お弁当屋「おひさま」-異世界店

紅月蒼夜

お弁当屋「おひさま」は今日も繁盛しています。

「いらっしゃいませ!」


おはようございます。

僕はお爺ちゃんとお婆ちゃんが経営する弁当屋「おひさま」で従業員として働いている大空おおぞら 陽太ひなたです。

この店では300円前後からワンコイン価格で満足のいく味と量が売りの弁当を売っています。

この弁当を求めてやって来るお客様達の殆どが肉体労働者のようで…店を閉める頃には売り切れとなる位です。

ただ…この店には不思議な点が1つあるんだよね…その不思議な点が…


「ヒナタ君。勘定を頼む」


「あ、はい!えーと…おひさま弁当5つに唐揚げ弁当10つに生姜焼き弁当3つに海苔弁当2つにカツ丼5つ…それに豚汁25杯に烏龍茶が25本で合計満月銀貨20枚に半月銀貨2枚ですね」


「………っと、これで丁度の筈だ(しかしあの美味さでこの値段…利益はちゃんと出てるのか?もう彼此3月も経っているのに生活が苦しそうな様子は見せてないから問題無いと思ってはいるが…)」


弁当屋の入り口が…いつもの商店街じゃなくて…異世界に繋がってしまったんです。

それも…異世界ファンタジーに出てくるような獣人やエルフといった種族も存在する!


「さてと…"収納"」


僕の目の前にいるたった1人で30人数の弁当を買いに来た騎士…アーヴェルラークさんは弁当の山に手を翳して魔法と思わしき単語を呟いた瞬間、弁当の置かれた場所に魔法陣が出現し…光ったと思った瞬間に魔法陣と共に弁当の山は消えて無くなった。

最初にこの光景を見て驚いた時に聞いてみた所…収納魔法で自身が作り出した異空間へ転送したと言う。

更に詳しく聞くと…転送した物体は解放するまで時間の影響は勿論、揺れや衝撃の影響を一切受けないらしい。

もし収納中に術者が死んだ場合、異空間は術者の死と共に消滅して収納物も消えてしまうとの事。

普通なら異空間に収納した物が辺りに乱雑に出てくるのが決まりだと思うんだけど…。


「また明日な。美味いベントー、楽しみにしてるぞ!」


「はい!アーヴェルラークさんも騎士の仕事、頑張ってください!」


アーヴェルラークさんは僕にそう言って店を後にしようとしていた。

僕もすぐに笑顔で返事をしてアーヴェルラークさんを見送る。


「あぁ!」


僕の返事にアーヴェルラークさんは力強く返事をし、店を後にした。


「しかし…今更ながら本当に不思議だよね。本来の場所商店街では売上が伸び悩んでいた時、突然この世界と入り口が繋がるんだから」


僕はアーヴェルラークさんが買った弁当の代金をレジに入れながら…心の中で思っていた事を呟いた。


「きっと神様がこの店を潰さないように配慮してこの世界へと繋げてくれたんじゃないのかな?」


補充用の弁当を置く為にやって来た時に僕の独り言が聞こえたのか…女性の声が後ろから返事をする。

この女性の名は東雲しののめ このは、僕の幼馴染であり…この店の従業員の1人でもあるんだ。


「…かもしれないね」


僕はこのはの突拍子も無い発言に少し考えてから冗談交じりでこのはの言う通りかもしれないと返事をした。


「ヒナタ君。お会計お願い」


「あ、はい!」


…っと、雑談はこれくらいにして…弁当屋の作業に戻るとしよう!

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お弁当屋「おひさま」-異世界店 紅月蒼夜 @kodukisoya

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