第8話 コラボ配信2日目-2

「皆さんおはこんばんにちは、V-GATE1期生の土宮モウです。今回も新作ゲーム、名称をバーチャルリアリティシミュレーター(VRS)の特別先行体験をさせてもらいます。」


「水野ネズだよ!第1回に言われていたアバター見た目を変えてみたの。去年の冬に実装した衣装よ!これ気に入ってたんだけどなかなか着れる機会がなくてもったいなかったから嬉しいわ!」


「タイガーキノです!今日は街中を散策する予定なので何が起こるか今から楽しみ!みんなもお約束が発生するか期待するよね??」


「今回もアドバイザーとして参加する初風ナギサだ。初めてまもない世界の街なら設定から大きく変わっていないので街中を案内する予定だ。といっても、各演者の意思に従う形を取るため、大きく出しゃばらないので安心してくれ。」


『マスターの補助を担当するセレナーデです。補足説明は私が担当しますね。といっても街中イベントはある意味ブラックボックス化しているので同じ行動をしたからこれが発生するってわけではないので注意です。』


:2日目コラボいえぁぁぁぁ!

:1回目すごく楽しかった!普段と違う様子が見れたし

:ネズちゃんの衣装かわええ!確かに着る機会なかったもんね

:これって昨日の装備に見た目反映させてるのか!服アバター優秀じゃん!

:開発者でも分からないランダム性、期待しますな

:キノちゃんの言う通り、物語ならではのお約束はあるのか気になるね



 開始場面はすでに設定していた街の入口だ。ここからそれぞれの希望に沿った行動をしていく。


「ん?旅の者か?街の中に入るには身分証が必要だが…持っていないようだな。仮身分証を発行するから冒険者ギルドに登録してくれ。費用は掛かるが、戦利品を持っているなら問題ないだろう。」


 門番に呼び止められ、冒険者ギルドに登録するよう促された3人は、前日に洞窟で得た戦利品を回収しておいて良かったと思った。


「前回苦労してでも回収して良かったわね…無一文だったら冒険者ギルドに登録する事が出来なかったわ。」


「まぁ旅をするからには無一文じゃ無理ですよね。出稼ぎに来るにしても幾らかお金を持っているでしょうし。」


「ゲームなのになんて世知辛い設定なんだろ…あー、でも確かに冒険者って一攫千金を求める職って印象だもんね。お金が少なくてもギルドが少し補助してくれるのかぁ。」


:身分が分からないなら安全のために街へ入れないもんな

:物語に出て来る冒険者でごろつきが多いのはそういう部分もあるのか

:命を担保に一攫千金…


「こういう設定があるからこそ没入感が増すからな。クラフト系でも最初に苦労する時のが楽しいし。無双できるゲームも楽しいんだろうがな…」


『リアル感を出すなら苦労する部分が必要ですからね。服装や身分証をすでに持っていた場合は対応が変わりますよー。』




 無事に街へ入る事が出来た3人は教えられた道に沿って冒険者ギルドを目指す。道中は大通りの為か人が行き交い、賑わっている。


「それにしても…ほんとリアルね。歩行者天国を歩いているような気分だわ。あ、向こうの方に屋台が並んでいるわ!後で見に行かなきゃ!」


「映画のセットみたいに味気ないかと思いましたけれど、背景ときちんとマッチしていますし生活感のある汚れ方というのがあって良いですね。」


「歩くだけでも楽しいねー。住人達が決まった動きしているわけじゃないのがいいね。ほら、あそこなんて井戸端会議しているよ。」


:配信見ててもリアルさ伝わってくる

:推しが異世界に行ってしまったか…

:NPCが決まった行動をしないってすごいな

:今日はなんだかネズちゃん大人しい?こーいうキャラも好きだけど

:作った性格っぽさが抜けて俺はこっちのが好みかも


 セレナがチェックをしているコメントの内容を見て、水野ネズの変化は徐々に受け入れられているようだ。あとは定着するかどうか…今回のゲームは各方面で注目されていて新規リスナーも多く見ているから大丈夫だろう。




 無事に冒険者ギルドの入口を潜った3人はある意味洗礼を浴びていた。入口を跨いだ瞬間に各方向から視線を向けられた為、少し怖気づいたようだ。


「すぐに興味を無くすから大丈夫だ。ま、どんな奴らなのかっていう興味の視線はあるかもな。」


『女性3人の新人になりますからねー。マスターが居なかった場合は確実に絡まれていましたね。ほら、あそこなんて機会をうかがっていますよ?』


:俺の推しにそんな視線向けるんじゃねぇ!!

