宇宙エレベーター
猫原未瑚
宇宙エレベーター
私は
同僚の
そのうちの少し人が少なかったエレベーターの前に2人で並ぶ。
「あれ?ここだけ星の数が少ない」
「本当だ」
この建物のエレベーターの扉には、太陽系の星たちが並んだ絵が描かれているのだが、水、金、地、火、木、土、天、海のうち地、天、海が描かれていない。
「変なの。まあ、たまたまかな。」大雑把な性格の槻華が言った。
「たまたまって…そんなことあるの?」そう言いながらも、チーン、と音を立ててエレベーターの扉が開いたので乗り込んだ。
「?」誰かが声をあげたと思ったら、2年先輩で同じ部署の山村さんだった。
よく見ると、皆近い先輩か後輩ばかりだった。
「あ、二楷堂さんじゃん。」
声を掛けてきたのは、やはり同じ部署で3年先輩の中原さんだった。
「中原さん。お久しぶりです」
「今からランチしに行くの?」
「あ、はい。」
「黒崎さんも一緒なんだ。」
「ええ!」
「ねえみんな。このボタン、なんか変じゃないか?」山村さんが言った。
「あ、本当だ」中原さんが同意する。
エレベーターのボタンを見ると、「月」「火」「水」「木」「金」「土」「日」
と書かれている。
「こんなの簡単じゃないですか。今日は月曜日だから、「月」のボタンを押せばいいんですよ」と槻華。そしてポチ、とボタンを押してしまった。
「え」
ギュイーン、と音をさせて、エレベーターはものすごい勢いで上へあがっていった。
そしてあっという間に町が見えなくなった。何故か意識が薄れる。
「も、もしかして…私達、今から月へ行っちゃうんじゃない?」
「嘘!」
「だって…こんな上にあるものなんて、月しかないわよ」
「ええ!曜日じゃなくて、星、だったの…?」
意識が完全に消えた。
眼を開くと、そこには大きな大きな月があった。
…場所、変わった…?
そこはエレベーターの中ではなく、良く見慣れた槻華の家の畳部屋だった。
「お、瑞季、起きたね。」
「あ」
そうだ。今日は槻華の家で会社で仲のいい6人とお月見をすると言っていたんだ。
ちょうどエレベーターに乗っていた人たちと同じ顔ぶれだ。
「月、綺麗だねぇ~」
と、隣の部署の犬飼さんが言った。
「ですね。…?」
にしても、月が大きすぎないか?
「…⁉」
月が、少しずつ大きくなっている。
ゴゴゴゴゴゴゴッッッッッッッッ………………
地響きが鳴った。
「きゃ」
槻華と犬飼さんで身を寄せ合う。
………………これも夢なんじゃない?
そう思い、できる限りの努力をする。
でも、月はどんどん近づいてくる。
「…………はぁ」
どうやら、これは夢ではなかったようだ。
宇宙エレベーター 猫原未瑚 @MikoMikko
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