現代少女とファンタジックな公衆電話

@tech_rakugakimode

現代少女とファンタジックな公衆電話

※この話はフィクションであり、以下の文章は教訓が含まれているようなためになるものではないので、戯言として眺めることを強く推奨します。


 突拍子もないことを言って恐縮ではあるが、私の街には公衆電話がある。簡単に説明すると、ボックスの形をした電話であり、(大体は)左辺りにかかっている受話器を上げて、10円玉や100円玉を入れ所定の番号にダイヤルするもの。テレホンカードは名前くらいは聞いたことがある程度だ。

 さて、話が長くなりそうなので、私の街ではさびれている公衆電話について取り上げた理由を話そう。端的に言えば、満月の夜に、とある番号を入力すると、異世界の住人と会話できる機会を得る、という言い伝えがあるからである。......嘘をつくな、との声が聞こえるが、残念ながら非常に都合がよく私の街だけに伝わっているから仕方がない。しかしまあ、当たり前の話ではあるが、突然知らない番号からかかってくるとうっとうしいように、高確率で怒られるというオプション付きなので、最近はやる人も減った。

 ああ、ダメだ。話がやっぱり長い。分かりやすいように補足すると長くなってしまう。えっと......現在、私はそんな公衆電話で、満月の夜に10円玉を複数枚引っ提げて、その番号にかけている。理由......?結論から言えば、二か月後の撤去の前に、もう一回くらいかければいいか、という気持ちがあったからだ。

 さすがにこの現代で、公衆電話を必要とする機会はめっきり減っている。私の街も例外ではなく、時代の流れに逆らえなかったんだろう。


────プルルルルルルル......


 「一カ月に一度ほど、変な受信を受けるのだが、どうやら本当らしいな......あの噂。先代の魔王も苦労したんだな......それで、何の用だ?」

 つながった。......というか今魔王と聞こえたのだが。すかさず私は、

 「あの......ちょっと前にかけたときは頑固なおじいさんみたいな声だったんですけど、あなたは一体......」

 後から振り返ると、非常に失礼なことを言っていたと思う。だが向こうの魔王は特に気にしていないのか、

 「私から言わないとダメか?......はあ、私は魔王。名は言わないが、姓はフォレストラだ。今は寝付きたいのだが......一応お前のことも聞いておこうか」

 私は自分の名前をきちんという。向こうは特に関心がなさそうでツッコミもなかった。そして向こうから声で判断されたのか、

 「お前、私と同じくらいの年か?......遊びでかけているならすぐにこの通信を切るが......」

 まずい。せめて話のタネを一つでも作らないと......五秒の沈黙の後に、私は、

 「あの......!まお...フォレストラさんは、みんなに慕われる方法とか......知っていたら、教えてほしいのですが......」

 「魔王の私が慕われてるとお思いで?」

 「いやその......なんだかんだ話を聞いてくれていますし、そういう方なのかなと......」

 すると向こうからため息が混じりつつ、

 「お前、これが私との通信でよかったな。他の妖魔に通信してたら、精神干渉でもされているところだったぞ......それで、慕われる方法だって?」

 「はい、そうです......」

 「まずお前自身は何が足りないと思っているんだ。慕われている者たちの数か?それとも、慕われるための方法に不備があるのか?」

 何というか真面目に考える方らしい......私はあー、えー、と言いながら十五秒考えつつ、

 「私は......数だと考えています。もちろん、慕ってくれている人たちは優しいし、私自身もその人たちを大事だと思っています。でも、いつも多数派のグループに流されそうになっちゃって......」

 「なんだ数の話か。くだらん、お悩み相談をするまでもなく一言で終わりじゃないか。お前の属する少数派のグループで仲を深めることを誇りに思う、それだけだろ」

 「......魔王って質より量を重視するイメージがあるんですけど、あなたに関しては違うんですね......」

 「失礼だなお前......先々代の魔王あたりが名誉毀損とかで殴りかかりそうだぞ......それはさておき、そもそも私たち妖魔が勇者パーティと戦うときに、多数派である人間に流されてたらどうしようもないんだよ」

 「別に多数派を滅ぼそうとは思っていませんが......言いたい事は何となくわかりましたよ......」

 「まあ、お前の口ぶりからしてそんな余裕があるってことは、それだけ平和なんだろう。流されようとまた岸に着けばよさそうだし、上手くいけばお互いに調整できるかもしれない。......なーんて、同い年に偉そうなことを言ったけど、魔王の言葉は話半分に聞いといたほうがいいよ?」

 ......結局。私と魔王との会話は、どこか変な、不思議な日常会話になった。ファンタジー要素は電話の要素だけに感じる。でも、向こうが取るに足らないと思っていても、私としては、行き当たりばったりになってしまったが、自分の心持ちくらい考え直すきっかけにはなった。


P.S.その後お互いに生活が変わったのかはよく分からない。変な思い出くらいにはなってるだろうけども。

 

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