10 アユムへの手紙[前編]

アユムへ。


 あたしはアユムに嘘をつきました。

 あたしがアンドロイドなのは本当。

 あたしが兵器だっていうのも本当。

 でも追って来る奴なんていないの。

 あたし一人に構わなくても他にもアンドロイドはいるからね。

 まぁ、戻ったら捕まっちゃって作り直されちゃうけどさ。

 そうなるとじーさんの言ってたこと守れないから。


 ねぇ。アユム。

 あたしがこの手紙を書いた後、

 あたしはアユムとどんな話をしたんだろうね。


 あたしは今ね。

 この手紙、渡すか渡さないか迷ってる。

 でも渡す時が来た時の為にこれを書いてる。


 じーさんはあたしに言ったの。

 逃げたら友だちを見つけて、

 アンドロイドがちゃんといるってこと、

 この国には悪い奴がいっぱいいるってこと、

 それを話して欲しいって。


 そんなこと話してどうなるんだろうって思った。

 でもそれがじーさんの言ったことだからあたしは話した。


 そして、あと二つ、じーさんがあたしに言ったことがあるの。

 一つは今はまだ秘密。もう一つの方だけ教えるね。

 友だちが出来て、あたしがじーさんが言ったことの意味を知った時が来たら、

 きっと、私と同じ道をあたしは選ぶことになるだろうって。

 それってあたしも天国に行くってことだよね。


 あたしにはそれくらいしか分かんないんだけどね。

 でもこの手紙渡す時が来たらそれが分かった時だと思う。

 そしたら多分、あたし、また手紙書くよ。


  アユミより。

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