815「999」
恋戦富
第一話「櫟(いちい)」
8月6日午前8時15分
日本のどこかで僕はこういった。
【あぁ。人類なんて滅亡すればいいのに。】と。
ブー、ブー。僕の電話が鳴った。
【もしもし、はい。すみません。至急向かいます。】
上司からの電話だ。今日は、早めの昼休み。と言っても昼食が食べれるような時間はない。僕が勤めている会社はIT系の会社で色々やっている。僕はまだ入社2年目だ。だが、親ガチャでいう上司ガチャに外れたらしく毎日叱られ、パワハラを受ける毎日だ。それに、職場にいる同僚や先輩、後輩とも仲良くない。それは僕がポンコツだからだ。よくミスするし、失敗する。それでも僕なりに頑張ってるのに全く成果が出ず後輩には陰口も言われている。いわゆる僕は会社のお荷物なのだ。今日もいつも通り仕事をした。午後9時頃、家の帰り道でまた、ため息が続いた。そろそろ会社をやめようかと考えていたところ僕は、大事な約束を思い出した。今日は、両親の結婚記念日で一緒に夕食を食べることになっていたのだった。僕の家は、裕福な家だった。でも、あまり、贅沢はせず普通の暮らしをしてきた。せめて1回ぐらい贅沢したいなとそんなことを考えながら、急いで駅に向かい電車に乗り向かった。その時には既に午後10時を過ぎていた。待ち合わせの時間は午後9時40分頃なのに。息をきらしながら必死に走り、目的地に着いた。そこにはフレンチレストラン(ポワロ)という店があった。場所は両親が予約したため詳しくは知らなかったが立たづまいからしていかにも高級感があり、僕は思わず息を飲み入店した。
【遅かったじゃない?】と母が言った。両親は服装をバチバチにキメている。それにくらべて僕は普通の社会人が着ているごく一般的なスーツ姿だ。なんだか顔が赤くなってきた。父が【まぁ、いいから早く座りなさい。】と言った。それから、僕は出てくる高そうなフレンチ料理を恐る恐る味わいながら最近のことを話した。さすがに会社のお荷物であることはいわなかった。いや、いえなかった。両親達は満足そうに笑みを浮かべている。最近はコロナもあって会えなかったから余程嬉しいのだろう。僕は、会計を済ませてそれから両親たちと別れ、帰りの電車に乗った。僕の財布には諭吉はもういなかった。いつもの帰り道。いつもの家。毎日が同じような日々だ。変わったことと言えば、両親と今日食事したことくらいだろうか。午後11時00分。僕は今日もまたいつもの薄いベットで眠った。
815「999」 恋戦富 @yunahk0613
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