消えた犬川るんの処女作と犬と猫どっちが好き?問題

犬川るん

第1話 吾輩は犬である

 名前はまだない、と言いたいところだが名前はある。犬川るんだ。

 偉大な猫の先輩に喧嘩を売っているわけではない。吾輩は猫とも友人であるのだ。と言ってもその友人猫は数年前に永遠に会えなくなってしまった。そして、吾輩が猫を友人に持っている時、我輩自身も猫であった。現在は吾輩は犬となっているわけだが、その経緯はおいおい話していきたいと思う。

 今は昨晩我が身に起こった事件を諸君らにお話ししたい。

 吾輩は怖い話が好きだ。

 そして、読書も好きだ。

 吾輩は好きな作家さんが何人もいるのだが、その中の一人が参加している同人誌─十数名からなるホラー作家たちの短編集を入手した。

 素晴らしいものだった。

 短編集とは思えぬ満足感に吾輩は刺激され、自分も執筆に至ったのだ。読み終えてすぐに、ここカクヨムに登録して簡単なプロフィールを入力し思いついたばかりのネタを文章にしていった。

 犬川るん渾身の処女作が完成した。

 が、ここで事件は起こった。

 なんと犬である吾輩は悲しくもその小説の保存方法をミスり二時間かけて書いた2800文字は全てきれいサッパリ消えてしまったのである。

 投稿を日和っていったん保存しようとしたのがいけなかった。

 もう何もない。

 悔しくて悲しくて眠れなかった。

 なんのために夜更かししたのか。

 縁がなかったんだ、あの作品とは。消えたということはそういうことなんだ。そう言い聞かせてはみるもののショックは消えない。

 なので、これを書いている。これを読んだ諸君らが吾輩の悲しみを知ってくれれば吾輩も救われるだろう。ただ一つ、不安がある。もし、またこれが消えたら?吾輩はその時いったいどうやって自分を慰めればいいのか。

 吾輩は考えた。解決策がある。

 消えてもダメージのない量で投稿すればいいのだ。

 今は…まだ消えてもダメージは少ないだろう。そうか?本当に?

 ここらへんでおしまいにしたほうがいいかもしれない。

 しかし、優秀な読者諸君らはお気づきだろう。そう、まだタイトル回収が終わっていないのである。

 犬と猫どっちが好き?これは吾輩が幼き頃から中年へと成長を遂げる中で何度も話題に上がってきた。その度に吾輩は「猫」と答えたのである。そんな我輩が今では立派な犬になっているのだから人生とは何が起こるか分からないものだ。生涯猫派だと思って生きてきたからである。

 では、現在は犬派なのかと聞かれれば「犬も猫も愛している」と答えるだろう。吾輩は猫の良さも犬の良さも知っているのである。犬と猫を永らく分断してきた人間は愚かだと言えるだろう。

 

 さて、犬猫戦争に決着がついたところでお開きにしよう。

 これ以上のおしゃべりはもしものことが起こってしまったらを考えるととてもじゃないができそうにない。

 

 吾輩のつまらない話に付き合ってくれたそこの君、ありがとう。

 もし興味があったらこれから執筆するであろう吾輩の作品たちも読んでみてほしい。では、さようなら。


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消えた犬川るんの処女作と犬と猫どっちが好き?問題 犬川るん @uchu061523

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