#37 女王様の貴重な食事シーン

『ギジャアアアアッッ!!!!』


 今回潜ったダンジョンの深層部にも、非常に強力な魔物モンスターが巣食っていた。

 猿面の巨大なライオン、そして尻尾は大蛇。いやこれライオンなのか、トラみたいな模様してるぞ?


「またキメラの亜種か希少種かよ、ワンパターンってスパム扱いされたらどうしてくれんだ!!」


 身なりも攻撃方法も、以前討伐したスフィンクスと殆ど変わらなかった。

 超音波に長爪、違いは稲妻の代わりに尻尾から毒雨を飛ばしてくるか程度。


“もうプロレスはええて”

“どうせもう効かんやろ”

“さっさとやっちまえ!!”


「やっぱ飽きてんな皆……」


 ただ一番の違いは、オレがミティからネフェたんのミイラになったこと。


『ギィ!?』


「ご愁傷様。今度は水でも持ってくるんだな」


 おかげで弱点は増えたものの、それ以外の攻撃なら殆ど棒立ちで受けられるようになっていた。

 うん、動画映えなんかねえよ。バイタルこそが正義。


“@カムナ $100.0 アリヴァ様、そろそろ財宝の在庫が限界です。お早く!!”


「そのスパチャも国庫から出てんだろ!?」


“@カムナ $100.0 税金で赤スパを送れる、これ以上の快楽はありません!”


「やめろマジで、マネロンじゃねえんだぞ! あぁもう分かったよ、はい地獄で逢おうぜアリヴェデルチ!!」


 もう見せ場もクソも無いため、カットラスを横薙ぎにしてキメラの首を一瞬にして刎ねた。


 まあ所詮はS級程度だったろう。これで良かったんだ、きっと。


ゴールド箱か。上出来だな」


「動画配信者としては、不出来も良いとこだけどね」


「ならもっとしっかり作ってくれねえかな。


 ダンジョンの出口で腕を組み待ち受けていた、義妹のミイラへ小言をこぼす。


 あの後、ミティアの遺体はネフェタルの呪詩によってミイラとなった。

 最初は困惑していたし、その後は不服を申し出ていた。当然、親母以外は反対の声をあげていた。

 だから彼女には重大な役割を与えたのだ。それとは別に、今まで通りオレのマネージャーもしてくれてはいるのだが。


「登録者数も視聴者数も2割減。これは異常事態だよ」


「わーってるよ。けど仕方ねえだろ、あんな大立ち回りをしたうえ戦闘は基本的に易化。エンタメとしちゃもうオワコンも良いとこだろ」


「……それで、財宝のほうは」


「この通り大漁だ。さっさと納めねえとな」


 それが、ヒンデガルト改めメフィスト王国の首都近くにダンジョンを作ること。

 そうでもしなければ、ミイラの栄養源となる財宝の供給が追いつかないからだ。


「ただいま戻りまし……げぇ!?」


「まだ飯は届かぬのかぁ!!」


 ……まあ、ミイラは女王のネフェたんの管轄下だから、大量のエネルギー補給が必要なのは基本彼女のみなのだが。

 それとは別に個々のミイラも週1で財宝を食わなきゃいけないのだから、ミティが居てもメフィストは常に財政破綻スレスレだ。


「ネフェタルちゃん、ご飯なら3日前に食べたでしょ!!」


「アリヴァ様、はやく財宝を!!」


「ほら持ってきたぜ、金箱すこしに銀箱大量!」


「よこせ! 数十万ものミイラを御するのは楽ではないのじゃ!!」


「ああっ、箱ごと食うな!! 開封の儀でも再生数取れるってのに!!」


 コイツ、袋を逆さにして胃に直接流し込みやがった……!


「どうせ腹に入れれば皆一緒……ふぅ、満腹満腹」


「いつか絶対その美貌崩れてデブるぞ、マジで……」


 君主がこんな調子なため、下で働くオレ達の苦労は絶えない。


 あれからメフィストは国際社会から国として正式に認められた……わけではなかった。

 様々な手続きは必要だし、ヒンデガルト以上に貢献できるか示す必要はあるし、何よりかつてフィリカ大陸の国々を植民地にしていたブリティ王国としては面白くない。


 そのため正式に国と認められるまでダンジョン扱いとすることで、カウサー田園郷のようにWDOの管理下のもと運営の支援を受ける事となった。

 カムナちゃんもWDO職員の立場で、親母と共に日々粉骨砕身してくれているというわけだ。


「さて、妾は書に印を押した後、国民ミイラたちに大事が無いか視察せねばならないが。アリヴァはどうする?」


「決まってんだろ。オレがやることは今も昔も変わんねえ」


「ダンジョン探索、そして配信。いまはミティアちゃんが作った財宝農場からの収穫みたいなものだけどネッ」


「だからオワコン真っしぐらなんだけど。新しい企画考えなきゃ」


「カムナは一生アリヴァ様最推しです!」


「はいはい、ヴァナタは赤スパを連絡手段にするのをやめましょうね」


 なんか勝手にまとめられてしまったが、咳払いをし直す。


「オレ達は賽を投げてしまった。だから、出た目以上の分まで進むしかない」


「支えてくれるのだろうな?」


「いまさら何いってんだ」


 この身が滅びても、魂が滅びない限りやることは変わらない。

 数千年ぶりに目覚めた国の躍進は、まだ始まったばかりなんだ。


「オレは、女王様の奴隷だからな」


 さて、また新しいダンジョンに潜るとするか!


〜〜〜〜〜〜


 ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

 昨日より、新作ミステリー「何者にもなれなかった大人たちへ」を投稿し始めました。


 そちらも是非、よろしくお願いします!

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最強の未登録ダンジョン配信者、女王のミイラにキスしたら炎上したうえ奴隷にされてしまった件 遊多 @seal_yuta

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