第5話 『女神様』の愚痴に付き合います
「『あの日からやり直す』って、ほのかや親父達が生き返るのか!?」
「生き返るのとは違います。『世界崩壊前』の、『あの日の午前0時』からやり直すんです。」
「どういうことだ?」
「要は、毎日『午前0時の世界の状態』をバックアップとして保存しておいたので、復旧した世界へそのバックアップを反映させれば、『世界崩壊前のあの日の午前0時の状態』の世界になるということです。」
つまり皆生きてる状態に戻るってことか。
・・・もっと早く言ってくれよ・・・
「早く教えたら罰にならないじゃないですか。」
罰?
『女神様』の顔を見るととてもイイ顔で微笑んでらっしゃいます。
なんか寒いな・・・
身体無いはずなんだけど。
「ええ。罰ですよ。」
笑顔が深まった気がするが、寒気は増してる。
「罰って?」
「罰とは、『罪や過ちなどの悪い行いに対する懲らしめ』のことです。」
いや、言葉の意味を聞いてるんじゃ無くて。
「『罪や過ち』って?」
「わたし言いましたよね。『貴方の所為で世界が崩壊した』と。」
「いやいやいや、待って。世界が崩壊したのは『俺』と『特殊個体の小鬼に影響を受けた魔素』、両方の所為ってことだっただろ!?」
「そうですね。」
「だったら「でも、『特殊個体の小鬼に影響を受けた魔素』という人格のないモノに対して、どの様にして罰を与えるのですか?」・・・」
「それに先ほど言いましたよね、罰とは『悪い
貴方はずっと被害者面して惚けてらっしゃいますが、前日『ほのか嬢が特殊個体の小鬼を封印した時』から、異常事態を予見した『管理神』は貴方へ再三、回数にしたら100回以上、『神託』として警告メッセージを送っておりましたが、それらを貴方が悉く無視された結果が現状であると。
それでも、罰を受ける謂れは無いと仰いますか?」
「申し訳ございませんでした。」
「それでは具体的な罰の話をしましょう。」
は?
「いやいやいや、さっき「『世界を崩壊させるに至った』罪が、『情報の伝達を遅らせる程度』の罰で贖えると思いますか?」・・・」
「思いません。」
「まったく・・・」
顔を上げる事も出来ない。
言葉もない。沈黙がしばらく続いた。
ッポン!
トットットクッ!
いつの間にやら、淡いピンク色の液体が注がれたシャンパングラスと、薄く切った生ハムとチーズが盛られた皿とフォークがローテーブル上にあり、グラスに注がれた液体が入っていたと思われる瓶を『女神様』がお手にされていた。
「貴方も飲みますか?」
いつの間にか俺の手にも、(今の俺のサイズに合った)シャンパングラスが握られていた。
「いえ、未成年の飲酒は法律で禁止されていますので。」
未成年だからと断ってしまったが、そもそも
「フッ。可能ですよ、厳密には擬似的なものですが。」
鼻で笑われた?
またもいつの間にか、俺の手の中にあったシャンパングラスが、水の入った紙コップに変わっていた。
「これは本来、今の貴方に言うようなことではないのですが、少々わたしの愚痴に付き合って下さい。」
・・・
・・
・
どれぐらい経っただろう?
少々どころではないだろうと思う。
俺の視界の外になるローテーブルの下には、何本もの空き瓶が転がっていることだろう。
俺は手持ち無沙汰で、水をちょびちょび飲みながら適当な相づちを返している。
相変わらず、寝ず飲まず食わずで平気な状態の為、話を遮る機会を見つけられていない。
俺の持つ紙コップの水は飲んでも減らなかったし、いくら飲んでもトイレに行きたくもならなかった。
同じ内容が何回かループしているが、話の内容は以下の様な感じだった。
・俺の『神託』無視の根本原因は『前世の俺』にあったらしい。
・『前世の俺』は、『邪神(ウイルス)』の討伐を『神託』で依頼された際に『追加のチート』を要求したが、『チートと呼べる程の能力』の追加は魂の変質が起こってしまう為に『女神様』に却下された。
・結局、『邪神(ウイルス)』の討伐報酬を、『来世(今の俺)の周辺状況を希望通り調える』ことで承諾し契約した。
・俺の『魂』は『神力の生成効率的』にレアなので、長生きしてより多く『神力』を生成して貰う為、生まれつき高スペックな肉体になるよう『世界システム的』に設定されている。
・そのスペックは、適切な努力をすれば、プロスポーツなり学者なりそれぞれのジャンルで、『老年になるまでぶっちぎりの世界一位を維持し続けられる』位らしい。
・『前世の俺』は、『追加のチート』が無くても『邪神(ウイルス)』の討伐を完遂したが、『追加のチート』を貰えなかった事が不服だった様だ。
・『世界を管理していた神』からの警告メッセージである『神託』を受けるには、受ける側にも『才能』が必要である。
・『女神様』も『世界を管理していた神』達も、俺を『特殊個体の小鬼』に関わらせたくなかった。
・ほのかや『ほのかの許嫁候補』など、『特殊個体の小鬼』周辺に居た人間で『神託を受ける才能』を持つモノが俺以外に居なかった。
・俺の身体の『神託を受信する才能』は、本来『無制限で受信』できるはずだった。
・しかし、『邪神(ウイルス)』の討伐時に不服だった『前世の俺』は、また何かあった場合に『神託』で依頼されると思い、『女神様』に内緒で『神託を受信する才能』に『制限』を掛けた。
・結果、俺の『神託を受信する才能』は『10文字以下のメッセージを5分に1回まで受信可能』、『音量』自体も『日常生活であまり気にならない』程度に抑えられると言うスペックになった。
・俺の身体への急な干渉は、『魂』への影響が懸念される為、行えなかった。
・東ユーラシア大陸方面を担当だった『管理神』(『カノン』樣と言うらしい)は、今回の異常事態回避の為、俺へ何度も呼びかけながら、他の方法も模索されていた。
・結局、『カノン』樣の奮闘もむなしく『
・『カノン』樣はとても可愛らしくて『女神様』のお気に入りだった。(俺のことはレアキャラだから優遇はしているが、全然お気に入りではないとのこと。)
・幸いなのは、『カノン』樣を含めた『世界を管理していた神』々も、『
・『女神様』としては、『今の俺』に『前世の俺』の記憶が無いことも、別人格であることも理解しているが、『前世の俺の望み』の結果を『魂』が同じ『今の俺』が享受する事に釈然としない思いがある。
・結果『今の俺』が、同じ『魂』である『前世の俺』の罪も併せて購うことになるそうだ。
・・・『前世の俺』ぇ、何してくれてんの・・・
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2023/10/15 『魔素』、『魔法』、『魔術』に関する記述を修正
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