第13話 ヤクザ暗躍す

空想近未来小説


 ジョーはある黒情報を耳にしていた。日本のヤクザが核物質の原料となるプルトニウムを外国に売り飛ばそうとしているものだ。

 そこで、早速チームを作って、そのヤクザを封じ込め、プルトニウムを奪取する作戦をたてることにした。

 集めたメンバーは次のとおりである。今回はオールジャパンである。

 イマイ 防衛省(武官2尉) 34才

 ヤマノ 核処理担当     33才

 ニワ  核処理担当     30才

 タッキー ヘリ担当     34才

 アケミ 情報処理担当    29才

 ジン  銃器担当      27才

 カトウ 格闘技の達人    26才

 まずは、情報担当のアケミがイマイの協力を得て、ヤクザの動きをさぐる。すると、出入国を繰り返しているヤクザが3人ピックアップできた。その3人の動きをさらにさぐる。すると、東南アジアのK国と中東のI国に行っている海老原という人物が浮かび上がった。どちらも紛争国である。

 そこで、ジンとカトウに海老原の動きをさぐらせることとした。場所は横浜である。横浜ふ頭から荷物を搬出する気なのだろうか。どの程度のプルトニウムなのかは不明である。

 翌日、アケミがシンガポール行きのコンテナ船にのる荷物の中に不審なものを見つけた。木箱に入ったオートバイである。高級バイクのようで、取り扱い注意の貼り紙がしてある。それといっしょに高度のバッテリーが保管されていると書類に記載されている。どうやら電動バイクの試作車のようである。だが、日本のメーカーが試作の電動バイクをシンガポールに送るというのが、アケミには解せなかった。その方面の最先端であるY社に問い合わせてみたが、そのようなことはしていないというし、仮に試作車を作ったメーカーがあったとしても、シンガポールに送る意味がわからないということだった。そこで、試作車を作りそうなメーカーを教えてもらったが、全てのメーカーが、そういうことはしていないということだった。だが、あるメーカーの人が知識さえあれば町の二輪販売店でも電動バイクの試作車は作れるということであった。そうなると確認のしようがない。

 とりあえず、ヤマノとニワがガイガーカウンターを持って、横浜ふ頭に向かった。問題の木箱が入っているコンテナの近くに行くと、わずかながらも針が動いた。だが、これと言って深刻な数値ではない。よって税関も輸出許可をだしたらしい。試作車が高価ということで、検査はあまり徹底されなかったみたいだ。明日、このコンテナは船に乗ってしまう。もし、万が一コンテナ船が海賊におそわれたら、他の荷物とともにプルトニウムが奪われることになってしまう。そうなったら、K国の反政府勢力もしくはI国の軍部に渡り、核爆弾の材料になりかねないのである。かと言って、無理やり木箱をあけるわけにはいかなかった。もし違っていたら大変なことになる。

 木箱の差し出し人はE商事となっている。架空の会社で海老原がやっているダミー会社であることは間違いない。

 時間がないということで、海老原本人に確かめるしかないとジョーはジンとカトウに拉致してくるように指令した。

 海老原は空港にいた。外国に高とびをしようとしている。周りには5人ほどのボディガードがいる。そこで、2人が考えたのは出国審査で特別室に連れていくことである。その手配は、イマイが行った。防衛省の権限で海老原を個別調査するということで、ボディガードから引き離したのである。そして、その特別室からジンとカトウが海老原を連れ出す。もちろん裏口からである。そして空港内の車両に乗せて、空港の外れに駐機しているタッキーのヘリに乗せて飛び立った。その間、海老原は薬で眠っている。5人のボディガードは離陸時刻になっても海老原が出てこないので、特別室に乱入したが、そこはもぬけの殻。すぐに逃げ出そうとしたが空港警察に器物破損で連行された。

 夕刻、目を覚ました海老原はジョーの目の前にいた。

「お前はサツか!」

「警察に見えるのか?」

「ちがうな。サツの臭いがしない」

「すごいな。臭いでわかるのか? そうともオレはWPKCだ」

「WPKC?」

「知らないのか? まだ認知度は低いな。世界平和維持部隊と言ったらわかるか?」

「世界平和維持部隊といえば、世界の紛争を解決しているところか」

「まあね」

「その連中が、なぜオレを捕まえる?」

「しらばっくれる気か? 危ない物を外国に売り渡そうとしているじゃないか」

「そんなことはしていない」

「じゃ、どうしてシンガポール行きの飛行機に乗ろうとしていたのかな?」

「それは観光だ。遊びでいくだけだ」

「ボディガードを5人も引き連れてか?」

「まあね。一人じゃさびしいからな」

「そうか、それじゃ、この映像を見てもらおうか」

 と言い、ジョーはPCである映像を見せた。放射線の防護服を着たスタッフ2人が木箱をあけている映像である。海老原の顔はひきつっている。

「横浜のふ頭で不審なコンテナが発見された。それで、あけてみるとプルトニウムがでてきた。これはおまえが出したものではないのか?」

 海老原はだんまりを決め込んでいる。

「オレたちには逮捕権はない。でも、南海の孤島の牢屋にぶち込むことはできる。もしくは、警察に引き渡すこともできる。もちろん自首扱いでな。どっちを選ぶ?」

 そこで海老原が折れた。南海の孤島にいたのでは何もできない。警察につかまり、刑務所にいた方がまだいい。と判断したのだろう。

「わかったよ。全部話すよ。あの木箱はオレが出した。シンガポールに行く途中で、K国の海賊が船を拉致し、ブツをI国に送り、小型核爆弾にして、K国の反政府勢力が買い取るという寸法だった」

「プルトニウムの出どころは?」

「原発さ。廃棄されるプルトニウムにまぜて、持ち出したものだ」

「どこの原発だ?」

「それはわからん。そういうブローカーがいるんだよ。そいつらを調べてみたらいい」

「そいつの名前は?」

「ブラックとしかわからん」

「向こうからメールがくるが、こっちからは伝わらん。向こうの言うとおりにしないとブツは手に入らん」

 海老原のPCをチェックすると確かにそうだった。メールアドレスをたどると、外国のサーバーをいくつも経由しており、結局は分からなかった。

「よし、ヤマノとニワに連絡だ。荷物を押収だ」

 翌日、船に積み込む前にコンテナは押収することができた。警察立ち会いのもと、荷をほどいた。もちろん放射能防護服を着て、隔離装置のテントを設置した上である。先ほど海老原に見せた映像はアケミが作成したフェイク動画であった。警察がやれば違法捜査だが、WPKCには許されている。何事も世界平和のためである。

 ブラックについては、警察に任せることにして、任務完了。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

世界平和維持部隊 飛鳥 竜二 @taryuji

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