最終話: そうか、そうだったのか……(虚無る)




 ──西暦2050年。




 世紀の天才科学者、『プロフェッサー・マザー』の登場により、人類の科学力は飛躍的に進歩した。


 それまでは、人類の進歩というのは、一歩ずつ足場を確かめて坂道を登るかの如く、ゆっくりとした進みであった。



 しかし、マザーの登場により、人類の科学力は階段を上るかのように、その進みを加速させた。



 時を進める毎にエネルギー問題は改善されてゆき、環境汚染へのアプローチも、マザーの登場によって回復傾向が生まれた。


 環境とエネルギーの二つが改善し、よりクリーンかつ効率的な動力が開発されたことで、より安全かつ広範囲に物流網が敷かれ、人の行き交いが活発になった。


 これにより、社会環境によって埋もれていた人材が発掘され、マザーだけでなく、より多くの人々が才覚を発揮し、更に後押しする事となった。



 発達した科学は時に魔法と変わらない。


 そんな言葉が一時期生まれていたが、それを、マザーは証明したのであった。



 そして、それはマザーが没してからもなお、変わらなかった。


 さすがにアインシュタインと同じ括りにされていたマザーが存命だった頃に比べたら、その歩みは遅くなったが……それでも、既に足場は完成していた。


 人類は月に移住地を作り、コロニーと呼ばれる宇宙に浮かぶ居住区を作り、近隣の小惑星から資源を回収し、火星をテラフォーミングした。


 正しく、破竹の勢いで……人類は、かつてない程の栄華を誇り、生息域を拡大していったのであった。




 ……だが、時は流れ……西暦2111年。




 その年、世界は……いや、人類は、未曽有の危機に直面した。


 地球外生命体からの、侵略。


 後に、『Mikado(略称:M)』と呼称されるようになった怪物はまず、資源回収を行っていた宇宙船などに襲来した。


 当初、人類は楽観視していた。


 初の未確認宇宙人の襲来かと、一部では降って湧いたイベント程度にしか認識していなかった。


 非常に危機意識が欠如した話だが、当時の人類がそうなるのも、致し方ないことであった。


 なにせ、人類の歩みは止まることはなく、敵らしい敵と戦うこともなく、どんどん生息域が広がっていたのだ。


 向かうところ敵無し……そうとしか言い表しようがない精神状態に陥っていた人類は、人類以外から行われた初の『敵対知的生命体』による攻撃も、どこか他人事として捉えていた。


