第17話 誰でも努力すれば絵が上手くなれると思ってる絵描きはAIに駆逐されてしまえと思う

 俺は絵が下手だ。


 現代日本元の世界では、どれだけ練習しても『画伯』扱いだったし、絵が下手という理由で美術の教師に殴られたこともある。


 だから、これも当然だったと言えよう。


「これは……無理です」

「そうか……ミゲルの『書画補正スキル』でも無理か。分からないでもないが……しかし、これ程に絵が下手な人間がいようとは」


 少年に命じられ、旅団のリーダー――ミゲルが『書画補正』というスキルで俺の絵を補正し、俺が本当は何を描きたかったかを判明させようとしたのだが、無理だったみたいだ。


【悲報】ワイの画伯っぷりが異世界でも通用してしまう


「うむむむむ……絵が下手な人間……絵が下手な……下手な……人間……絵が下手な……」


 しかし、少年は諦めない。

 頑張って欲しい。

 俺は、どれだけ傷付いてもいいから。


「絵が下手な人間…………そうか。人間でなければ! おい、イミル。オマエも絵が下手だったな。ユウキが描いたこの絵を見てみろ。我らには箒で地面を掃いた痕の方がまだマシに見えるような絵でも、絵が下手な者同士であれば理解が通じるかもしれない」


「いい”……ひっく。はいぃ。ごの絵を見ればい”い”んでずかぁ……」


 まだ泣いて蹲ってたクソガキ龍イミルが、立ち上がって近付くと、俺の絵を見る。


 そうか。こいつも『画伯』なのか……


 口元を緩める俺を、びくびく横目で伺いながら、イミルが言った。


「ごれはぁ。ぐすっ。『ワイツ』様じゃないでしょうかぁ?」


 ワイツ? なんか正解な気がする。

 よく知らんけど。

 とにかく予感のまま、イミルに確認した。


「その『ワイツ』っていうのは、髪が金色で背が高くておっぱいが大きくて『くひひひひ。オレの鎧を貫いたのはオマエが初めてだぜ~~~~』って話し方をする奴か?」


「そうでずぅ。ワイツ様でずぅ」


 やはり、正解だったみたいだ。


【朗報】ワイ、異世界の『画伯』と通じ合う


「ひぃ」と小さな悲鳴がして、見ればウラガンだった。少年も、ミゲルも、サルートも、騒ぎを聞いてテントから出てきた他の冒険者たちも、みんなウラガンと同じ表情だった。表情で訴えていた――『どん引きだよ!』と。


 少年が訊いた。


「『ワイツ』……『白龍皇』様か。念のため聞いておくが――ユウキ。オマエは白龍皇様と闘ったのか?」


「ええ。いきなりやってきて、闘いを挑まれました」


「『鎧を貫いた』とは?」


「全力で攻撃したら、奴の服がバラバラになりました――その程度しか通用しなかったですね」


「勇者と魔王と異世界の賢者が組んだ世界最強史上最強のパーティー『神聖イチャコラ騎士団』の攻撃にも傷ひとつ付かなかったという白龍皇様の鎧を……バラバラに……したのか……したのだろうな。オマエは」


「しました」


「オマエが『した』と言うのなら……我らには、それを否定し通す術が無い。まあいい。オマエは、まあ、それでいいか」


 ふぅ、と息を吐くと少年は馬車へと踵を返した。

 どうやら、俺はこの旅団に同行して良いらしい――ということになったんだよな?


 そうして馬車に戻る前、最後に少年が言った。


「後で失望しないよう、いま言っておこう。オマエがどう思ってるかは知らないが、龍と契約しても、オマエの強さが2倍3倍になるわけではない。いまのオマエの力に、契約した龍の力が足されるだけだ」


 なるほど。

 掛け算ではなく、足し算ということか。


 少年は貴族――というか、ほぼ確定で『王子』。王族が契約してるということは、イミルとユミルは龍の中でもかなり強い部類に入るんだろう。


 俺があいつらと同じくらい強い龍と契約するのは、難しいと考えるべきか。


 仮にイミルと同程度の龍と契約できたとしても、俺の強さは5%増しにもならないだろう。


 更に今後、俺が強くなればなるほど、そのパーセンテージは下がっていくはずだ。


 しかし、だ。


 元々俺は、龍との契約には、単純なパワーアップとは別の種類の期待をしていた。そしてさっきの少年との会話で得たヒントから、その期待を更に強くしている。


 それから1時間も立たず夜が明け。


「おはよう、ユウキ。初めての夜の番はどうだった?」

「いろいろあったけど、無事終わったよ」

「そうか! それは良かった」


 充分睡眠をとった様子のセシリアと声を交わし。


 朝食の後、ほどなく旅隊は移動を再開した。


 

――となるはずだったのだが。



「お~い、ユウキ。からオマエを見てたんだけどさ。なんか楽しそうだから来ちゃったぜ~。オレの似顔絵描いたんだろ~。見せろよ~」


 脳天気な闖入者によって、それどころではなくなってしまったのだった。


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