第3話 今城さんの誕生

「ん、ここは…?」


真っ暗だ。何も見えない。どうやら先ほどとは違う場所にいるようだ。何やら手に

柔らかい感触がする。俺は取り敢えず無作為に掴んでみた。


「キャーッ!!何やってるんですか!?」


「え?」


するとドタバタ音を立てて、何やら修道服を着た女性がドアを蹴破って入ってきた。


「どうしたの!!」


「え?」


ああ駄目だ。状況が理解できない。目が覚めたら金髪の女の子の上に乗ってて俺は今

何かを掴んでいる所までは理解できた。......ああ、理解した。


「シスター!!この人が私の胸を!!」


「いや!!違います!!これは!!」


「リアの少ないお胸に欲情する異常性癖の変態め!!

この私が成敗してくれる!!」


「違います!!俺はあの変なコスプレおじさんに勧誘されて気づいたらここに

いた訳でして!!」


「何を言ってるか全然分からない!!」


シスターと呼ばれていた人物は手のひらを広げて俺に掲げて何か呪文を唱えている。


「俺は危害を加える気なんてさらさらありません!!」


「じゃあ手に掴んでいるそれは何だ!!!」


「え?」


俺は手元を見た。そこには鬼のような形相の女の子の胸があった。


「早く離してください!!!」


「ああすいません」


「よし!!呪文詠唱終わり!!取り敢えずお前を吹き飛ばす!!」


再びシスターさんの方を見ると手に何やら炎のような何かを纏っているじゃ

ありませんか。


「待って待って待って!!話せば!!話せば!!」


「分かりません!!!」


そしてシスターさんから放たれた炎は俺に直撃し、その衝撃で俺は吹き飛ばされたのだった。



~十数分後~



「ミカエル様の推薦者なら早く言ってくださいよ。吹き飛ばしちゃった

じゃないですか」


「聞かずに吹き飛ばしたのはそっちじゃないすか」


「そりゃあ見ず知らずの男に妹が襲われてちゃ吹き飛ばすしかないでしょう」


「それはすみませんでした」


「全く、ミカエル様もちゃんとした所に飛ばしてほしいですよ」


「本当っすよ」


「まあいいわ、私の名前はミア・フリマ、部屋で寝てる私の妹はリア・フリマ。

よろしくね」


「あっ私は今城 明と言います。よろしくお願いします。」


「コンジョ?変わった名前ね。前の世界の?」


「え?まあはい」


「貴方がこれから暮らす世界はそういう名前は少ないから変えたほうがいいかもね」


「そうなんすか」


「そうだ。私がつけようか」


「いいんすか?」


「いいよこんくらい。ちょっと待ってね今思いつくから」


そう言うと彼女は黙り込みそれから5分経過した。


「思いついた!!『ロリノ・ムネモミー』なんてどう!?」


「今城 明で行きます」


その後話し合って俺の名前は『今城・リノム』になった。


「今城はいいんすか?」


「いいのよ、大体片方しか使わなくていいから、じゃあよろしくね、リノム」


「はい!!」


「じゃあ一週間こっちの常識を身に付けてもらう為にここで生活してもらうわ」


「俺なんか一週間体験って言われたんですけど」


「ええそうね、一週間ね」


「一週間経ったらどうなるんですか?」


「一度ミカエル様のもとに行って貴方がこの世界でしたいことを言えば、この世界に残ることができるよ」


「したい事?」


「ええ、過激なことじゃなければ下らない願いでも残ることが出来ると思うわよ」


「そうなんすか、ちなみに残らないとしたらどうなるんですか?」


「さあ、この世界の肥料として粉々にされて森にばら撒かれるんじゃない?」


「マジすか!?」


「うそうそ、私もあんまり知らないけど記憶を消されてこの世界の新たな命として

生まれるとか聞いたことあるわよ」


「なるほど、そういえばミカエルさんとの連絡ってどうやってるんですか?

やっぱり魔法とか?」


「まあ連絡って言ってもあっちから一方的にしか送れないけどね。

これはスキルって言って魔法とはちょっと違って呪文詠唱を必要とせず、

とある条件を達成することで発動する一人一人が持っている能力のことよ」


「じゃあ俺にも」


「職業無い人は手に入れられないの」


「え」


「大丈夫よ、ミカエル様の推薦さえあれば何なら今すぐにでも騎士なれるわ」


「え!!そうなんすか!?」


「でも騎士ってのは本当に大変な仕事でお昼ご飯と晩御飯の休憩と週二日の休みで

城に住み込みで働かないといけなくて、休みの日でも何かあったらすぐに向かわな

いといけない大変な仕事なの。出来る?」


「え?ええまあ行けるんじゃないすか?」


「何でそう楽観視出来るかなぁ、もうちょっと真面目に考えた方がいいわよ」


「大丈夫ですよ。前の職場よりは」


「ん?」


「前の職場なんか住み込みなんか普通で、食事の時間もろくに取れずに飲み物で

腹を膨らましていたぐらいですから」


「へ、へえ~、どんなお仕事なの?」


「至って普通の会社員ですよ」


「そちらの世界ではそれが普通なのね」


「はい!!睡眠は4日に一回くらいのペースで長いときは1週間なんて時もありました。」


「......」


「会社には布団なんてありませんので、寝る時は床に布団敷いて寝てました。

冬の会社は暖房もつけれないので何度か凍死するかと思いました。」


「ちなみに最後に風呂に入ったのは?」


「風呂?えぇーと」


「ゴクリ…」


「風呂ってなんでしたっけ?」


「今すぐ風呂に入って寝なさい」

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今城騎士のド根性 @20132007

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