アメリカ人と社畜

@dada02121610

第1話 出会いそして別れ

 いきなりだが俺は今よくわからない地にいる。

 周りを見渡す限り草原が続いており足元に視線を落とすとそこには地球上に存在しないような気持ち悪い虫がいる。

 殺虫剤を撒きたいぐらいだが手持ちにあるのは圏外になっており全く使えないものに成り下がっているスマホのみ。

 無理だろ。終わりだろ。死ぬだろ。

 こんなわけのわからない土地に来て、今までずっとアメリカという地でずっと家に籠りネットしていた僕からするとネットがない時点でもう死刑を受けたような物だ。

 俺は絶望していると横から声がかかった。


「あ、あのぉ・・・。大丈夫ですか?」


 ああ、そうだ思い出したぞ。

 このメガネをかけた冴えない人と一緒にいるんだっけか。

 見た目は今にも倒れそうなぐらいにヒョロヒョロで日本でよく見るあの、・・・なんだったっけ・・・サラ・・・サラ・・・ああ、社畜って言ったっけ。5chのスレで見たことあるわ。

 たしか・・・社畜の特徴としては、長時間労働をしても折れることがない強い精神と頼まれたことはなんでもやり遂げるスーパーマンみたいな存在だったっけか。


 じゃあ、「この国の海外sim持ってる?」僕はウキウキで聞いてみた。


 すると社畜は初めての言葉がsimのことで驚いているのだろうが口角が少し上がるだけで全く表情筋を使えていない微妙な表情をしていた。


「いや、海外simなんて持っていませんよ」

「えーなんでー、社畜はなんでも言うことを聞いてくれる人じゃあないのー」


 そう言うと社畜の口角がピクピク動くのが見えた。少し怒っているのだろうか?しかし、全く表に出さないので判断がつきにくい。これが日本の社畜か。

 僕が自己完結をしていると社畜が話しかけてきた。


「そもそも、ここに来た過程を忘れてるんですか?」

「ん?過程?知らないけど」


 そう俺が言うと社畜が大きくため息をついて僕に向き直った。


「わかった。じゃあ説明してあげる。まず、ここは異世界で、あなたと私は現実世界では死んでる。」

「・・・は?ここが異世界?俺が死んでる?お前何を言ってるんだよ。仕事のしすぎでおかしくなったんじゃあないか」


 俺は現実が飲み込めずにいた。


「ああ、信じられないかもしれないが本当だ。そして、本当に私は働きすぎで死んだ。」


 全く笑えない真実が出てきた。


「じ、じゃあ僕はどうなったんだよ」

「貴方のことなどはあまり知らないが、女神様が言うには酒に溺れたんじゃあなかったっけな」

「酒に溺れたってどっちだよ、酒に酔って何かをやらかしたのか、ただ酒に溺れて溺死したのか」

「だから詳しくは知らないって言っただろう。本当に知らないんだって、もう、めんどくさいから溺死でよくない?」

「全然よくないが・・・。まあ、死んだことには変わりは無いんだな。」

「急に飲み込みがよくなったじゃあないか、お酒でも飲んだか?」

「酒で死んだんだから飲むわけないだろ。あと、全然上手くないからな」

「ん?酒が不味かったのか?」

「しつけぇよ!!」


 俺と社畜は少し仲が良くなった気がした。



「ところで、俺たちはなんでこんなところにいるんだ」


 僕は周りを見渡しながらそう言った。


「ああ、そうか。女神様にあったことも忘れてるのか」

「女神様?ああ、なんか今さっき言ってたなぁ。」

「そうそう。現実世界から異世界に連れてきた張本人だ。」

「女神様はどんなことを言ってたんだ?綺麗だったか?」

「女神様は不細工だったなあ。」

「おいおいおい不細工なんで言うなよ。そんなこと言ったら確実に炎上するぞ。」

「そして、なにを言ってたかだが、「「間違えて現実世界で殺してしまったのでお詫びとして異世界に送らせていただきます。」」とかだったっけな〜。」

「クソアマめ・・・。絶対に殺す。」

「おいおいおい。そんなこと言ったら消されるぞ。もっと、オブラートに包まないと。」

