ヤベー奴
目の前にいる悪魔の公爵。
圧倒的な威圧感。
どうやっても私達じゃ勝てないのが分かる。
いまこうして立っていられるのはシュヴァエモンが居るから。
そのシュヴァエモンからの声がサイバーゴーグルを通して聞こえてくる。
「良いか三人共、今までより強力なバフをそなた達に掛ける。全力で戦え、今回は我も共に戦うゆえ案ずるな」
もちろん、そんな事言われてハイそうですかなんて言えるわけがない。
「へっへっ、了解。こんなヤベー奴と戦えるなんて思っても見なかったぜ」
と思っていたのにやる気になった人が一人。
「虎の子を得るにはやはりリスクは必要ですね。分かりましたシュヴァエモンさんを信じますわ」
なぜか私以上にシュヴァエモンを信じてるもう一人。
いや、だって目の前のアレヤバいって分かるよね、私ですら分かってるのに、二人が分からないはずが無い。
なのに、なのに……あー、もー、仕方ない。
私も腹を決める。
初っ端にブチかますべくカール・グスタフを肩に担ぎ狙いを定め、いつでも攻撃出来る態勢に入る。
「汝の顕現化がここまで進んでいなければ手を出すつもりはなかったのだが、さすがに八割近くではこの者たちでは相手にならぬからな、我も助太刀せざるを得ない、悪く思うな」
「ふっ、フハッハハ、異界の者よ、吾輩の存在を知って尚、そのような大口を叩くとはな。さすがに戯言が過ぎて笑えなくなってきたぞ」
「つまり、油断している今が好機ということだな、では遠慮なくいかせてもらおう」
シュヴァエモンが正面に手をかざすと、とたんに体が軽くなる。バフの効果だ。
それを開戦の合図と受け取ったゴウと慧が散開する。
私は構えていたカール・グスタフをシュヴァエモンの影からぶっ放す。
完全に私達を舐めていたエリゴスは直撃を食らう。
続けざまにケルベロスを封じたスフィアから魔力を開放し召喚する。
「ケル、全力でお願い」
私の指示を受け、ケルベロスは初っ端から三位一体のハウリングブラスター、例の私を苦しめた貫通光線を放ちエリゴスを攻撃する。
攻撃をケルベロスに任せているあいだに弾丸の再装填と、丸薬を飲み魔力を回復させる。
その間にゴウは右側に周り足元を剛燐剣で強撃し、左側面から慧がヴェノムシューターで毒矢を放つ。
バフで強化された攻撃は確実にエリゴスにダメージを与えていた。
しかしエリゴスも反撃に出る。
片鎌槍で薙ぎ払いながら、幾重にも魔法陣を展開し
ゴウも槍の直撃は洒落にならないと理解しているらしく回避に専念する。
しかし、回避行動を読んでいたように複数の魔法陣から放たれたダークレイがゴウを襲う。
そこをシュヴァエモンが杖をかざし防御障壁を展開して防ぐ。
私への攻撃はメグ、ラグ、ドグが反射し防ぐ。
慧は回避しつつ上手くケルベロスの影に隠れやり過ごす。
ゴウは攻撃が止むと直ぐ様反撃に転じる。
大剣とは思えない速度での四連撃。
さすがのエリゴスも怯む。
「ゴウ、退避して」
サイバーゴーグル越しにゴウへと指示を出し、飛び退いた後に、ケルベロスのハウリングブラスターと私が放ったカールグスタフを直撃させる。
良い流れ、そう思った瞬間。
薙ぎ払うだけだった槍が、目に見えない速度での突きから生み出された衝撃波でゴウを吹き飛ばす。
これによりかなりノックバックさせられたゴウ。幸いヒットポイントは残っていたようで立ち上がり自前のポーションで回復を行う。
「わたくしが前衛に入ります」
前衛が崩れた事で、慧が代わりに近距離攻撃に切り替えエリゴスの槍の相手をする。
私も銃に切り替え手数を増やし、意識をこちらに向けさせ魔法攻撃が慧に集中しないようにする。
ちなみにシュヴァエモンは攻撃を行わずひたすらバフを切らさないようにサポートに努めていた。どうやら攻撃系の魔法を使うつもりはないようだ。
ただ時折防御障壁でエリゴスのダメージを緩和させたり、インパクト強化でダメージを増加させたりもしてくれているようだ。
そんな感じでシュヴァエモンのバフを受けた私達は思っていた以上にエリゴスと渡り合えていた。
しかし、ヒットポイントを回復し終えたゴウが前線に復帰した直後に、エリゴスは私達に向けて笑い始めた。
「クハッハッハツ、なるほど、愉快だ。まさかここまでやるとは思わなかったぞ」
笑いながらエリゴスは槍を投げるような構えをとる。するとそこに闇が集まり始める。
直感的にヤバいと感じ、槍の向けられた直線上から退避する。
闇の波動を纏った槍はそのまま一直線に放たれると、進行上の全てを薙ぎ払いながら後衛に居たケルベロスを直撃し貫いてしまう。
これにより大ダメージを受けたケルベロスは姿を維持できなくなり消えていく。
幸いケルベロス以外は巻き込まれる事はなかったが、あんなのを食らえばヒットポイントの残量に関係なく昇天間違いなしだ。
ただ幸いなのはモーションが分かりやすく、一直線にしか攻撃が及ばないのでその点で回避は難しくない。
ケルベロスは帰還てしまったが、まだ諦めるのは早い。
それは慧とゴウも同じだったのたろう。
二人共に再びエリゴスに張り付くと攻撃を開始する。
エリゴスは多少のダメージは気にした様子もなく、二人に対し攻撃の手数を増やす。
二体一で有利なはずのゴウと慧が徐々に押されて行く。私も銃で援護するがそれすら意に介さぬようひたすら力押しで攻め続けてくる。
攻撃の苛烈さから耐えきれなくなり、ゴウと慧は態勢を立て直す為、いったん間合いを取ろうと後ろに下がる。
しかし、エリゴスはそこを見越したように投げ槍の構えを取る。
『まずい』
ケルベロスを屠った一撃は確実に慧を射線上に捕らえていた。
絶望が頭をよぎり、自分では無い仲間が死ぬ恐怖に体が硬直する。
私は何も出来ないまま、闇の波動を纏った槍が放たれるのをスローモーションのように見ていた。
ダンジョンエクスプロード 〜嵌められた落ちこぼれJKは漆黒宰相とダンジョンで邂逅し成り上がる〜 コアラvsラッコ @beeline-3taro
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