ボッチ飯
昨日のことが夢のように、今日の学校での彼女は普通の女子そのものだ。
俺は夢を見ていたんじゃないかと思ってスマホを確認する。家族以外消したはずの連絡先には新たに一人の名前が追加されていた。
「さすがに夢ではないか」
俺は残った弁当を口に入れて箱を巾着で縛る。この中庭も人が増えだした、帰って寝たふりでもするか。
教室に入るとき彼女とすれ違って目が合う。気のせいだな、と思ってそのまま席に着くと膝が震える。ポケットからスマホを取り出すと刀祢からだった。
「あいつから……ね」
昨日の今日でもう彼女に対する俺の評価は「危ない」固定だ。どんな内容なのかもわかったもんじゃない。そのままポケットに戻して狸寝入りをここうと思ったが、逆に彼女からの通知が止まらなくなる。
それでもしばらく無視していると、何年も使っていなかった通知機能を活用したせいなのかピタリとバイブが止む。これで変に注目されることもなくなると思い机に伏せる。
「おーい、詩織いる?」
どこからともなく現れたそいつは、扉の前で知り合いらしき奴と話をしている。どうやら逃げたと思っているみたいだ。俺はばれないようにそのまま顔を伏してやり過ごそうとする。
「あ、いたいた」
無理だった。俺の前の席の椅子を借りて座る。観念して顔をあげると、随分と笑顔なやつがそこにはいた。
「何の用だ」
「スマホ、無視しないでよ」
「別に放課後会えばいいだろ」
「だって私に会わないように絶対チャイムと同時に走って帰るもん」
よく分かっているじゃないか。そこまで理解力があるなら話しかけてこないでほしいんだが。改めてスマホを見ると、今日の放課後に時間があるかの確認だった。
「まぁ、時間はあるな」
「良かったぁー。断られたらどうしようかと思ったよ」
別に了承した記憶もないんだが。まぁこの際もうそれはいいや。それならそれで、具体的にすることを聞くだけだ。
「じゃあ、一体何をするんだよ」
「昨日も言ったじゃん」
「……分かったよ、それでどこ待ち合わせなんだ?」
「図書館で」
「了解」
そこで話が終わると、奥で彼女の友達が声を掛けているのが聞こえてきた。ちゃんと来てよ、と俺に念押しをして彼女は俺の席から去る。
現状何をするのかもどこに行くのかもわからない。
これで断ると逆に居心地が悪いので俺は放課後、素直に図書館で刀祢を待った。
終鈴が鳴ってから20分も経って彼女は図書館に現れた。
「お待たせ」
「……」
「どうしたの?」
「いやなんで着替えてんの」
「今から部活動だからだよ」
「は?」
奇想天外、奇天烈、奇人、奇。
さっぱりだった。
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