第2話 石の声を聞け?
その女子生徒は、校庭の片隅に掘られた浅めの穴に木の枝を敷き、彼女の周囲には大小様々な「石」が置かれていた。枝の上にはやや大きめの石を置き、その上に幾つかの石を並べていた。
「う~む、なかなかに配置が決まらないな」
彼女はひとりゴチながら、石たちを睨みながら悩んでいるようだった。
「君、そこの石…いや、それではなくて…そう、それをこっちまで持ってきてくれないかな?」
彼女にそう言われた僕は、なにがなんだかよくわからないが、指示されるままに石を持ち上げる。結構重いな。少しふらつきながらもなんとか持ち運び、彼女の側に置く。
「ありがとう。さて、これはハマるかな?」
この状況でなければ、黒髪黒目の清楚可憐な女子高生なのだが、如何せん状況が状況だ。意味がわからない。そして見た目からは想像できないパワーの持ち主だった…僕が苦労して運んだ石を、ひょいと持ち上げると、並べた石の上に軽々と置いた。
「う~む…ここではないか。違うと言ってるな」
彼女は置いた石を持ち上げ、元の場所に戻すと腕を組んで思案し始めた。
僕の存在忘れてないか?
しかし、それは千載一遇のチャンスかもしれない。この謎の状況から逃れ、帰宅できるチャンスを逃しては行けない。気配を殺しつつ背を向けて去ろう、とした瞬間…
「あ、いちばん端の石、持ってきてもらってもいいだろうか?」
チャンスは一瞬で潰えた。
なんとなく逃れられない悪寒に襲われ、背中に冷や汗をかきつつも、端の石を持ち運ぶ。これも大概重いぞ。
「さて、この子はどうだろう…お、バッチリだな。喜んでる」
ビタリとハマった石に向かって、女神のような笑顔を向ける彼女。この状況でなければ一目惚れしそうな笑顔だ。
「うんうん、やはり石の声を聞いてあげないとね」
そうこうしつつ、彼女は幾つかの石を積んでは戻し、を繰り返した。積んだ石と溝の斜面の隙間には、砂利のような細かい石をスコップで運び敷き詰めている。
端から見たら、まったく理解不能な行動だが、僕は知ってる…何故か知ってる…彼女が何をしようとしているのかを。
城研~城山高校城郭研究会の日常~ 青さん @hayama0327
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