ー交差する未練と建前

『俺はまだ、彼女が好きだ。』


最低なことをしてしまった。

携帯を握りしめながら涙と越える夜。

頭が考えることを拒むほどに考えた。


ー彼女が俺を振った理由を。 


俺が俺なりに考えた答えはこれだ。


おれは映画を観る時も、この後の予定を決める時も 「なんでもいい」と言った。

『彼女といれればなんでも幸せだから』という意味で言った。

彼女からしたら、『どうでもいいんだろうな』って感じたのだろう。


そして俺の全身は凍った。

もしかしたらあの、あの瞬間を見られたのではないか。


一度、部活の女の先輩と出かけたことがある。『彼女の誕生日が近かったのでプレゼントのアドバイスをもらうため』だった。

少しでも、彼女が喜んでくれるような女心くすぐるものをプレゼントしたいと思ったからだ。



ー俺の心はもう、制御不能だ。


別れてかなり時間が経った。

俺たちは一切連絡を取らなかった。

偶然に出くわすこともなかった。

彼女が、いま、どこで、なにをしてるのか、何もわからない。

もしかしたら俺より素敵な男を見つけて

充実した生活を送っているのかもしれない。そう思った。


けど、謝らずにはいられない。


心を落ち着かせるような秋風が吹く午後23時。


震える右手に携帯を握り、彼女の電話番号を打つ。この手は止まらない。

彼女はもしかしたら俺の電話に出ないかもしれない。

でも。行動しなければはじまらない。


今日、彼女の本当の気持ちを知りたい。


こんな勇気が出るのは今日の日付が14日だからだろう。俺たちが付き合った日も14日。


ー電話が繋がった。


「もしもし、急にごめん。俺。」

「あ、うん。」

「ちょっと言いたいことあって。」



(続く)


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23時。 紫蘭。 @sakuranbonotane

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