第7話 転生しました

 ・・・


 目が覚めた。

 まだ頭がしっかり回らないながら、周りを見回すと高級なインテリアが置かれた寝室だった。

 辺りは薄暗い。

 窓にはカーテンが引かれているが、差し込む光の感じからして朝早い時間帯だと思われる。

 俺は・・・、

 そこまで考えて、自分が転生した事を思い出した。


 まずは現状確認からと、自分の事を思い出す。

 ラノベで読んだ頭痛や目眩はなく、普通に昨日の夕食のおかずを思い出すように色々な事柄を確認していく。


 名前は、ロラン・ヴァーヴイユ。

 年齢は今日誕生日を迎えた満5歳。

 五体満足、持病なし。

 どうやら貴族らしいが、爵位は不明だ。

 家族は父・母・兄2人・姉2人に俺を含めた7人家族が同居している。

 使用人が結構居て、俺専属で就いてくれている人が一応2人。

 この部屋は俺個人の部屋で、ここ1年程は1人で寝ている。

 幸いなことに、おねしょは卒業しているようだ。

 言葉は、しゃべるのは年齢相応に問題ない。読み書きは簡単な単語を知っている位。

 あとは、一人称は『ボク』、誰かとしゃべるときには気を付けよう。


 そこまで確認して気付いた。

 誰かとしゃべるときには、幼児のふりをしなきゃならないことに。

 マジか!?

 見た目は子供、頭脳は大人って、名探偵か!?

 だとしたら、練習しておいた方が良いか?

 ・・・よしっ!


「あれれ~、おかしいぞぉ。」


 うん、問題ないな。


 いや、ふざけてる場合じゃないな。

 誰かが起しに来る前に確認をしなきゃならないんだから。


 え~と、直近の記憶だと、昨日は4歳最後の日と言うことで、教会?で『天授確認の儀』というのを行った。

 内容は、俺が水晶玉の様なモノに触れて、空中に投影されたメッセージの様なモノを神父?神官?の様な人が記録していた。

 で、夜になったら頭痛と目眩がした。

 医者みたいな人の診断では風邪だろうとのこと。

 うん、多分『記憶の統合』の影響だろうなぁ。


 で、『天授確認の儀』ってステータス確認だろ、あれ。

 生まれつきのスキルは『女神様』が有用そうなものを選んでくれるって事だったけど、何くれたんだろ?

 定番だと、『鑑定』、『無限収納』辺りなんだけど。

 とりあえず、お約束の呪文・・を唱えてみた。


「ステータスオープン!」


 ・・・

 ・・

 ・


 ちょっと待ってみたが何も起こらない。


「ステータス!」

「オープン!」

「メニュー!」

「鑑定!」

「収納!」

「倉庫!」

「設定!」

「マップ!」

 ・・・

 ・・

 ・


 思い付くまま言ってみたが何も起こらない。

 マジか!?


 コンコンコンッ


 ノック?

 騒ぎすぎたか?


「ロラン様、起きてますか?」


 若干舌足らずな声が扉の向こうから聞こえてきた。


「起きてる。入って良いよ。」


 とりあえず、昨日までの記憶をマネして返事をすると、扉が開き予想通り小さな人影が入ってきた。


「おはようございます、ロラン様。」


「おはよう、アリス。」


 扉の前で一礼して挨拶してきた、黒髪黒目の幼女・・メイドに挨拶を返す。

 彼女は、アリス、俺の専属メイドの1人で、ドワーフ族の見た目幼女に見える似非ロリではなく、ヒューマン族の5歳児の正真正銘ロリータだ。

 いや、俺に其の手の嗜好があるわけじゃない!

 彼女は俺の所謂『乳兄弟』、つまり乳母の娘だ。

 この部屋も俺1人で使う前は、彼女アリスと彼女の母と3人で寝ていた。

 ちなみに、彼女アリスの母であるクリステルが俺のもう1人の専属メイドだ。


 そんなことを考えている間に、アリスは窓際まで移動しカーテンを開けている。


「頭痛いのは治った?」


 まだ、敬語は難しいので、普段通りの話し方でアリスが問い掛けてくる。


「うーん、治ったけどまだふらふらするかな。」


 もう頭痛は完全に治っているし、体調も問題無いが今日一日は記憶の確認や今後の方針なんかを考えたいと思ったので、仮病を使うことにした。


「そうなんだ。うーん・・・」


 アリスが母親の真似だろう、俺の額へ手をあてて熱を測ろうとしてくるが、よくわからないようだ。


「ごはんは食べられる?」


 結局諦めたみたいだ。


「あんまり。」


 実際あまり空腹を感じなかったので、そう答える。


「そうなんだ、お母さんに言ってくるね。」


 そう言ってアリスは部屋から出て行った。



 コンコンコンッ

「ロラン様、よろしいでしょうか?」


 しばらく考え事をしていると、ノックの音と確認の声が聞こえた。


「入って良いよ。」


 昨日までの記憶を意識しながら返事をする。


「おはようございます、ロラン様。」


「おはよう、クリステル。」


 扉の前で赤髪黒眼のメイドが綺麗に一礼して入ってきた。

 彼女が俺の『乳母』であり、メイン専属メイドのクリステルだ。

 アリスは無言で一礼してクリステルと一緒に入ってきた。


「お加減はいかがでしょうか。」


「うん、頭痛いのは治ったけど、まだふらふらするかな。」


 クリステルはベッドサイドまで来て質問してくる。

 俺は、仮病の後ろめたさもあって若干緊張しながら、アリスに答えたのと同じ内容を答える。


「そうですか。」


 クリステルが、アリスと同じように俺の額へ手をあてて熱を測っている。


「熱はないようですね。

 後ほど主治医のゲールに診て頂きますが、本日は一日寝ていて下さい。

 ご主人様と奥様には、そのように報告しておきます。

 お食事はどうなさいますか?」


「あんまり、食べたくない。」


「そうですか、全く食べないのは身体に良くないですので、軽めのスープをお持ちしますね。」


「わかった。」


「それでは、失礼します。」


「失礼します。」


 一通りの確認が終わったからかクリステルが退室し、アリスも一言挨拶しただけで着いて行った。

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女神様に責任とってと言われました 夏っ至ー @kawanakaryuhei

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