Earthling -ハザマ-
@ENUKA
プロローグ
-Prologue- 水晶の夜
-------------------------物語の20年前の世界-------------------------
「ニンフィーア、状況はどうだ」
赤髪の蛮族のような服装の男は問いかける。
「首尾はすべて順調です。すべてのボーンとクラッシャーは予定通り、配備完了しました。ナイト・ビショップ・ルークもそれぞれ配備しております。」
黒髪の妖艶な女が、質問に答えた。
「フフフ、これでアースリングどもを殲滅し、我々がこの世界を牛耳ることができる」
そう話している最中、時空が歪み4つの影が突如現れた。
現れたのは、神官のような男が2人とその侍女が2人。
赤髪の男は、眉ひとつ変えず、その4人組に問う。
「何しに来た、エイサー、リリー。めずらしくマドラとフォルもいるのか。」
「アイリス、お前を止めにきた。私たちはまだこの地の人たちのことを知らない。ともに生きることができるかもしれない。行動に移すのはそのあとでもいいのではないか」
銀髪のエイサーと呼ばれた男は、勢いよく赤髪の男、アイリスに詰め寄り、睨みつけた。
「クク、いまさら何を言っている。アースリングどもを知ってどうする?わが国の現状を知っているだろう?エーテルは枯渇し、食べ物すら皆に分け与えることのできないありさまだ。毎年選別を行い、かろうじて生きながらえている惨状。そんな状況なのに、先延ばしにする必要がどうしてあろうか。」
「それはわかる。だが、この世界の人々を殺していい理由にはならない。」
「馬鹿か、貴様は。たとえ共存が一時的にできたとしても、この惑星がわが惑星と同じ状況に陥ったとき、まず淘汰されるのは私たちだ。そんなこともわからんのか偽善者が」
怒号にも似た声でアイリスはエイサーに言い放った。
「2人ともやめて!」
二人の間に割って入る幼い容姿のリリーと呼ばれた神官。
「エイサー、アイリス、私たちは話し合いにきたのよ。喧嘩しにきたわけじゃないわ。」
「私も、アイリスのしようとしていることには反対。こんなに豊かで広大な土地なら、この地の人たちとともに生きることができると思うの。」
「さっきも言ったが、それはたとえできたとしても一時的なものでしかない。数百年の繁栄のため、この地をわが物にしなければならない。それが私の答えだ」
アイリスは、間髪入れず返答する。それが己の使命だといわんばかりに…
エイサーは落ち着きを装い問う。
「じゃあ、その数百年の繁栄ののち、エーテルが枯渇したらどうする?私たちはまた新しい惑星を手に入れるために、また大量殺戮を行うのか?」
「一時は最強の王と言われたお前も、いまは何の決断もできないただの愚王だな、エイサーよ。永遠の狭間にとらわれた我らが生きながらえていくにはそうするしかない。エーテルがなくなったらまた私が新しい惑星をこの手に収めてやろう。そしてなくなれば、また次だ。」
何の迷いもなくアイアスは答えた。
「仮にエーテル・サーカの完成が間近だとしても…?」
アイリスは目を見開き、エイサーを見つめた。
「さっき、フォルとマドラに話を聞いた。最終フェーズの試験に入ったと。」
「本当か?フォル?」
アイリスは目を見開いて眼鏡をかけた漆黒の男に尋ねる。
「ああ。ただまだテスト段階だし循環できるエーテル量も少ない。完成にはもう少し時間がかかる。あとこれには大量の自然エネルギーを使用するため、我らの世界では限界がある。」
「では、この地ですれば完成の可能性があると?」
「ああ。」
エイサーは静かに口を開いた。
「せめてフォルの実験が終えてからでもお前の計画をすすめてもいいのではないか。今は矛を収め、結果を見届けよう。」
「1週間だ。それしか待てない。それまでに完成に近づけろ。」
アイリスは小さな希望を抱きながらも不服そうに応えた。
-------------------------1週間後-------------------------
西暦2035年12月25日 世界を一変する事件「水晶の夜」。世界の3分の2を破滅させるエーテルの暴走が発生した。
Earthling -ハザマ- @ENUKA
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