


 自宅に帰ったひがし朝日あさひは、制服を脱ぎ、自室の立ち鏡に映る下着姿の自分を見ながらつぶやいた。


 10年ぶりに再会した幼馴染——時田ときた零斗れいとは、昔の朝日があまりに少年的な見た目をしていたせいか、いまだにそれを引きずって朝日のことを男だと勘違いしている。


 普通なら、「ほんとは女の子でした!」と誠心誠意表明すれば、多少戸惑いはあれど納得してくれるはずだろう。が、零斗はこちらがどう説明しても断固として信じようとしない。


 しかし、あれほどまで頑なに認めてくれないとなると、朝日としても少しムキになってくるというものだ。いったい、どうしたら零斗は自分が正真正銘女であると理解してくれるのだろう。


「そんなに男の子っぽいのかな? ボク」


 鏡に映る自分の顔を見てそう自問する。

 だが、少し視線を下げ、大きく丸みを帯びた胸部が目に入ると、いやそんなはずはない、とすぐに自答する。


「でも……れーくんは大胸筋とか言ってたし……実はそう見えるのかな」


 しかし、たとえば男性ボディービルダーの大胸筋は、果たしてこんなにふっくらとしていただろうか。

 仮に自分の胸が筋肉塊と認識されるのであれば、相撲中継の力士の胸はどうなるのだろうか。あれもテレビで映さない方が健全なのではないだろうか。


「うーん……」


 顔でも信じてくれない、胸でも信じてくれない。じゃあ他視線はさらに少しずつ下がり、鳩尾、へそ……そして。


「いいいやいや! そこはさすがにダメだよ、うん!」


 朝日は顔を赤らめる。

 たしかにそこは男女でいちばん違いのある部分ではある。だがしかし。だがしかし。異性にそれをアピールするなんて、とんだ淫乱女ではないか。


 朝日は急に自分が下着姿で鏡の前に立っているのが恥ずかしくなったのか、急いで部屋着に着替えた。


「と、とにかく! 明日こそは絶対にボクが女の子だってこと、れーくんに信じてもらうぞ……! そ、そう、ボクのみなぎる女子力で!!」




 ☆☆☆あとがき☆☆☆


 これで第一章はおわりです。

 あと急に三人称になってすみません。元々はタイトルを第5.5話にして差別化しようと思ってたんですがそれで一区切りってのもなあ……的な感情があってこうなりました。

 第二章もよろしくお願いします。

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再会した幼馴染に「ほんとは女でした」とカミングアウトされたけど、断固として認めなかったらどうなるのか検証してみた 〜エスカレートしていく幼馴染の過激な女の子アピール〜 𓀤 ▧ 𓀥 @kiokio45

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