2日目②

 目を覚ますと、教室の天井が目に入った。

 新鮮だなぁと思いながら体を起こすと、楓太、心々菜、翔太がまだ寝ていた。


「あ、おはよ。曖」


 美咲は起き上がった私を見て、そう言った。私は寝ぼけながら「おはよ」と返してもう一度寝ようとする。


「寝るな!そろそろ準備するよ」


 準備…面倒くさいなぁ。

 一生このままでいれるなら、それはどれだけ幸せなことだろう。


 私はあくびをしながら時計を見て、一瞬固まった。


「…ねぇ、今何時?」


「9時半だよ」


 …うん、普通に大遅刻だよね。

 もしこんなんで先生の機嫌を損ねて殺されちゃったら最悪だよ。

 ま、そうなったとしてもなんとかなるだろう。適当だけど。


「起きろ、楓太」


「んー…」


 楓太、意外と寝顔が可愛いんだよなぁ。

 あまり意識してないから忘れそうになるけど、楓太も翔太もかなりのイケメンだ。

 美咲も心々菜も可愛いし、私だけ可愛くないのは何でだろう。

 これは顔の話じゃないけどね。私は顔だけならこの学校で1番可愛いと思う。


「…あれ、しょーたがいるぅ」


 あ、心々菜起きた。


「あれ、ここどこ…え、ここ教室!?」


 飛び起きて目をぱっちりと開いた心々菜は、まだこの状況を理解していなかった。


「心々菜、おはよ」


「あ、曖?ていうか、美咲と楓太も…あ、そっか」


 完全に目が覚めたようで、心々菜は少し俯く。まぁ昨日は色々とありすぎたしね…


「美咲、先生とか来た?」


「来てないよ。さっきチャイムは鳴ったけど」


 ふむ…遅刻に怒っているとかは無いのかな。それとも私達を待ってるとか?


「…とりあえず、男二人起きろ!」


 私はそう言って楓太を布団ごと蹴り飛ばした。翔太は心々菜が優しく起こしている。


「痛っ!?えっ、なんで曖…うわっここどこ!?」


 混乱している楓太をよそに私は荷物を持ってトイレに向かう。

 先生が歯ブラシとかの生活必需品を支給してくれたおかげで寝泊まりする分にはまず困らない。


 あと、ついでに小型のカメラも支給されている。

 先生は何かあった時用って言ってたけど…何か起こしてるのは先生でしょ。


 カメラは5つ支給されていたのでとりあえず教室の扉の上と1番近くにあるトイレの入口に付けておいた。


 トイレは階段近くにあるので、侵入者が来て何かしてきた時に役立つ。

 襲われても私と美咲、楓太ならなんとかなるだろうけど、心々菜と翔太は危ないかもしれないから。


「いいえお、あんえおんあおおい…(にしても、何でこんな事に…)」


 私は歯を磨きながらどこかに文句を垂れる。

 …なんか、トイレにある水道で口を濯ぐのは少し抵抗感があるね。


 歯磨き粉を終えて教室に戻り、着替えを終える。

 美咲は既に朝の準備を終えていて、敷いた布団を片付けたりしていた。


「…そんなジロジロ見る?」


「見られたくないなら俺の真ん前で着替えるなよ…」


 歯をゴシゴシと磨きながら器用に喋る楓太にちょっとだけ笑いが溢れる。

 どうやってるのそれ…


「少しは恥ずかしがりなよ」


「じゃあ美咲は楓太に裸見られて恥ずかしがれる?」


「…無理だね」


「なんでだよ!」


 しばらく3人で雑談をしていると、ある違和感に気付いた。


「てか、心々菜と翔太はどこ行ったの?」


 …もしかして、置いてかれたんじゃ?


「置いていかれたかもね」


「置いていかれたんだと思う」


 …ふぇぇ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

曖を満たして 四谷 @pinta

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