第3話 元カノ友達の告白
あの後、空気を凍らせてしまった俺達は、これ以上あの場に居られるワケもなく、早々に抜ける事になった。
そして、和哉から、白鳥の子供は有名コスプレイヤーとの間に生まれた子が二人、元アイドルとの間に生まれた子供が一人いるが、白鳥香織との間にはまだ子供が出来ていない事を聞かされた。
以前、テレビをつけた時に、たまたま白鳥がインタビューされている番組が目に入ってしまい、三児の父と紹介されていたので、
てっきり香織との間にも子供がいるものと思い込んでいた。
彼女がもしその事を気にしていたとしたら、「白鳥と一緒になって、子供も生まれて充分幸せそうじゃねーか」なんて俺の発言は、どれだけ痛烈な皮肉になっただろうか。
「うわ、マジか…やっちまった…。」
俺が会場外の地面に、座り込んで頭を抱えていると、和哉は苦笑いをして、俺の肩をポンと叩いた。
「はは…。まぁ、知らなかったんだし、しょうがねーよ。あとで、俺もできる限りフォローしておくよ。
あと、その酔っ払いなんとかしねーとな。よっと。」
「おでも幸せな結婚してーよぉ…。ヒック!」
「ああ。俺も手伝うよ。」
足下に座り込んでいる猿田を担ぐ和哉に、俺も申し出たが、和哉は首を横に振った。
「いや。俺だけで充分だ。強引に誘っちまって、嫌な思いまでさせちまったんだ。良二にこれ以上迷惑かけらんねーよ。」
「いやいや、和哉のせいじゃねーだろ。あれは猿田が…。」
「いいんだ。それにさっきの猿田の発言、最悪だったけど、正直少しスッキリしちゃったんだ。
高校時代、良二の事で、瀬川と、白鳥に思うところがあったのに、今まで何も言えなかったからさ。
ま、猿田は、自分がモテないのを良二に重ねて文句言ってただけだと思うけど、送り届けるぐらいはしてやろうかと思ってよ。」
「和哉…。」
「じゃ、今日はホントごめんな、良二。今度奢るから!」
和哉は俺に目配せをすると、すぐにタクシーを捕まえ、猿田と共に去って行った。
俺はそれを見送りながら和哉の奴、本当に気遣いのできるいい奴なんだよなとしみじみ思っていた。
また、そういう奴だからこそ、お相手の女性も和哉を選んだのだろう。
恋愛や結婚はもう諦めているが、俺も人としてもうちょっとしっかりしないとな…と、いつの間にか丸まっていた背中をしゃんと伸ばして歩き出そうとした時…。
「あっ。いた!おーい、石藤くん、ちょっとまって!!」
深緑のカクテルドレスを来た背の高い女性が、こちらに手を振って、慌てたようにこちらに近寄って来た。
彼女は、高校時代、白鳥香織の友達で、幹事の一人でもあった
「須藤さん?」
「残念〜。今は結婚して、佐倉だよ。」
白鳥香織のような華のある美人ではないが、
落ち着いた可愛らしい雰囲気の佐倉穂乃花がいたずらっぽい笑顔を浮かべた。
「そ、そうか。佐倉さん、ごめん。なんか、雰囲気ぶち壊しちまって…。」
幹事の佐倉さんに大分迷惑をかけてしまっただろうと思い、謝ると、彼女は手をブンブン振ってすまなそうな顔をしていた。
「ううん。森崎くんから聞いたよ。
白鳥くんの子供の事、知らなかったんだよね。ちゃんと、香織にも、女子達にもフォローしといたから!
場を収めようとしてくれてたのに、居づらくさせちゃって、本当にごめんね?」
「いや、そんな…。」
「猿田くんと森崎くんもいるかな?これ、同窓会の最後に全員に渡す予定だったお土産!持って行って?」
「いや、二人は先に帰っちゃって…。」
3人分のお土産の手提げを渡されそうになり、俺が戸惑っていると、佐倉さんはしまったという顔になった。
「あ〜そっかぁ…。じゃあ、日持ちしないものだし、よかったら石藤くん持って行って?」
「え、あ、ああ…。」
佐倉さんにグイグイ手提げを押し付けられ、つい受け取ってしまうと、彼女は、俺に哀しい表情で言った。
「香織の事…恨んでるよね?私も、高校時代は、石藤くんと付き合ってるのに白鳥くんに靡いた香織の事、ひどいし許せないと思った。一時期疎遠になっていたぐらいだもの。
」
「そうだったのか?」
「うん。文化祭の後、すぐぐらいからほとんど話さなくなった。石藤くん、しばらく盲腸で入院しちゃって、学校に来ない時期があって、3年生でクラス別々だったから気付かなかったかもしれないけど。」
ああ、そう言えば、盲腸になった時、須藤(佐倉)さん、2回ぐらいお見舞い来てくれて、学校のプリントを届けて来てくれた事あったな…。
そんな恩がありながら、ちゃんと、お礼も言えてなかったな。
あの時は、香織に裏切られたショックで、入院している間、始終ボーッとしていたような気がする。
「佐倉さん。色々気付かなくてごめん。あの時は、お見舞いとか色々お世話になったよ。ありがとう。どうして、そんなによくしてくれたんだ?」
須藤(佐倉)さんは、彼女の友達というだけで、すごく親しかったわけでもないのにどうしてだろうと不思議に思って尋ねると、佐倉さんは困ったような笑顔を浮かべた。
「それも全く気付いてないんだね。ふふっ。石藤くんらしいよね。実は私、あの時石藤くんの事結構好きだったんだよ?」
「えっ…!」
俺がフリーズしていると、佐倉さんは、明るい調子で続けた。
「でも、石藤くんの頭の中は、別れてからも香織でいっぱいで、私の入る余地なんてないみたいだから、諦めた。」
「ええ。なんていうか…ご、ごめん!」
「ううん?私が勝手に想って、勝手に諦めただけだから、悪くないよ?
でも、香織とうまくいかなかったからって、石藤くんが自分の事、男性として魅力がない人とは思わないでね?石藤くんが初恋だった私の立場がないよ?」
「お、お、おう…。」
「大人になってから、久々に香織に会って以前よりはあの子の気持ちもわかるようになってね…。華やかな生活を送っていても、あの子は、あの子で、悩みがあるみたい。
許してあげてとは言わないけど、険のある言い方になるのには理由があるって事だけは理解してやって?
それから、石藤くんはちゃんと自分の幸せを見つけてね?私、応援してるからね?」
「佐倉さん…。」
思わぬ人からそんな言葉をかけられ、俺は目を瞬かせたのだった…。
*あとがき*
現代ドラマ 99位になりました!
読んで頂きまして、フォローや、応援、評価下さって本当にありがとうございます
✨😭✨
よければ、今後ともどうかよろしくお願いします。
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