第6話 転生することになりました
「さて」
『女神樣』が急に真顔になり、呟かれました。
その所作には、あれだけ摂取したアルコールの影響が微塵もありません。
「ああ、わたしはアルコール成分によって酔うことはありませんよ。」
では、なぜあれほど飲んだのか?
チラリと見えた瓶のラベルには、外国語だから確証は無いけど、未成年の俺でも知ってる銘柄が書かれていたんで、どれ位の金額分飲んだのか正直興味がある。
「飲んだ理由は、味が好きというのと、炭酸飲料としての爽快感、酔いはしませんがアルコール成分によるリラックス効果があるからですよ。
金額は、扱ってるお店の立地や業態に寄るんじゃないですか?
所謂一等地で女性が接客するお店の場合だったら、新車と比較されるくらいの金額で提供されているようですし。」
「うへぇ・・・」
「飲まなかったこと、後悔しましたか?」
「いえ、全然。」
「あら、
『女神様』は揶揄する様に笑ってらっしゃる。
「そういえば、最初に断った時も笑われた気がしたのですが。」
「気付きましたか。別に侮蔑した訳ではないですよ。ただ、呆れただけで。」
「『呆れた』ですか?」
「『貴方の前世』も含め何人かお会いした際に、同様に『飲みますか?』と聞いたら、未成年だった場合は皆さん『法律で禁止されているから』とお断りされました。
その割に、異世界転生などしたら、お酒を造って商売をされます。
『成年』の定義も変わる異世界で『未成年者飲酒禁止法』は遵守するのに、同じ日本の法律でより罰則の重い『酒税法』は全く気にせずに破る。
『未成年だから』と断るなら、『法律』ではなく『発育への影響』を理由に断れば良いのにと思いますね。」
何も言い返せねぇ・・・
「それに皆さん10年程経ちお酒の味を理解する様になると、『どんな味だったんだ?あのとき飲んでおけば・・・』と必ず後悔されます。
貴方も必ず同じ事を言い出すと思ったら、フフッ。」
本当にそうか?と思ったが、分が悪いと思い反論はしなかった。
「フフッ、いいかげん今後について真面目にお話ししましょう。」
「今後ですか?」
「ええ、『
「わかりました。」
「まず今回の『
従って復旧作業としては大まかに分けて、①新しい『ハードウェア』を用意し、②『ソフトウェア』をインストール、③『バックアップ』を反映する、の三工程となります。
『初期化』か『あの日からやり直す』かは、③の『バックアップ』の適用項目で変わります。
『初期化』する場合でも、『世界』や『管理神』達に関する設定を『バックアップ』から適用する手順は必要ですので、手順的には大きく変わりません。
ですので、わたしのわだかまりを除けば、『初期化』ではなく『あの日からやり直す』事に支障はありません。」
「だったら」
「ですが、問題が全くないわけではありません。」
「問題ですか?」
「問題というのは、①の新しい『ハードウェア』の用意に関しまして、2点ほどあります。
1点目は経費、2点目は時間です。」
「経費と時間ですか?」
「ええ、
「お金は申し訳ないですが、時間は俺、待てますよ!」
「勘違いしないで下さい。時間の問題は、貴方が待てる待てないではないです。」
「え?と、ならなんで?」
「先ほどまでも何度かお話ししていますが、貴方の『魂』は『神力の生成効率的』にレアなんです。
『
本当は今現在も損失なんですが、説明の為の必要経費として甘受します。
ですので、『
「『ダンジョン』ですか?」
「今の『
『ダンジョン』内は、その他の環境に比べて『魔素量』が平均して10倍程度あります。
そして、『神力生成量』は『魔素量』に比例します。
つまり、『神力の生成効率』の良い貴方が『神力生成量』の多い『ダンジョン』内に長時間滞在して下されば、この説明している時間の損失分どころか、新しい
それを貴方の贖罪としたいと思っています。」
「なるほど。それで具体的にどのくらいの時間『ダンジョン』に入れば良いんだ?」
「一生です。」
「は?」
「一生。」
「いやいや、一生って、あれだろ?人生って意味の一生だろ?『
「もちろん、一生ずっと『ダンジョン』の中で生活して下さいという意味ではありません。
『
また、人生の途中で、『
ですので『
「解りました。それで、転生ってことは、赤ちゃんからってことか?」
「厳密には赤ちゃんでは無く、受精卵に『魂』が宿ってからですよ。
『転移』ですと、生前の貴方の肉体を再生して『
ところで、記憶に関してはどうしますか?」
「どうって?」
「貴方には『ダンジョン』へできるだけ長時間滞在して頂きたいので、先ほど説明した『神力生成量』等に関する話を理解された状態、つまり現在の記憶を持った状態で『
その場合ですと、受精卵に『魂』が宿った状態から自我を持ち、今の記憶を継承していることになります。
子宮の中での数ヶ月、出産時の産道を通るとき、赤ちゃんの時の授乳や排泄、トイレトレーニング等、精神的に耐えられますか?」
授乳っておっぱ・・・飲むとか、ムリ!
それに排泄っておむつにするとか、意識しておねしょするって事だろ?ムリ!
トイレトレーニングって何するの?見られながらトイレ?ムリ!ムリ!ムリ!
「・・・む、むりです・・・」
「では、ある程度成長したら、切りが良いので5歳の誕生日に現在の記憶を統合するようにしておきます。」
「ありがとうございます。」
「あと、『
「記憶を引き継ぐ必要あるのか?」
「さぁ?『
今すぐ決めて頂く必要はないのですから、ゆっくり考えておいて下さい。」
なるほど。
「それでは、早速『
「待って!」
「はい?」
「転生先の環境って指定できるの?あとチート!」
あ、女神様の顔が曇った。
「はぁ・・・前にもお話ししましたが、『チートと呼べる程の能力』の追加は魂の変質が起こってしまいますし、貴方のスペックは適切な努力をすれば余裕で世界最強にだって成れるのですから、却下です!
ただ、現在の『
そのスキルへ貴方の『魂』に影響が無いモノの内から有用そうなモノを、こちらで選んで付与しておきます。」
「選べないの!?」
「はい(にっこり!!!)」
女神様の物理的な圧がある様な笑顔に言葉が出なくなってしまった。
「それに習熟度により後天的にでもスキルは修得できますし、貴方はスペック的に才能に偏りが無いので、必要だと思うスキルは努力して修得して下さい。」
「才能に偏りが無いって?」
「貴方に解りやすく言いますと、つまりはオールマイティーな天才です。」
知らんかった、俺って天才だったんだ・・・
「怠けずに適切に努力すれば、ですが。
転生先の環境ですが、貴方には転生後に『ダンジョン』へ入れる位まで成長する前に死なれても困りますので、上流階級の家庭へ転生するようにしておきます。」
「上流階級って貴族とか?」
「もしくは騎士や富裕な商人、未開の地の族長一族という事もありえます。
その辺りは、ある程度までしか指定できませんので、お祈りでもして下さい。」
「祈るって、神樣に?」
「ええ、
・・・それって意味ないよね?
「それでは改めて、早速『
責任とって、できるだけ長生きして『ダンジョン』へ入って下さいね。」
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2023/10/15 『魔素』、『魔法』、『魔術』に関する記述を修正
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