神絵師になってやりたい100の事!!

クローバー

第1話

──“もし、人生がやり直せて、それが神絵師としてなら?”


 俺は目の前の超常的存在にそう言われた。


 ソレは、俺を見下すようにも、慈しむようにも貶すようにも、同情するようにも聞こえるコエで続けて言う。


──“キミはどう生きるのかな?”


 俺は問うた。なぜ俺を選んだのかと、なぜ俺にそんな機会を与えるのかと。


 早い話、俺は恐怖していた。答えを聞いたところで俺に決定権はないと言うのに。だが、自身の中に渦巻く感情と向き合うためにはソレから有耶無耶でもいい答えが欲しかった。


──“暇潰しだよ。ただただ退屈なんだよ。”

──“君を選んだ理由は一番つまんなそうに生きてたから。”


 俺はドキリとした。

『つまんなそうに生きていたから』その答えは俺の心に深く突き刺さる。

 学生時代は嫌なことはできるだけ避けて過ごし、社会に出たら上司におべっかして無難にやり過ごし、期待などには愛想笑いを返す。


 楽を好み苦を嫌う。そんなのらりくらりの無難な人生。

 

──“ボクの世界でそんな風に生きられたら何かイヤじゃない?”

──“だからキミにも一度『楽しむ』機会をあげるよ。”


 楽しむ…機会?


──“そうだよ。何にもないキミに。楽しむためのキッカケをあげる。”


 それが神絵師…?


──“ボクが選んだんだから間違いないよ。”


 ……ま、どうせこのままでもつまんないんだろ?じゃあ、やってくれよ。拒否権もないだろうしな。


──“ハハハ。それじゃあ。キミの旅路に幸多からん事を。”



………。

……。

…。




「………で、俺が生まれたってわけ。どう?わかりやすいでしょ?」


コメント

・何言ってんだお前

・流石に嘘すぎて笑う

・草

・※この人は今銃を向けられています。


 俺はどんどん更新されていくコメントを眺めながらツッコミを入れる。


「おい待てお前ら。お前らが『なんで絵師になったか』を聞いてきたんだろうが」


コメント

・だって、ねえ?

・最近転生もの増えてきたから流行りに乗りたいんだろ

・こいつズレてるからなあ…


「は?ズレてんのお前らだから。俺が最先端行き過ぎてんだよ。」


俺がコメントとプロレスを広げつつも時計を確認する。時刻は8:00ジャスト。そろそろお知らせの時間だ。


「お、もう8:00じゃん。じゃあ、そろそろアレ、行っちゃいますか?」


コメント

・ざわざわ…ざわざわ…

・これを待ってた

・コレでしか摂取できない栄養素がある


「あーあ、お前ら俺のこと好きすぎだろ?そんなガッつくなよ照れるだろ?」


コメント

・お前じゃねえよ

・そこを退け

・チャンネル登録解除しました。


 画面の中心で揺れ動く1人の少年の“絵”。それが大小を繰り返しておりコメント欄がどんどん荒れていく。


「はー!お前らわかってねえな!まっちゃんは俺が生み出したんだぞ?俺がママなんだぞ?つまりはまっちゃんは俺とニアリイコールな存在というわけ。じゃあまっちゃんが好きって言うことは俺が好きって言うことだろ!」


コメント

・そう…なのか?

・そう…なのか?

・そう…なのか?


突然統率が取られるコメント欄。それを見た彼は鼻で笑いながら口を開く。


「そんなわけないだろ?お前ら馬鹿なのか?」


コメント

・ふざけんな

・こっちがせっかく乗ってやったのに…


「ハイハイツンデレ乙。……じゃ、例のやつ行くぞ。“神絵師が逝く!全力5分間イラストメイキング!!!”」


コメント

・期待

・毎日コレやってくれんの神すぎ

・5分のクオリティじゃないんだよな…

・コレ見ると毎回コイツが神絵師だと理解させられる。いつもはあんなんなのに…




──コレは俺の物語。


 俺が神絵師として全力で生きる。それだけの物語だ。


 



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神絵師になってやりたい100の事!! クローバー @takatoshimada

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