閑話 ある古竜のお話し

第73話 閑話 ある古竜のお話し



お腹減ったのだ!




私は、古竜の一柱 火の古竜なのだ! 名はまだ無いのだ。

水竜である、お祖母様に呼ばれて、今住んでいる家(巣)を離れて、しばらく北の地に赴いていたのだ。


「なにかとんでもない邪悪な魔力を私の家の方から感じたのだ」


「あら、本当なのよ。禍々しさたっぷりの、巨人? それとも神よ?」


「お母様。私は家が心配なので様子を見に行ってくるのだ」


「貴女、魔素の吸収が弱いようだけど大丈夫なのよ?」


「大丈夫なのだ。近くに街にものすごい魔力をもった人間がいるので、あの辺は魔素がとても濃いので家の近くで補給できるのだ」


「わかったのよ。気をつけるのよ」


母と別れて、しばらく飛んで移動したのだ。



「ああ、休まずに飛んで来たのでお腹が減ったのだ。魔素を使いすぎたのだ。

帰ったらあびるように魔素を吸収するのだ」


古代種の竜や龍は、人間のように食料を食べなくても、空気中にある、魔素を体に取り入れることで、生命を維持することが出来るのだ。

空気中と言ったけれど、実は、宇宙空間でも、魔素があるので、空気がないところでも我らは生きていくことが出来るのだ。


そんな、我らでも究極にお腹が減ると(体内の魔素の量が少なくなると)魔物を食べて魔素を吸収した方が、効率が良い時があるのだ。

これは、万物には魔素が含まれているからなのだ。


人間から魔物と呼ばれているモノは、モノを食べて魔素を吸収して、魔素を魔力に変換して魔石に蓄えてそれを生きる糧にしているのだ。

じゃあ何故、魔物達は人間を襲うのかということだが、人間はどの植物や動物よりも魔素を多く含んでいるのだ。含有量が多いのだ。

凶暴で野蛮な魔物は、人間をみるとご馳走に見えるのだ。

そんな、凶暴で野蛮な魔物だが、基本は固まっている人間、集団でいる人間には手を出すことは、ほぼ無いのだ。

魔物は本能的に、集団でいる人間は危険と知っているからなのだ。


下を見るとやっと聖なる湖をぬけて、大森林に入ったのだ。

このまま、日が沈む方に向かうと我が家なのだ。


五年前に、人間の街に、大きく綺麗な魔力を発見したのだ。

それは、人間の赤子だったのだ。

その魔力の持ち主が気になって、人間が住んでいる街の五㎞ほど離れた、山に我が家を作ったのだ。

お笑いトリオではないのだ。

我が家に急に帰る事になったのは、突然大きな爆発が家の近くにあったので、心配で様子を見に戻って来たのだ。

よくある事だが、宇宙(そら)から隕石が落ちてきたと思ったのだ。

隕石は、この大陸に色々な恩恵を与えたりするが、我々古竜にとっては、嫌な現象の一つなのだ。

隕石が地に落ちるとその周辺の魔素がとても薄くなるのだ。

迷惑な話なのだ。


フーマ王国に入ったので、あと少しで着くのだ。



「な、なななな なに~ なのだー!」

私はめちゃくちゃ驚いたのだ。

「私が住んでいた山が、山が、ほぼ無くなっているのだ!

しかも、木もなにも無くなっているのだ!

そして、魔素が全くなくなっているのだ。大変なのだ」


私は、この辺りをぐるぐると旋回して様子をみたが、やはり、全く魔素さえもなくなっているのだ。

隕石、いいや、爆裂大きな魔法を使った形跡があるのだ。

きっとここで人間どもが魔法で戦争をしたのだ。


「しばらく、お祖母様のお世話になろう」

私は、とりあえずここを放置して北東のお祖母様の家でお世話になるのだ。

そうして、ここから移動したのだ。




お祖母様、お母様、お姉様との暮らしも飽きて、再びもと家があった場所に向かっているのだ。

あれから六年経っているのだ。

もうこれだけの日にちが経ったので、魔素は充分補充されたはずなのだ。

山がなくなっていたから、近くの山にもう一度家を作るのだ。

きっと人間の街にいる魔力の大きな人間ももっと魔力が多くなっているのだ。

楽しみなのだ。


私は、六年前と同じく、お祖母様の家から南下して聖なる湖から西に向かって大森林を過ぎたところでそんなことを考えていたのだ。

少ししてフーマ王国に入ったので、もう少しなのだ。

と思っていたら、


「街、私が住んでいたところに街が出来ているのだ。

多くの魔素があるが、家が、家があった場所が人間の街になってしまったのだ」


「人間は面白いのだ」

わたしは、そう呟き、人間に見つからない距離を置いて着陸したのだ。


「久々に人間の姿になって、あの街の様子を中からみるのだ。

楽しみなのだ」

《人化》

私は数百年ぶりに人の姿になろうと人化の呪文を唱えたのだ。


私はみるみる小さくなり、少女の姿になったのだ。

久々だったので、魔素をめちゃくちゃ消費したのだ。

お腹減ったのだ。

そうして、新しい街に走って向かったのだ。

走るって事はほとんどしたことが無く、めちゃくちゃお腹が減ることになったのだ。

そして、街の門が見えるところで、ぐぅううっとお腹が鳴り、わたしは倒れてしまったのだ。




幼少期 了



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このお話しの続編の【聖女の紋章Ⅱ】は、【聖女の紋章 外伝Ⅰ】の終了後の1月末か2月初旬より連載を開催予定です。


聖女の紋章Ⅱはエルーシアが10歳になってからの物語です。

今作では出番の少なかった双子の姉のリーサの活躍があります。


そして、妹のファリカが登場します。

ファリカもエルーシアに負けないくらいの万能です。

可愛さたっぷりなのでご期待ください。



新作 聖女の紋章の数百年後のお話しです。

魔法のなくなったその先に 【聖女の紋章 外伝Ⅰ】

https://kakuyomu.jp/works/16817330668704507098


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聖女の紋章 ~公爵領の魔法幼女は女神の紋章を持つ転生者 ~ I。ランド @yacchi1024

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