狂愛の輪廻

文月 澪

輪廻

「見つけた」


 高校からの帰り道。そんな声と共に、腰に何かが抱きついた。若干パニクりながら見下ろすと、小学生だろうか。小さな男の子がしがみついている。


 サラサラと流れる色素の薄い髪。背中には黒いランドセル。白くて細い腕が腰に回されていた。


「え、ちょっ、君何してるの!?」


 私は慌てて腕をほどこうとするけど、意外に力が強くて外れない。


 男の子は私を見上げ、微笑んだ。



 そう呼ばれ、ぞくりと背が粟立つ。


「な、なんで……その名前……」


 それは幼い頃から繰り返し見る、夢の中の私の名前。誰にも話した事は無いのに。何故この子が知っているの。


「僕だよ。クオード、覚えてるよね?」


 震える私の腰元で、男の子は暗い瞳で笑う。


「あ……いや……」


 頭が割れそうに痛い。


 クオード。


 その名前が、私の記憶をこじ開ける。


 それは遥か遠い星の記憶。


 私は、彼に、殺された。


「愛しているよ、エスフィリア」


 幼い小さな手が持ち上がる。


 そこには鋭く光る刃。


 次の瞬間、お腹に熱が走った。

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狂愛の輪廻 文月 澪 @key-sikio

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