 なにせ、その敵の外見が……言うなれば、角ばった人型の、あるいは人の顔らしき部分が身体のどこかにある、なんとも珍妙なモノだったからだ。



 宇宙空間にて活動出来る生命体は存在しない。



 仮に居たとしても、その構造上……非常に脆いと推測されており、弾丸の一発や二発を当てれば、内と外との圧力の差によって爆散する……そう、思われていた。




 ……だが、しかし。




 宇宙の彼方より襲来してきた『M』は、誰もが目を疑うぐらいに頑強であった。


 実弾も、レーザーも、まるで歯が立たない。それこそ、核兵器ですら『M』には通じなかった。


 しかも、だ。


 ようやく気付き始めた人類の楽観を嘲笑うかのように、『M』は己の分身である『リトル・M』を大量に生み出したのだ。



 この『リトル・M』。



 その戦闘力こそ『M』には劣るし全てにおいて『M』より小型ではあったが、既存の兵器では中々に歯が立たない程には凶悪であった。


 なにせ、強度も、火力も、機動力も、全てにおいて人類の科学力を上回っており、1体の出現に対して相当数の消耗を強いられたからだ。


 戦闘になった際、歩兵ではまず足止めすら出来ず、接敵してしまった者から皆殺しにされ、一部は食い殺された。


 戦闘艦による大口径によってようやく仕留めることは出来たが、絶え間なく襲い掛かってくる『リトル・M』の物量は、戦闘艦による封鎖もあっという間に跳ね除けてしまった。


 そして人類の楽観も……テラフォーミングされていた火星に襲来し、一つの軍事施設を壊滅させたという情報が飛び込んできた時には、消えた。




 この時、ようやく人類は……相手を、自分たちの生存を脅かす敵性存在だと強く認識した。




 だが、気付くのが遅かった。いや、仮に早かったとしても、結果は変わらなかっただろう。



 人類は、敵の戦力を見誤ったのだ。



 そして、それからは早かった。太陽系の外にまで伸びようとしていた人類の生息域はあっという間に押し戻され……2131年ごろには、火星すらも放棄する事になった。


 そして、翌年には月面の基地すらも攻撃され……1年経たずに占領され、放棄した人類は母星へと戻り……そして、2133年の、夏。




 ──ついに、人類史で初となる、星の外からの侵略を許してしまった。




 もちろん、人類はただ指を咥えて見ているばかりだったわけではない。侵略者に対抗する為に、様々な武器を作り出し……そして、生まれた。



『ロボテッカー』



 それは、かつて人類の文明を飛躍的に伸ばした世紀の天才・マザーが発案し、基本理論と設計図だけが残された……対宇宙生物を想定した人型兵器の存在である。


 とはいえ、その兵器は……当時、あまりに荒唐無稽なその中身はマザーが残したジョークの一つとして処理され、長く日の目を浴びることはなかった。


 なにせ、当時の科学力では到底作れない素材……例えるなら、『まずはオリハルコンの板金に、賢者の石を基に作った溶液で……』という感じのトンデモ理論なのだ。


 そりゃあ、当時の科学者たちが真面目に受け取らず、マザーのジョークだと思って当たり前だった。


 しかし、マザーの子孫にあたる、マザー2世によって新たに考案され、開発された事で……『ロボテッカー』という名の兵器は実用化された。


 それにより、対抗能力を得た人類は、侵略者との戦いにようやく……それから長きに渡り……正しく、生存競争としか言い表しようがない激戦の日々であった。



 そうして、西暦2198年。



 人類は……ついに、『M』を討伐せんために、人類史上最大となる作戦……後に、『Mikado大戦』と呼ばれるようになる、討伐作戦が決行されたのであった。






 ……。



 ……。



 …………されたのであった、のだが。



(!?!?!?!?)



