あとがき 輪廻と未来

秋も深まり、山々の紅葉が美しい季節だった。


神社で一人遊ぶ少年が居た。


落ち葉を集めては積み重ねてみたり、参道に並べてみたりしていた。



手水舎の水に落ちた葉は数枚あって、少年はそれを見ると

毎回美しさに見惚れていた。



その神社の鳥居から人が入って来た



少年は慌てて、参道に置いた落ち葉を拾って集めていた。




参道を歩く人間は、父と母の間に幼い娘が二人の手を握りながら

まるで飛ぶ様に歩いていた。


自分よりも幼い娘だと少年は察したが、その飛ぶ様な様に

今まで見た事も無い驚きと夢を描いていた。



歩いて来る三人は参道を逸れて、宝物庫の方へ向かった。

そこで腰を下ろし、お辞儀をしていた。



幼い娘はその後直様、少年の元へ行った。

二人は直ぐに仲良くなり、遊んでいた。



娘の両親は、そんな二人を微笑ましく思いながら

拝殿への階段を登り、参拝していた。




その後、陽も詰まる時間だったので、両親は少年の元に行き

一緒に村へ帰ろうと言った。


少年と娘は手を繋いで二人の前を歩き、村へ向かった。

両親はそれを背後から優しく見守っていた。



少年の家迄送り届けると

その家の前の畑で農作業をしている女性が居た。

彼女は遠目でも、臨月だと分かる容姿をしていたが元気に働いていた。



少年が母の元に駆け寄ると、その後彼女が三人の姿を見た


彼女は驚いたが、走って三人に向かう迄の時間は刹那だった。


彼女は直様、幼い娘の母親に抱き付き、母親も彼女を抱き返した。


隣でそれを見ていた父親は


「ただいま」


と言った。





祝言から数年経った日の出来事だった。




少年とスイは何も変わっていなかった。


ただ、二人の髪の色が完全な白色と金色だった事に

母と娘は、何処か異国情緒な雰囲気を抱いて驚いていた。


それ以上に、二人に似たとても可愛い娘を見て喜んでいた。


妹は恋人と結婚し、街に嫁いだ様だった。

そして二人目の子供を身籠り、里帰りしていた。



少年は妹の息子をずっと眼で追いながら納得していた。


輪廻かな


「か細い声」で独り言のように呟くと、スイが笑いながら少年の肩を叩いた。



意外にもスイの力が強かったので、少年は驚いた。

そのリアクションを母と娘は笑っていた。




話は尽きぬ中、二人の若い夫婦が家を訪れた。

若い夫は泥が着いた着物で、先程収穫を終えた新種の野菜を届けてくれた様だった。


そして、少年の顔を見ると、その手に持った野菜を落とした。

満面の笑みを見せる少年に、若者は涙眼で詰め寄り頭を下げていた。


隣の美しい女性もスイに気付き、笑顔で会釈をした。



そして、その後ろからまた

若い男女が訪れた。



その二人は、三人が来る事を知っていたかの如く最初から笑顔だった

隣の女性はお腹が膨らんでいて、着物の帯にはあの飾り物が着けられていた





その日の夜は、少年の小さな家で宴会をした。

外の星は、相変わらず綺麗で明るかった。


それ以上に皆の顔が輝いていた。


割れた祖母の位牌は、父の位牌と綺麗に静かに並んでいた。



遠くでは狐の声が鳴り響いていた。




狐の涙【結】 完

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狐の涙【結】-MusuBi- 前田 眞 @maeda_sh1n

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