宇宙エレベーター

猫原獅乃

宇宙エレベーター

私は二楷堂にかいどう瑞季みずき。有名食品メーカーに勤めている26歳。

同僚の黒崎くろさき槻華つきかと昼ご飯を食べにエレベーターに乗ろうとしている。やはり皆昼ご飯を食べに行くのだろうか。3つあるエレベーターの前には全てたくさんの人が並んでいる。

そのうちの少し人が少なかったエレベーターの前に2人で並ぶ。

「あれ?ここだけ星の数が少ない」

「本当だ」

この建物のエレベーターの扉には、太陽系の星たちが並んだ絵が描かれているのだが、水、金、地、火、木、土、天、海のうち地、天、海が描かれていない。

「変なの。まあ、たまたまかな。」大雑把な性格の槻華が言った。

「たまたまって…そんなことあるの?」そう言いながらも、チーン、と音を立ててエレベーターの扉が開いたので乗り込んだ。

「?」誰かが声をあげたと思ったら、2年先輩で同じ部署の山村さんだった。

よく見ると、皆近い先輩か後輩ばかりだった。

「あ、二楷堂さんじゃん。」

声を掛けてきたのは、やはり同じ部署で3年先輩の中原さんだった。

「中原さん。お久しぶりです」

「今からランチしに行くの?」

「あ、はい。」

「黒崎さんも一緒なんだ。」

「ええ!」

「ねえみんな。このボタン、なんか変じゃないか?」山村さんが言った。

「あ、本当だ」中原さんが同意する。

エレベーターのボタンを見ると、「月」「火」「水」「木」「金」「土」「日」

と書かれている。

「こんなの簡単じゃないですか。今日は月曜日だから、「月」のボタンを押せばいいんですよ」と槻華。そしてポチ、とボタンを押してしまった。

「え」

ギュイーン、と音をさせて、エレベーターはものすごい勢いで上へあがっていった。

そしてあっという間に町が見えなくなった。何故か意識が薄れる。

「も、もしかして…私達、今から月へ行っちゃうんじゃない?」

「嘘!」

「だって…こんな上にあるものなんて、月しかないわよ」

「ええ!曜日じゃなくて、星、だったの…?」

意識が完全に消えた。



眼を開くと、そこには大きな大きな月があった。

…場所、変わった…?

そこはエレベーターの中ではなく、良く見慣れた槻華の家の畳部屋だった。

「お、瑞季、起きたね。」

「あ」

そうだ。今日は槻華の家で会社で仲のいい6人とお月見をすると言っていたんだ。

ちょうどエレベーターに乗っていた人たちと同じ顔ぶれだ。

「月、綺麗だねぇ~」

と、隣の部署の犬飼さんが言った。

「ですね。…?」

にしても、月が大きすぎないか?

「…⁉」

月が、少しずつ大きくなっている。

ゴゴゴゴゴゴゴッッッッッッッッ………………

地響きが鳴った。

「きゃ」

槻華と犬飼さんで身を寄せ合う。

………………これも夢なんじゃない?

そう思い、できる限りの努力をする。

でも、月はどんどん近づいてくる。

「…………はぁ」

どうやら、これは夢ではなかったようだ。

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