第18話 ダブルクロス、トリプルクロス

「これがオレ!? くひひひ! オマエ、絵が下手すぎぃ!!」


 俺が描いた似顔絵を見て爆笑するアロハ。


 突然の白龍皇アロハの登場に、まず最初に正体に気付いたウラガンが腰を抜かし、次にミゲルが急性アル中みたいな青い顔で少年――王子の馬車に向かった。


 流れ的に王子が来て挨拶することになるんだろうが、それまでの繋ぎで俺がアロハを接待しているという次第だ。


「……………………」

「どうしたユウキ? 突然黙っちゃって」

「お前って、ワイツとか白龍皇って呼ばれてるんだな」

「そうだな。大体、そのどっちかだ」

「俺は、どっちで呼ぼうかな? って」

「どっちでもいいんじゃね……っていうか、オマエはなんて呼んでるんだ? 勝手にオレに名前を付けて呼んでんだろ?――心の中では。オマエみたいな奴は絶対そうだ」

「確かに」

「なんて? なんて呼んでる? なんて?」

「…………」

「言えよ。恥ずかしがってんのか?」

「別に恥ずかしがっては……『アロハ』」

「『アロハ』。アロハ……うん。別にいいんじゃね? それで呼べば」

「じゃあ、そうする」

「じゃ、呼んで」

「アロハ」

「もう1回」

「アロハ」

「もう1回。ほら……呼べよ」

「……アロハ」


 俺は何をやってるんだろう……と思えてきて、視界の隅でセシリアが地獄を見るような目でこっちを見てるのに気付くと更にその思いは強くなり、だから強引に、俺は話題を変えることにした。


「お前の鎧、ダメにしちゃって悪かったな。あれって、作るの難しいんじゃないか?」

「いや? あれは幼体ガキの頃から着てたら自然と丈夫になっただけで、今のオレが着ればどんな服でも同じくらい頑丈な鎧になるし。ただ、」

「ただ?」

「ただ、どういうデザインにするかが悩みどころでさ。せっかく新しくするなら前のとは変えたいし。かといって、これだっていうのも無くてさ」

「鎧……なんだよな」


 鎧と聞いて思い出すのはあれ・・だ。

『異世界通販』の画面を開いて『アパレル』から『KAD○YA』を選択した。


『KAD○YA』はバイク用アパレルのメーカーで、ここの出してるバトルスーツと呼ばれるプロテクター内臓の革ジャンは、バイク乗りのためのまさに『鎧』だ。


 アロハも『異世界通販』の画面が見えるらしく、顔を近付けてくる。


「悪くないな……ていうか、カッコいい」


 バトルスーツは、アロハには好評なようなのだが。


「確かに悪くはないんだが……」


 バトルスーツはゴツすぎて、アロハのキャラと合わさると、率直に言ってバカに見えてしまいそうな気がした。


 結局、同じ『KAD○YA』の女性向けの革ジャンを買って渡した。


「はい。前のをダメにしちゃったお詫び」

「お、あ、や……デザインを決めるだけで良かったんだけど…………くひひひ!」


 アロハが革ジャンに袖を通したところで、王子が馬車から出てきた。


「サニダレア=デラクシャの三男、エドゥアリスでございます。白龍皇様におかれましては、ご機嫌麗しゅう――」


「ああ。オミグ戦役の後で生まれたガキか」


「!! その節は、父が――」


「なんでだったか忘れたが、お前の親父が土下座してたな――『今度生まれてくる子供の顔を見ずに死にたくない』って……ああ、それで憶えてたんだ。まあいい、あの時オマエの親父が何をやらかしたかは忘れたままにしといてやる」


「ははぁ――っ、有り難く……誠に有り難く! 有り難く! 誠に! 誠に!」


 平伏する王子から、アロハが視線を移す。

 王子の後ろに立つ、イミルとユミルに。


「既にダブルクロス――ドラスケ山でトリプルクロスか。準備・・はしているようだが、使い所はとっくに来ている――早々に、心を決めることだな」


「ははぁ――っ!」


「じゃあ、またな――先に行ってるぜ」


 す、と空に上ると。


 ずどん!


 森を衝撃波で引き裂きながら、アロハは飛んで去っていった。切り裂かれた空気の痕が示す先は――


 それから予定より1時間遅れて、旅隊は出発した。


 ドラスケ山へ。


 道中タイミングを見計らって、俺はセシリアに近付き、そして訊ねた。


「なあセシリア――ダブルクロスって、何だ?」


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ネトゲで俺をボコった最強美女ドラゴンに異世界でリベンジします!でもあいつ異世界でも最強みたいじゃないですか!ていうかバトルより先にイチャラブが始まりそうなんですが、そのころ元の世界は滅びていたようです 王子ざくり @zuzunov

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