親の心子知らず、という言葉があります。
親の愛情や思いやりというのは、好き勝手したい子供にとっては煩わしさすら感じるもの。
それが父親と年頃の娘さんであれば言わずもがなでしょう。
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この物語は地下鉄で、主人公が娘さんにそっけない態度を取られてしまうところから始まります。
まったくこちらを見てくれない。声をかけようにもイヤホンも装着されていて聞く気もない。
明らかなコミュニケーションの拒絶を察した主人公は空しさを覚え、脳内にある記憶のカードを一枚ずつめくっていきます。
輝かしい「あったはず」の思い出たち。そして、お手本としているグリーン先生。
一人考えていくうちに、主人公の「父性」はゆっくりと膨張していって……
何気ない悲しい「あるある」話からここまで話が進展していくのは圧巻。
最終的な帰結も含め、驚きっぱなしの短編小説でした。