:ナギサさんやってしまってください!

:おいおい死んだわあいつ

:こーれ登録後に声かけて来るでしょ!小説で見たもん、悪徳冒険者いたんだもん!


 こちらの様子を窺っている奴は俺の事が目に入っていない様子である。ま、見た目的に3人は目を引くから仕方ないな。

 3人を受付に促し、近くの壁に寄りかかって様子を見る事にした。


 最初のチュートリアルは代り映えしないが、受け答えを重ねることで反応が変わっていくのでコミュニケーション能力が高いとどうなるやら。

 

 3人とも質問が終わったのか身分証を受け取り、受付から離れようとしたのだが案の定、近寄ってくる人影が見受けられる。


「姉ちゃん達、見てたけど新人かい?それなら俺らとパーティーを組まないか?これでも長年冒険者として活躍してるんだぞ。新人教育だって担当したことあるんだ。」


 ニタニタと男の目から見ても気持ち悪く下心がありますよーという顔をした3人組に囲まれてしまったようだ。


「お生憎様、私達にはすでに教えてくれる人がいるのよ!そもそも、あからさまに下心がある男と組むわけないでしょ。」


「周りの様子を見てもまたあいつらかって見られていますよ?何度も同じような事をしてきたのでしょうか?」


「少しは表情を隠したほうが引っかかる人も出るんじゃないかなー?でも私達の前に登録していた人には声かけなかった時点でダメか。」


:3人ともぼろくそに言うなw

:いやぁ見てすぐわかる犯罪者顔ってこういうのなんだな

:周りが止めないのは冒険者は自己責任って事だからか?

:だまされる方が悪いって事なんだろうなー


 もう終わりにする為に俺は集団に近づき演者3人の前に立った。


「はいはい、おっさん達はフラれたんだから潔く離れたほうがいいぞ。流石にここで武器を抜けばどうなるか分かっているだろ?」


 冒険者同士のいざこざにギルドは関与しないが、流石に武器を抜いた場合は武力行使で鎮圧するのだ。


「なんだてめぇ!?ってお前は!!この間うまく領主に取り入ったやつじゃねえか!くそ!お前らいくぞ!!」


:帰れ三下共!

:これが負け犬ってやつですか?

:っぱ権力よな

:まさかプロモーションムービーがここで意味を成すとは…


 すごすごと引き下がっていく3人を見送ると水野ネズが声を掛けてきた。


「まさかあの動画で作った世界だなんて私達も思っていなかったわよ?」


「トラブルがある場合は後ろ盾があったほうが楽だからね。中世ファンタジーだと特に。」


『アドバイザーとして健全な配信にしないといけませんからね!個人配信者はもし付いて行った場合をお楽しみください。』


「あら、配信者への配慮ありがとうございます。とは言いましても同じようなイベントが起こるかは不確定なのですよね?」


「なんだかゲームの世界って感じがしないよねー。やり取りも自然だったし、動きも人と同じだったよ。」


 そこは統括しているセレナが頑張った箇所だからな。人間を観察することでNPCを寄りリアルに近づけるという。ただし、思考は流石にトレースすることが出来ないので漫画やゲームのパターンも使っているそうだ。


:いやぁこれだけでも濃いな!

:自然なやり取りとかコミュ障の解消が出来る!?

:連れていかれた場合…まさか成人向けですか!?

:男だった場合はまた違った反応なんだろうな

:お約束って大事!!



 リスナー達も満足しているようなので次は生産と食べ物に関して説明をしていこうか。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

Vは電脳世界に花開く 相坂ねび @nebi_s

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