「じゃあ、性格の悪さが表面に出ていますねぇ。とかか?」

「もっと、嫌味ったらしくなってしまったが最初よりはましだから良いだろう」


 そのあと物凄い雨が降ってきた。

 どうやら天使様は地獄耳を持っているようだ。


□□□


「とりあえずこの後どうすれば良いかとか言ってたか?」

「近くに大きな街があるみたいだからそこに行けって言ってた」

「そうか、ならとりあえず向かおうか。」


「「・・・・」」

「「どっちに行けば良いんだ・・・」」


 結局草原を抜けるのに5時間ほどかかった。


□□□


 とうとう街の関所に着いたわけだが・・・


「めっちゃ並んでないか!?」

「100人ぐらい並んでますね。」

「なんで、こんな社畜と一緒に並ばないと行けないんだよ!!」

「しばくぞ」

 社畜は笑顔でそう言った。


 5時間ほどたちやっと俺たちの番になった。


「おい!!お前たちは2人組か?」


 厳ついオッサンが出てきた。


「はいそうです。」


 俺の代わりに社畜が出てきた。

 俺は怖くて動けなかったが社畜はどんな訓練をしたらこんなにすぐ返事ができるのだろう。


「そうか。じゃあ二人とも着いてこい。」


 そう言われオッサンの後ろについていくと石でできた取り調べ室の前まで連れて行かれた。


「では、これから取り調べを行う。そのヒョロヒョロのやつから来い」


 そう言い社畜とオッサンは俺を残して入って行った。

 俺は何を話しているか気になり盗み聞きをすることにした。


「おい、名前はなんだ。」

「社畜です。」

「では、お前はどこからきた。」

「日本という海に囲まれた東にある小さな国から来ました。」

「日本?知らないなぁ?まさか、嘘を着いているわけではあるまいなぁ?」

「いえいえ嘘ではありません。小さな国なので知名度が無いんですよ・・・」

「そうか、俺が知らないだけか・・・。まあ、いいだろう。では最後の質問だ。何の目的でこの街に来た。」

「それはですねぇ・・・。観光です」

「そうか。楽しんでこいよ。」

「はい」

「では、取り調べは終わりだ。俺の後ろのドアから出ろ。」

「・・・失礼しました。」


 取り調べが終わったようだ。

 次は俺の番か・・・緊張する。

 そう思っていると取り調べ室の扉が開きオッサンがこちらを向いて俺を手招きしている。

 俺はそれに従い取り調べ室に入った。

 入ってみるとそこには簡素な椅子と机があり。部屋の中にはオッサンと甲冑を着た兵士が二人俺の後ろに立っている。

 物凄い圧迫感を感じる。

 俺は圧迫感を感じながら席につきオッサンと向かい合った。


「まあまあ、そんなに緊張しなくていい。お前さんの相方はもう街に出たぜ。」


 オッサンは緊張している俺に見かねたのか言葉をかけてきた。


「は、はい」


 俺は急に話しかけられて逆にパニックになりかけた。


「まあ、簡単な取り調べをするから落ち着いて答えてくれ。では、はじめにお前の名前はなんだ。」

「えっと、HDです。」

「ほお、聞かない名前だなあ。まあ、いいわ。では次にお前はどこから来た。」

「アメリカという巨大な大陸から来ました。」

「・・・は?アメリカ?巨大な大陸お前は何を言ってるんだ。そんな大きな大陸は無いぞ。」


 今までの空気とは一変し険悪な空気が流れた。


「あ、あのぉ・・・」

「お前まさか俺に嘘をついているんではあるまいな・・・。そもそもださっきのヒョロヒョロなやろうと二人で来ているはずなのになんで来たところが違うんだ。」

「いや、それはですねぇ・・・」

「いい、お前の言い訳は聞きたく無い。お前さては間者だろ。おい!お前らこいつとあのヒョロヒョロ野郎を捕まえてこい!!」

「・・・へ?」


 俺は捕まった。




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