第13話 エピローグ

 ジイジの家には、サリーが入ってはいけない部屋が、ひとつあった。

 線香の匂いがして、チ~~ンと聞こえるので、昔ジイジの家で見た、仏間だと思っていた。

 サリーが一人で留守番をしている時、何時もは閉まっている、仏間の襖が開いていた。

 サリーはいけない事とは思ったが、ジイジとバアバの遺影があったあの部屋を思うと、入らずにはいられなかった。

 ジイジは小さな仏壇に自分の両親の過去帳と、妻も自分の両親を拝めるように、両親の戒名を書いた楯を、位牌代わりに祀っていた。

 ジイジは「浄土宗と浄土真宗の違いはあるが、サンマの尻尾も信心からだ」と、訳のわからないことを言って、拝んでいた。

 サリーは仏壇の前の祭壇に、線香やロウソクが並んでいるのを見ながら、その横にもうひとつ小さな祭壇があることに気づいた。

「パパン!」サリーは思わず、懐かしい名前を口にした。

 そこにはシャム猫の遺影が祀られていた。

「パパンも、この家の子だったんだね」

 しかしそれは、パパンの写真ではなかった。

 ちょっと耳を齧られたパパンのパパン、つまりサリーの祖父のシャムだった。

 お姉ちゃんの実家とこことは、三十キロばかりの距離。

 シャムに似たサリーが、お姉ちゃんの眼に止まる確率は、奇跡というほどではないだろう。

 それとも棚ぼたをのんびり待つタイプのシャムが、天国で孫娘のために奔走し、猫神様を動かしてくれたとでも、いうのだろうか?

 シャムの遺影は、口角を上げてニンマリと笑っていた。人間なら親指を立てて、サムズアップしそうな、笑顔だった。

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りんご猫物語 ~ノラ猫と呼ばないで アタシはジイジの娘 人間なの~ イケイケ @terra023m

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