 色々あって……そう、あれから約200年近く。


 語り出すと文庫本が7冊と番外編が2冊にコミカライズした漫画が12冊ぐらいにはなりそうな濃厚エピソードの果てに、だ。


 気付けば『ムーン・ロボテッカー』に搭乗し、MIKADOを虐殺しまくっていた女神の彼女は……とっても混乱しまくっていた。



 ……まず、これまでの経緯を簡単に語るならば、だ。



 彼女は『M』討伐作戦に参加し、『M』と呼称された怪物を倒す悲願を達成するために、ロボに乗って宇宙に出ている。


『M』が生み出した『リトル・M』は、宇宙の彼方からドンドン押し寄せてくる。


 地表の上では環境へのダメージが大き過ぎることもあって、戦場を宇宙に戻した……というより、押し返した結果だ。


 そこに至るまでを語るとなれば、話数にして15話ぐらい使い総なので省略するが、とにかく血と汗と涙の果てである。


 そして、参加している理由はまあ、普通に徴兵されたからで、断る理由もなかったから。


 逃げようと思えばいくらでも逃げられるが、この作戦の結果を見守るために、こうして作戦に参加する運びとなった。


 もちろん、作戦に参加している以上は、ちゃんとやる。というか、それ以前に女神としてちゃんとやるつもりだ。



 ……で、だ。



 わざわざ語るまでもないマザー2世(意味深)より用意された、『女神様じゃないと即死する』という、とんでも性能な特注ロボに乗って……作戦開始、約1時間30分後。



 戦況は、正直……劣勢であった。


 というのも、理由は三つ。



 まず、本命である『M』が木星の辺りにまで後退したことで、そこに行くまでにも時間が掛かること。


 次に、その間に生み出された『リトル・M』によって、進撃が阻まれたこと。


 そして……三つ目は、その『リトル・M』の物量によって、物資を消耗させられていること……この三つである。



 もちろん、人類の反抗が弱かったわけではない。



 当たり前だが、誰も彼もが超一流。


 特に、なにやらお目目がグルグルしている感じで色々と極まっている雰囲気を醸し出しているパイロットが運転する、『真ロボテッカー』が、すごかった。


 だって、スペック的には彼女が操縦するロボより低いはずなのに、何故か彼女のロボよりも高出力を出しているのだ。



 マジで、意味が分からない。



 同じようにビームを打てば、明らかに向こうの方が上なのだ。もう、次から次にバッサバッサと『リトル・M』を倒していくのは、見ていて爽快感を覚えるレベル。


 本当にこっちの方が上なのかと、思わずマザー2世に尋ねれば、『え、そのはず……え、なにアレ知らん怖っ』と返事が……話を戻そう。



 そうして、これらを踏まえて、だ。



 彼女が困惑のあまり思考が???で埋まる原因になったのが……その戦況の最中、地上より『ネオ・ロボテッカードラゴン』なるロボが出てきたからだ。



 ……具体的に、言おう。



 『ネオ・ロボテッカードラゴン』なんてのは、まったく知らない。ましてや、状況に合わせてフォームチェンジするなんてのも、知らない。


 まあ、どういうわけか、フォームチェンジするのは『真ロボテッカー』も同じなのだが……話を戻そう。


 とにかく、特注というか、大本の開発者が用意してくれた彼女のロボテッカーですら、そんな機能はないのだ。


 ぶっちゃけると、マザー2世と偽名を名乗るAIも知らぬ事であり、映像を見ていた彼女の方が、よほど驚いていた。



 しかも、この『ネオ・ロボテッカードラゴン』……くっそ強いのだ。



 そりゃあもう、他のロボが手こずっていた個体を一瞬で蒸発させる大出力ビームを連射するのだから、その強さが窺い知れるだろう。


 だが、しかし……話はそこで終わらなかった。


 『ネオ・ロボテッカードラゴン』の参戦により、あっという間に戦局をひっくり返したわけだが……それでも、どうにもならない問題があった。



 それは、本命である『M』が木星付近にまで移動している……という問題だ。



 さすがに、木星まで向かうのは遠すぎる。向こうがその場で止まり続けているならまだしも、さらに移動を続けていれば……だ。


 それに、向かうだけならまだしも、道中で妨害が撒かれているのは想定するまでもない。今から部隊を編制して追いかけるのは、相手に時間を与えるだけの愚策だ。



 では──いったいどうするべきか? 




 ──ロボテッカーの投げるスピアにビームを当てて、ワームホールを作るぞ! 


 ──おうよ! ロボテッカー……ビィィムゥゥゥウ!!!! 




 答えは──武器にビームを当ててワームホールを作り、そこを通って木星付近にまでワープする……というものだ。



 ……。



 ……。



 …………正直、言おう。



(えぇ……なに、あれ?)



 女神パワーで盗聴していた彼女は……マジで意味が分からない現象に、かつてない程に目を見開いて凝視した。


 なんか、とんでもない滅茶苦茶が当たり前のように行われていると……そういうのが、素人の彼女にも分かる。


 武器にビームを当ててワームホールとか……とりあえず、困惑しているマザー2世……面倒なので、マザーの動揺を宥めつつ、こっそり女神的なワープで追いかける。


 すると、ちょうどピンチな場面だった。


 これはイカンと、加勢しようとビーム攻撃をしようとした──その時だ。




 ──ロボテッカーァァァァ!!!! ジャイアント! トマホーゥゥゥクゥゥウ!!!! 




 どういう理屈か、『真ロボテッカー』の持っている武器が巨大化し──放たれた一撃によって、『M』を両断したのであった。




 ──わ、我が種族は永遠に不滅なり!!! 




