11 アユムへの手紙[後編]【完結】

アユムへ。


 ごめんなさい。またアユムに嘘をついちゃったね。

 燃料なんて別に補給しなくてもあたしは大丈夫なんだ。

 でもね。嬉しかったよ。エネルギー造るって言ってくれたの。

 本当に本当に嬉しかったよ。ありがとう。そして嘘ついてごめん。


 アユムがこれを読んでる頃、私はもういなくなってる。

 これからあたしは海に飛び込んで自爆することに決めたから。

 アユムのお気に入りの場所でごめん。ごめんね。


 アユム、怒ってるよね。

 嘘ついたんだもんね。当然だよね。


 あたし、思ったの。

 あたしね。アユムのこと好きだなって。

 アユムが好きなこの街が好きだなって。

 アユムが昔住んでた家も好きだなって。

 アユムのお気に入りのガレキの楽園も好きだなって。


 だからね。守りたいって思ったんだ。


 あのね。じーさんね。細工したの。こっそりね。

 あたしと同じタイプのアンドロイドにね。

 あたしが壊れたら他のアンドロイドも壊れるように。


 これはね。この国にとって結構な損失になるはずなんだ。

 もしかしたら兵器開発の予算とか減らされるかもしれない。

 もしかしたら兵器開発の予算がなくなるかもしれない。


 そういう可能性に賭けてみたいなって思ったの。


 ああ、もう、ページ足りそうにないなぁ。

 次の紙読んで、次の紙。



 ええと、それで、だから、

 だから、あたし、守りたいって思ったから、

 自爆することを選ぶことにしたの。


 じーさんね。すごく優秀な科学者だった。

 だから兵器開発にとても必要な存在だった。

 じーさんは守りたかったものを思い出した時、

 後悔したんだろうね。

 すごく後悔したんだろうね。


 今ならじーさんの気持ち分かるんだ。あたし。


 だから、分かるんだ。

 じーさんがあたしを逃がした後、

 どうしたのか。


 アユムは怒るだろうね。

 じーさんのこと。勝手すぎるって。


 でも許してあげて欲しいの。

 じーさんは十分、悔やんだ。


 それに、あたし、こういう結果になっても、後悔してないよ。

 アユムに会えたから。だから、後悔してない。


 アユムに出会えて良かったって思うよ。

 だから、さっきあたしのエネルギー造るって言ってくれた時みたいに、

 あたしと出会ったこと。あたしがアユムに話したこと。

 無駄にしないで欲しいの。それがじーさんがあたしを逃がした本当の理由。

 あたしのこと忘れないでね。あたしが話したこと忘れないでね。

 自分が好きな場所や好きな人のこと忘れないでね。

 勝手なことばっか言ってごめん。


 そしてもう一つ決めたんだよ。


 あたしは天国には行かない。


 あたしはずっとここにいるよ。

 このガレキの楽園にいる。


 だから、さよならは言わない。

 また、会おうね。約束だよ。


  アユミより。

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ガレキの楽園 @hbiy0514

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