5匹目 猫(1歳)
僕には前世の記憶がある。
猫になる前は、人間と一緒に居たようだ。
覚えているのは、泣いている女の人の顔。
僕はその人のことをパートナーと呼んでいた。
僕はその人のことを大切に思っていた。
その人はお金に困っていた。
人から借りたお金を返せなくなって泣いていた。
僕はその人を助けたい一心で、不思議な力を使って色々な場所からお金を集めた。
集めたお金をその人に渡すと、地面から真っ黒い闇が湧き出て僕を包み込んだ。
今となっては、その不思議な力をどうしたら使えるのか見当もつかない。
猫として生まれ変わってから毎日ただただ街を歩き回り、その日食べる餌を探している。
僕に親は居ない。捨てられたのか、はぐれただけなのかは分からないが、僕はずっと一人で生きてきた。人間に飼われたこともない。だから餌を探すことはとても重要だ。
ある日の朝、いつものように街を歩いていると突然大雨が振ってきた。
慌てて近くで雨宿りすると、そこは駅と呼ばれる場所だった。たしか、ここには前にも来たことがある。人がたくさん集まる場所で、色んな人が僕に食べ物をくれたのを思い出した。
僕は迷わず中に入った。
小さな穴を抜けて入ったらそこにはたくさんの石ころと鉄の棒がまっすぐどこまでも敷かれていた。
人間が立っている場所からはずいぶん下の方出てしまったようだ。
人もあまり居ない。
僕が餌を探しながらトボトボと歩いていると、
何やら人間が騒いでいるのが聞こえた。
何を言っているのかはわからなかった。
次の瞬間、背後に大きなものが勢いよく近づいてきた。
一瞬世界が真っ白になり、僕の後ろを大きくて長い乗り物が通り過ぎて、しばらくして止まった。
何が起きたのか分からない。
人間が驚いた顔で僕を見ていた。
見たことがある気がしたが、
僕はそのままその場所を離れた。
僕らが、ソレをアレする話。 三葉ヒロ @h_mituba
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます