第5話 私ちゃんになれなくてごめんなさい。

私ちゃんがいなくなってから1週間が経った。

僕は私ちゃんの人生を歩き始めた。

僕なりの人生を歩み始めた。

友達はみんな私ちゃんが私ちゃんじゃなくなったことに気づき始めた。

友達が口を開くように言った。

『私ちゃん、なんか雰囲気変わったよね。なんかボーイッシュ的な感じになったよね。前より良い感じだね』

僕は『そうかな』って流しながら、少しだけ傷ついた。

僕は私ちゃんが私ちゃんのキャラクターが好きだったのに、周りはみんな僕が良いと言う。

そんな声に傷ついた。

だけど、1人だけ私ちゃんを求める声が存在した。

それは、今まで振り向きもしなかった母親だった。

母親だけは、私ちゃんを求めていた。

僕も私ちゃんに会わせてあげたかった。

でも、それが出来ないから僕は僕の力だけじゃ私ちゃんには会えなかった。

お母さんは明るい僕を見るなり言った。

『本当のあなたが1番好き。笑ってるあなたは嘘つきの象徴でしかないよ。だから、私は今のあなたを好きにはなれない』

僕は突きつけられた事実にどう反応すれば良いのかさえ、分からなかった。

僕はただ、お母さんに自分がここにいることをわかって欲しかった。

でも、母親の望んでいる自分にはなれない僕にとって、お母さんの気持ちは僕を傷つけるだけのものだった。


『お母さん、僕を好きでいて欲しかった』

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時間を刻む朝のひととき ソノハナルーナ(お休み中) @eaglet

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