コスプレ言うてますやん

「ごめん、部活動って何の話?」


「私が所属してる部活だよ。コスプレ部っていうんだけどね、今日はその入部届を書いてもらおうと思って図書館集合にしたんだ」


 もはやそれをコスプレと呼んでる時点であなたの敗北ではないかと問いたい気持ちを抑える。


 それでは物語が終わってしまうからね。


「でもそれなら他の部員にそのコスプレが似合ってるか聞けばいいんじゃないの?」


「いやいや、これはコスプレじゃないから。他の部員にそんなこと言えないでしょ」


 だからといってコスプレをメインにしてる人たちの部活に寄生するのもどうなんだ。


「ちなみに他の部員は何人くらいいるの?」


「あぁ、それね。1人」


「1人?」


「うん、その子が去年たった1人の部員として残り続けたからこそ、私もこの部活に入ることが出来たんだよ」


 ふふんっと得意げに自慢するが、頑張っていたのはその先輩であって断じてお前では無いことに気づいてくれ。


「じゃあお前は普段どんなコスプレしてるんだ?」


「気になるの?」


「……やっぱいい」


「変態だね」


 一瞬いろいろと想像してしまったのでやっぱり見るのはやめる。


 机の上には入部届があて、俺は素直にそこに部活動名を書く。


「意外」


「何がだ」


「素直だなぁと思って」


 どうせ書かなくても俺の名前だけ使って出していそうなので、それなら自分から入ったという方が納得できる。その紙を彼女に渡すと、じゃあ出してくるから部室に行っててねー、と大声で言って図書館を出て行った。


 俺は司書さんに睨まれながら続けて出ていく。俺のせいじゃないのにすごくいたたまれない。


 コスプレ部が一体どこになるのかということを全く聞いていないので、とりあえず部室棟に向かう。部室ごとに売り文句的なものが扉にはりつけられていたので俺はそこまで困ることなく部室を見つけ出すことができた。


「誰かいますかぁ」


 ノックをしても返事がない。部屋の明かりはついているので、てっきり誰かいるのかと思ったがトイレにでも行っているのかな。


 俺はそう思いながら部室の扉を開けると、人がいた。


 何かの魔法少女のような恰好に着替えている最中で、耳にイヤホンを着けて随分と楽しそうに歌を歌っている。彼女はクルクルと回ってまるで俺が入ってきたのが分かったかのように着替えている最中の格好を晒した。


「「」」


 同時に目が合う。随分と散らかった部屋や、ラックに掛けられているたくさんの服など目に入るわけがなかった。


「ご、ごめんなさい!」


「あぁああぁぁぁぁぁぁ!」


 俺はすぐに扉を閉めて腰を下ろした。絶対変態だと思われた。

 最悪すぎる。頬に手を当てると、熱を帯びているのを感じた。興奮するなよバカ!


 遅れて刀祢がやってくる。俺が部室の前で座っているのを不思議そうに尋ねてくる。


「なにやってるの?」


「事故処理だ」


 青空色のロマンが見えた。ただ、それだけだから。


 お前には言えない。

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男装女子と始める青春コンティニュー 日朝 柳 @5234

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