開幕 〜令嬢登場〜
「やめて!私のために争わないで!」
突然、場の空気を読まない甲高い声がホールに響く。
かと思うと、1人の令嬢が婚約者に駆け寄り、その腕を抱いた。
「カレン!」
自分の恋人がわざわざ隣にきてくれたからなのか。
あるいは、彼女の豊満な胸を押し付けられているからだろうか。
先程まで怒っていたはずの彼の顔が一瞬にしてだらしないものへと変わる。
「……」
感情を表に出すなんて、彼の貴族教育は一体どうなっているのだろうか。
「ロディ、やめて。怒らないであげて」
彼の腕を抱いているのは、ピンク色の髪に水色の瞳の令嬢。
彼の反応からして、先程話題に上がったカレン=デュレン嬢のようだ。
「カレン、しかし…」
「ロディ、いいの。怒らないで?」
「…まるで劇ね」
2人だけの世界に浸っている2人はまるで、この間見たばかりの舞台のようだ。
あれはたしか、恋愛ものだったはず。
内容は確か…ええと。
王子様が平民の女性に恋をして、めでたしめでたしなお話だったかしら。
2人のそんなやり取りを、まるで他人事のようにぼーっと眺めていたら、ふと令嬢と目が合った。
令嬢は私と目があったことに気付くと、口の端を小さく持ち上げ、ニヤリと笑う。
そして、
「私が悪いのよ。私がミラージュ様を怒らせるようなことをしたから」
とさめざめと泣き始めた。
婚約破棄物語 @koe351
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。婚約破棄物語の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます