第2話 華やかな夫婦
「白鳥くん、いつも、メディアで活躍見てるよぉ!」
「今度芸能人とコラボの企画するんでしょ?本当にすごいよね?」
「ハッハー!それ程でもないよ。ただ、今の妻の繋がりで、たまたまそういうお仕事が来てね?子育てで今は大変な時期なのに、色々関係者に連絡取ってもらって、助けられてるよ。」
白鳥は、多くの女達に囲まれて、チヤホヤされていた。
特にまだ独身の女達の目はギラついており、一夫多妻制が許された社会で、既に3人の妻を得ている白鳥だったが、ワンチャン4人目いけるんじゃないかという欲望が見え隠れしていた。
白鳥も女達も醜悪なものに思えて目を背けた俺は、その妻、白鳥香織の方に目を向けると、高級そうなドレスやアクセサリーを身に着けた彼女は、白鳥から少し離れたところで女友達に囲まれて、その境遇を羨ましがられていた。
成功者の妻として完璧に綺麗な笑顔を友達に向けている姿に、高校時代俺と付き合っていた頃の彼女の面影はなかった。
『もう、もっと胸はんなよ!私は特にイケメンでも運動部エースでもなくても、優しい石藤良二が、大好きなんだからね?』
少し照れたような笑顔を見せて、ハッキリそう言い切ってくれた少女はもういない。
いるのは、イケメンリア充の白鳥の妻として如才ない対応をする完璧な大人の女だった。
皆正しく変わっていく。
ずっと過去に囚われてあの時の心のままでいるのは俺だけだ。
虚しさを感じて、彼らに背を向けると、和哉が心配そうに声をかけて来た。
「りょ、良二。大丈夫か?幹事に言って、途中で抜けさせてもらうか?俺も一緒に出るよ。」
「来たばっかりだろ?和哉まで抜けさせるのは悪いよ。奴らは不快だけど、隅っこの方で飲んでれば問題な…。」
「おっ!誰かと思えば、森崎と石藤じゃん〜!!ヒック!」
ガシッ!!
「「うげ。猿田…!」」
と言いかけたところで、お調子者の
「なけなしの金はたいて、ワンチャン出会いあるかと同窓会来てみたらよぉ!ヒック!ちっとも相手にされず、女子達は白鳥ばっかりもてはやしやがって、面白くねーったら、ヒック!ありゃしねー!ヒック!
あんなの金に物言わせて三股してるだけのクソ野郎じゃねーか!ヒックヒック!
俺にハーレムの女一人ぐらい寄越せっていうんだ!!」
「やべー。こいつ、もう既に出来上がってやがる…!」
「さ、猿田!気持ちは分かるが、落ち着け!声抑えろって!」
面倒臭い奴に絡まれ、和哉と俺が困っていると、猿田は、突然白鳥香織の方を向いて、声を張り上げた。
「瀬川香織ーーっっ!!お前の元カレ石藤良二がここに来てんぞーっっ!!」
!??
「猿田っ?」
「お、お前何を言っ…?うわっ!」
猿田の口を押さえようとして、すごい力で振り払われ、調子に乗った猿田は白鳥香織の方にツカツカと歩み寄った。
「猿田くん、りょ…、石藤くん?」
白鳥香織は猿田と俺の姿を見て、目を見張っている。
うう…。もう死にたいぜ…!
「さ、猿田、このバカ野郎…。||||」
あまりの事に和哉も固まっている。
「お前、瀬川香織!!誠実な陰キャの石藤裏切って、リア充イケメンの白鳥の妻になって、いい気になってるかもしんねーけどな!
三股されて、他の二人の妻と一緒に住むって、実際のところどうなんだ?
暮らしぶりは豪華かもしれねーけど、他の女とイチャイチャする旦那を見せられるって虚しくねーのかよっ?
本当のところは、石藤と結婚してたら、一途に愛してもらえたんじゃないかって、後悔してんじゃねーのかぁっ?
どうなんだぁっ??」
「…!! |||||||||||」
大声で猿田に侮辱的に絡まれ、白鳥香織は、口に両手を当て、蒼白になった。
「何言ってんの?コイツ!」
「頭おかしいんじゃないの?」
「やめろ!!猿田!」
「お前飲み過ぎだぞ。」
「うわっ。何だよ!」
周りの女達から猿田に対する非難が相次ぐ中、俺と和哉は、二人がかりで猿田を捕まえた。
「離せ〜!俺は、女の幸せについて、もう一度考え直すように諭してやってるだけだ〜!!」
俺は和哉と共になおも叫ぶ猿田を引きずりながら、白鳥香織に顔を背けたまま自分にも言い聞かせるように言った。
「彼女は、白鳥と一緒になって、子供も生まれて充分幸せそうじゃねーか。今更昔の事を持ち出すなよっ。」
「っ…!!!||||||||||| 石藤くん…!!」
「?!!」
突然、白鳥香織が怒りにブルブル震えながら、こちらを睨んでいるのに気付いた。
「確かに昔、あなたに不義理な事をしたかもしれないけど、こんな場所で、子供がいない事を当てこすらなくても、いいじゃない!
もしかして、猿田くんとグルになって、私に復讐しに来たんじゃないの?本当にひどい人ね!!」
「へっ?」
子供がいない…?だって、白鳥は、三人子供がいる筈じゃ…?
猿田とグルになって復讐?俺は被害者だっつーの!
突然身に覚えのない事を白鳥香織に責められ、俺が目をパチクリしていると、彼女は、涙目になり、更に続けた。
「あなたと添い遂げなくて本当によかったわ!!」
「石藤最低!」
「本当に無神経ね!」
「っ…!!! |||||||||||」
「りょ、良二…。」
「ううっ…。畜生!女なんか…。」
俺は白鳥香織の残酷な言葉を投げ付けられ、女子から白い目で見られ、最低の気分になりながら、
和哉と共に、酔っ払って泣き上戸になっている猿田を会場の外へと連れ出したのだった。
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