青春ラブコメしたいだけなのに高嶺の花さん達が全力で邪魔してきます泣。

二十一話・人生二回目のデート。

俺は何から何までを天霧さんに正直に話した。

嘘や取り繕うとしたところできっとバレるし、なんというか見透かされると思ったからだ。

俺の話を聞いた天霧さんは髪を耳に掛けながら口を開く。

「沢村さんとそんなことがあったなんて思いもしませんでした」

「いや、本当にそうなんだよ。って、天霧さんが原因だよね？！」

「そんなに言わないでください。その、男の子の連絡先を聞くのは初めてだったし、恥ずかしかったんです...」

言いながら天霧さんは気恥ずかしいそうに俺から目を逸らす。

男子の連絡先、初めて聞いたんだ...いや、喜んでる場合か！！

「ま、まぁ、理由は分かったけどさ、あれは酷いよ？沢村さんもなんか怒ってわけだし」

「それはごめんなさい。後で私から直接間違えだったことを伝えておきますから」

「そ、そっか」

な、なんか今日はやけに聞き分けがいいな。もしかして本当にただ相談を聞いてくれるつもりなのか？

そう思いながらも、俺は話を続ける。

「まぁ、沢村さんの話はその辺で。天霧さんも俺なんかおもちゃにしてどうするの？」

「だから前も言ったでしょ？ストレス発散ですよ。花山くんは丁度いい相手だったんです」

「あ、あぁ、そうだったね」

分かってたけど改めて言われると悲しいなぁ。

「そう言えばさ、朝のこと覚えてる？」

これ以上俺と天霧さんとの関係について話しても無駄だと思ったので俺は話題を変えた。

「朝のこと、ですか？」

「うん、一条さんと席変わったでしょ？」

「は？」

そう呟き、天霧さんの表情は一気に曇った。い、嫌な予感がする。

「...よりにもよってその女の話ですか...間違えて花山くんのこと殴りそうでしたよ」

「そ、そんなに聞いたらまずかった？」

「見なかったんですかあの女の態度...私のことを馬鹿にして、今も昔も本当にムカつきやがる女です...」

「い、今も昔も？」

そう返すと天霧さんは少しハッとした顔になる。

「な、何でもないです。とにかく！次にあの女の話をしたら酷い目に遭わせますからね！」

「ひ、ひぃぃっ！！すみません！！」

こ、怖えぇやっぱ怖えぇよ。と、俺が心底ビビり散らかしていると天霧さんは軽く咳払いをしてから改めて口を開く。

「そんなことより、今度の休日のこと忘れてませんよね？」

「こ、今度の休日...なんのこと？」

土日は学校休みだし、何かあったか？

「まさか、こんな美少女とデートする約束を忘れたなんて言いませんよねぇ...？」

「デ、デート？あ、あぁ！勿論だよ！忘れるわけないって...ほ、本当に！」

笑顔になりつつも、眉間にシワを寄せる天霧さんへ取り繕ったように返す。

そ、そうだった。そんな約束をしたんだったな。あ、危ねぇ。もう少しで殺されるとこだった。

「本当に覚えてたんですか花山くん。まぁ、それはいいとして、ちゃんと来てくださいね？」

「あ、あぁ。わ、分かってるよ」

「...もし、来なかったらどうなるか分かりますよね...？」

「は、はい！！勿論です！！！」

背筋を伸ばして返事をすると天霧さんは嘘みたいに笑顔になった。

「それじゃ、当日は楽しみにしてますねはなやまくんっ」

「あ、あぁ、うん」

言葉を返すと、天霧さんは風のように図書室から去っていった。

うわぁ、完全に忘れてたよ。ま、まぁ行くしかないか。

そう心の中で呟いた俺はそれまで読んでいた著:羽田佳祐の黒冷水をそっと閉じて、少ししてから下校した。

＊＊＊＊＊＊＊

そうして迎えた日曜日。デジャブかってきもちもあったけど、俺は文句を垂れることもなく以前七海と一緒に一日過ごしたショッピングモールに足を運んでいた。

どうして七海の時と同じ場所なのかと、俺も思った。けれどこれは天霧さんの指定だ。彼女ならそれはそれは上品な場所を選ぶと思ったのだけど。

「花山くん〜！！お待たせしましたっ」

噂をすれば、甘くキュンとするような声音が聞こえてきた。俺は、そっと声の方へ向き直る。

「えっと、こんにちは？天霧さん。」

俺は少し取り繕いながらも可愛らしいワンピースを着て浮かれた表情の天霧さんへ挨拶した。

「はいっ、花山くん。...どう、ですか？」

「えっ、ど、どうって？」

そう返すと、天霧さんはスカートの裾を少しばかり引っ張っぱりながら上目遣いでこっちを見てきた。

多分だけど、服装を褒めろってことだよな。

「そ、その。凄い似合ってるし...か、可愛いと思うよ！！」

「本当ですか？！可愛いですか？」

「ほ、本当だよ。本当だからあんまり大きな声で言わないでぇ、は、恥ずかしいよ」

「もう、そんなこと言ったらいけませんよ？私は今花山くんに可愛いと褒められて本気で喜んでたんですからっ」

「...えっ」

急に鼓動が早くなり、頬が熱くなった。

しかし、その瞬間、天霧さんは悪戯気な顔になる。

「なーんてっ！早くいきましょっ！今日は楽しみにしてきたんですからっ」

「あ、えっと...うん。」

やっぱ嘘ですよねぇ。分かってたけどやっぱ天霧さんは悪魔だ。

そう思う俺をよそに、天霧さんはショッピングモールの中へ駆け出す。

「花山くん〜！早くしないと置いて行っちゃいますよ〜！！」

「わ、分かったから少し待って！！」

しどろもどろになりながらも、俺は天霧さんに追いつくために早足になる。

こうして俺はまた、不本意な形で美少女同級生と一日デートするらしい。