 そう、『M』は叫ぶ。しかし、それはすぐに断末魔に変わり、その身体から光を放ちながら朽ちてゆく『M』……いや、MIKADO。


 それは……多少なり力を貸したとはいえ、ついに、人類が自らの力で侵略者に勝利した瞬間であった。



(Oh……で、でも、ついにここまで来たんだなあ……)



 過程はなんであれ、200年近くも見守り、時には共に歩み、その進歩を間近で感じていた彼女は……思わず、涙ぐんだ。


 そう……語るとなれば7部作の劇場版ぐらいになってしまうが、本当にここまで来るのは大変だった。



 ……とはいえ、ここからだ。



 なにせ、世界の狭間にはまだまだ『M』たちが居る。真実を前提に語るなら、まだ人類は生存競争の第一歩を勝利したに過ぎない。


 しかし、小さくとも、偉大なる一歩だ。


 今は、その達成感に浸るべきだろう……そう思いつつ、彼女は機体が損傷して困っているであろう、この戦いの英雄を迎えに行くために操縦桿を動かそうと──したところ。




 ──見ろ、時空の裂け目だ……本命のお出ましだ!! 




 実に、タイミング悪く……MIKADOたちの巣窟である、狭間の空間が露わになった。


 いやいや、タイミング悪いなこいつ……思わず、顔をしかめる彼女を他所に。




 ──俺たち全員の力を一つに合わせ、ロボテッカーの最終兵器を使う! 


 ──無茶だ、機体がバラバラになってしまう! 


 ──はっ、俺たちが死ぬわけねえだろ! 




 なにやら、知らぬ間に搭載された最終兵器を使い、何かをしようと……いや、もう、するようだ。




 ──ロボテッカー……スバァァァァアアアクゥゥゥウウウウ!!!!!! 




 実際、放たれた。


 自らの機体を弾丸が如き一撃に変え、体当たりを行う……なんとか我を取り戻し、解析を果たしたマザーの報告を受けた彼女も、その後を追いかける。


 すると……視界全てに広がる赤黒い空間と、その赤さを埋め尽くさんばかりに広がっている『M』の大群を見て、彼女は顔をしかめ……直後、絶句した。


 何故なら──どういうわけか、超巨大なロボテッカーが、自分たちに並ぶようにして併走していたからだ。


 しかも、一つや二つではない。


 パッと見た限りでも、1000や2000……数えるのが馬鹿馬鹿しく思えるだけのロボテッカーの群れが、まるで、『M』に立ち塞がるかのように、超高威力のビームを発射していた。



(!?!?!??!?!?)



 そりゃあ、混乱して当たり前である。


 なにせ、何も聞いていない。


 というか、ロボを通して状況を見ているマザーですら(!!??!?!?)といった具合に混乱している辺り、如何に想定外な事態だったかが窺い知れるだろう。



 それに──その巨体に相応しく、超強い。



 女神的なシックスセンスで感知出来たが、出力の桁が違い過ぎる。文字通り、天と地ほどの差があり……現状の人類では絶対に製造できないのが分かった。


 では……いったい、誰が作ったのか? 


 ロボテッカーと言えばマザーだが、当のマザーは知らないと何度も断言している。疑う必要のないことだからこそ、余計に分からず……彼女は何度も首を傾げた。



『そうか……そうだったのか……』


(は? なにか分かったの?)


『なんだ……こんな簡単な事だったのか……』


(いや、だから何が分かったのかって)


『世界とは……時間とは……こんなに単純な事だったのか……』


(燃やすぞ、こら)


『燃やす……これだから……空気の読めない女神様は……』


(う~ん、相変わらずだなおまえは)



 ただ1人……ただ一冊だけが、なにやら全てが分かったかのような言い草で震えていたが……正直、聞くだけ無駄な気がした彼女はあえて尋ねなかった。



(──と、とりあえず、誰が乗っているんだろう?)



