第3話
目を開けると、ここは何処だろう。
天国だろうかと一瞬思ったが、目を左右に動かすとベッドの上にいる、病院だ。
生きているみたいだが、身体中が痛い。微かだが声が聞こえる。
どうやら看護師が、目が覚めましたと医師に連絡しているようだ。
しばらくすると、私の担当医師がやってきた。
「お身体は大丈夫ですか?」
「あっ、はい、そういえば息子の状態はどうなんですか?」
医師に聞くと
「息子さんなら心配なさらず、軽症でしたよ、ご家族が心配そうにしてましたから安心しました。警察官が聞きたいことがあるそうで、一旦席を外しますね、またあとで今後のことについて話しますので」
医師が帰っていった後、警察官が来て事故の状況について聴取しに来た。
主に私が前をよく見ていなかった点についてだ。相手の大型トラックの運転手も過失があるそうで、居眠りをしてしまって、対向車線をはみ出したということだった。
私が前をよく見ていれば、対向車の動きに早く気づいて、このような大怪我や息子に怪我をさせなかったかもしれないと思うとやりきれない。
警察官が帰ると、医師が戻ってきて体のことや今後について、話してもらった。
医師が「ご家族が待っているのでお呼びしますね、何かあったらまた呼んでください」
「はい、ありがとうございました」
話が終わると、妻と息子が病室に入ってきた。
息子は医師のいった通り、軽症で頭と腕に包帯を巻いていた。
私が「ごめん心配かけたな」
妻が「いいのよ、あなたが生きていれば」
涙ぐみ、息子も今にも泣きそうな顔で
「パパが死んじゃうのかとママと話していたの」
医師によると、内臓系の損傷はないが、しばらくの間は入院ということで、家族や仕事の同僚に迷惑をかけることになるなと
「ごめん、ごめん」
私は涙を流しながら、2人に謝った。
せっかく息子と良い夏休みの思い出ができたのに、事故のせいで、悪い夏休みの思い出に上書きされてしまった。
「来年の夏休みは、今年の悪い夏休みの思い出をふっ飛ばす、いい思い出つくろうな!」
「うん!」
息子が最高の笑顔で答えてくれた。
来年のことをいうと鬼が笑うとはよくいうが、今回ばかりはいいよな。
こんな目にあったんだからな、鬼よ!と窓から夏の空に向かって祈った私なのでした。
おわり
ひと夏の思い出 もっちゃん(元貴) @moChaN315
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