ある有名な悲恋物語が、解釈を変えて、この時代によみがえります。
少女は若い男性に心惹かれ、その思いが遂げられないことで、男に会いたい一心で大事件を引き起こす。江戸時代以来、「愚かな少女の一途な思い」というテーマで語られてきた物語が、この物語では、「若い男性の対応に納得できなくて、どういう結末になるかわかったうえで」、それでも自分の意志で同じ大事件を引き起こす、という物語として語られます。
しかも少女の「純粋さ」という点は変えずに。
そこに、やはりある有名な人物が絡み、その人物が後に有名になる契機とも絡んでくる。
将軍のお膝元になって百年に満たず、まだ成熟した都市になっていない江戸の気風を伝える物語です。