 そんな事よりも、自分たちすら把握していないロボテッカーに……それも、超巨大ロボテッカーに乗っていることを危惧した彼女は、目を凝らす。


 すると、彼女の視界が一気にズームアップされ、機体の表面、内部、コクピット(これまた、超広々)を映し出し……そして、ついに操縦者と思われる人物を捉えた。




 ──ほほほ、待っていたでおじゃる、ロボテッカーチームよ


 ──新たに来た、輝夜様の意志を受け継ぐ者たちよ


 ──うむ、永劫に続く戦いのために、我らは……


 ──そう、全ては簡単なことだったのだ


 ──全ては単純明快……答えなど、始めから有ったのだ




 そこに居たのは5人。その姿を捉えた瞬間──思わず、彼女はコクピット内で叫んだ。



「なんでおまえらがおるんじゃい!!」



 そう、叫んだのも無理はない。


 何故なら、その5人は……かつて、己に対して求婚した、あの貴族たちだったからだ。


 いや、もう、本当に意味分からない。おまえら、死んだはずではなかったのかと彼女は心から思った。


 只でさえ、もう色々といっぱいいっぱいなのだ。


 女神なのに、これ以上女神すら理解の及ばない不思議現象を次から次に起こすのは本当にやめてほしい。



 やいやいやい、こちとら女神様やぞ……!!! 



 そう、己の心を慰めつつ、彼女は巨大ロボテッカーから、『真ロボテッカー』たちの様子を伺うために、そちらを見やった。




 ──そうか、そうだったのか、俺たちは……へへ! 


 ──そうだ、未来永劫、この時の狭間で戦うために……! 


 ──そうだ、ここから先は、俺たちだけで十分だ……! 




 悲しい事に、パイロットたちもまた、同類なようだった。



「待って、君らには何が見えているの? 女神にも見えないのを当たり前のように見るの、止めてもらえる?」



 見てから、ちょっと後悔した。独り言でしかないツッコミを入れてしまうのを、止められなかった。



 というか、本当にどういう状況なのだろうか? 



 女神なのに、この場で一番状況が分からない。チラリと、手元の計器の中で、ひときわ目立っている赤いボタンに視線を落とす。


 それは、彼女が載るロボテッカーの秘密の機能。


 搭載された特殊なエンジンを使うことで、『ゴッド・ムーン』という全身が黄金に輝くフルパワー状態になる。


 その力は全てのロボテッカーを上回っており、『リトル・M』はおろか、『M』すらも一方的に倒すことが出来る……と、マザーより聞いていた。



 それを、彼女は今回使用すると決めていた。



 タイミングは、人類の手ではまだ『M』を倒せないと判断した時か、人類の敗北が決定する可能性が極めて高くなった段階である。


 なにせ、『M』の数は膨大である。そして、彼女が手を貸せる範囲はそこまで多くはない。


 だから、人類が自らを守るために、自らの力で強くならなければならない。


 しかし、今は未熟で……徐々に戦力を増しているとはいえ、現段階では『リトル・M』相手ですら多大な被害を受けてしまう。


 けれども、それも今だけの話だ。


 いずれ……どれぐらい先になるかは分からないが、いずれは影から手を貸さなくとも、人類は自らの力で『M』を跳ね除けるようになるだろう……そう、彼女は思っていた。



(……思っていたんだけどなあ)



 ぽちり、と。


 ボタンを押せば、彼女を乗せたロボテッカーは光り輝く。


 真の力を発揮し、黄金のボディとなった『ゴッド・ムーン』は、彼女の意志に従って、素早くバーニアを点火させ……『真ロボテッカー』より放たれた光から逃れるように飛んできた三つのカプセルを優しく捕まえる。


 それは、『ネオ・ロボテッカードラゴン』からの脱出ポッド。


 つまりは、コクピット部分に当たるのだが……女神的な目で、中にいるパイロットたちが無事だと確認した。



 ──直後、光はエネルギーとなって、空間を揺らした。



 急いで、機体を反転させ──空間より脱出すれば、それを見計らっていたかのように狭間への入り口は揺らぎ、閉ざされ……あとには、静かな宇宙だけがそこにはあった。



 ……。



 ……。



 …………うん、まあ、うん。



「……考えるのは止めよう、感じるんだ」



 とりあえず、それだけを零した彼女は……手の中に居るパイロットたちを治療する為に、バーニアを点火させるのであった。






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転生TS女神の神話(非公式) 葛城2号 @KATSURAGI2GOU

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