第25話:俺が必ず幸せにしてみせるから

「はぁっ! はぁっ! はぁっ……!」


 荒い息が止まらない。

 エルマードと背嚢を担いだまま森の中を走り続けたせい、ばかりではなかった。

 小さな泉のほとり、柔らかな草の上に敷いた俺の上着の上に寝かせたエルマードは、わずかに差し込む月の光に照らされて、輝いているように見える。


 だが、体じゅうに弾を食い込ませている彼女は、ひどく呼吸が浅く感じられた。彼女を担いで走ることばかりに精一杯で、彼女の容態など気にしていられなかったのだ。


「くそっ……こいつはこんななりをして、本当はチビなんだぞ……!」


 横たわるエルマードを前にして、過剰とも言えるほどに高ぶる気持ちを、必死にねじ伏せる。瞼の裏で星のように瞬く何かを感じながら。

 さっきまでどうしようもない衝動に駆られて、俺はもう少しで彼女を襲ってしまうところだった。


 どう考えても異常な状態だった。

 撃たれたという極限状態で神経が高ぶっている、とか、そんな状態で済まされるようなものじゃない。明らかに異常な興奮状態。撃たれるだけならこれまでの戦場でだって何回か経験している。だけどこんな心理状態になったことなんて無い!


 ……そうだ、以前、捕虜収容所で尋問されたときの、妙な尋問!


 ──最も気分が高揚するときはどんなときか、目を閉じると星が見えることはないか。

 ──無性に女を抱きたい、犯したい衝動に駆られることはないか、女を抱いたときに星がまたたくような感覚はないか。


 あの時、奴らの質問がまさにこれだったじゃないか!

 あの時の俺は、アルヴォイン王国の連中は、ネーベルラントの人間を凶暴な人間だと思い込んでいるのか、と不愉快になった。

 だが、今の俺がまさにそれじゃないか!



 なんなんだ、これは。

 ライヴァの奴が言っていた「覚醒」、というのは、関係があるのか⁉

 エルとの「交配相手」に選ばれるっていうのは、特乙種っていうのは、つまり、普通ではない、何か異常な特性を持つ人間だっていうことなのか⁉


「くそっ……! 落ち着け、俺……! 俺は正常だ、理性を保て……!」


 大きく息を吐き、歯を食いしばり、両手で頬を叩く。

 腰のナイフを抜くと、血を流す部分の毛をかき分けて、震える手で、弾をほじくり出す。

 今は彼女を助けることに集中する!

 おかしな衝動に負けるな、俺! 


「痛いよな……。起きるなよ、頼むから……!」


 気絶しているからだろうか、獣人と化したエルマードはかなりの筋肉質でありながら、その肉体は意外なほどしなやかだった。まず一つ、なんとか弾を取り出すことに成功する。これが痛みと苦痛を訴えて体をこわばらせていたら、どうしようもなかったかもしれない。


 ハンドベルクが言っていたことを思い出す。肉の途中で弾が埋まっていた、と。

 今なら分かる。

 人の姿のエルマードならば、あの華奢な体つきである以上、おそらく弾が止まるとしたら骨に当たった時だ。それ以外なら、酷い結果になっていたことだろう。


 だが、この獣人の姿のエルマードなら、分からなくもない。成人男性を片手で掴み上げるような強靭な肉体だ。戦いの最中の緊張した筋肉なら、そういうこともあるだろう。気を失ってくれていて、本当に助かった。


 右大腿部の三つめ──ギャリっ、とナイフの刃が滑る。余計なところを切ってしまった。ぴくりと彼女の脚が震える。内心で起きてくれるなと全力で祈りながら、太ももを押さえつけて作業を続ける。


 外科手術というのは、されている本人よりも見ている方が胸痛むと言われるが、本当にその通りだと思う。


 ついさっきまで無邪気に笑って、俺のことをご主人さま、なんて呼んでいたこいつが、遠吠えと共に暴れ回っていたこいつが、今は随分と冷たくなってきている。

 一つ、また一つと、弾をほじくり返す。深くまで潜り込んでいるものもあるが、どれも筋肉で止まっているのが、驚異的だった。中には太い血管のすぐそばで止まっているものあって、本当に、ギリギリで彼女は生きていたのだと思い知らされた。というより、よくぞ生きていてくれた、というべきか。


「エル……! お前、俺を守るんだろう? 俺の嫁に来るんだろう? こんなところでくたばるなよ、頼むから……!」


 最後の一つと思しき弾を、彼女の胸から取り出す。

 心臓の手前、まさに胸骨が彼女の命を救った。それを震える手で取り出した時、俺はもう、緊張の限界に達していたのだろう。そのまま彼女の上に覆い被さるように倒れ込んだらしかった。





 頭をなでる感触に、幼少期を思い出す。

 母上は俺が小さい頃に亡くなったから、母の思い出はほとんどない。

 小さい頃は、子守女中のマリーのことを母だと思い込んでいた。


 マリー。俺はいつの間に、家に帰っていたのだろう。

 マリー。今帰ったよ──そう言わなければならないと思い、けれど声が出ない。

 マリー。俺は戦ったんだ。祖国ネーベルラントを守る騎士として。

 エル、褒めてくれよ、俺は──


「……ご主人さま?」


 目を覚ます。

 顔が柔らかいものに挟まれるような感触。

 夢うつつに体を起こそうとして、妙に柔らかいものを掴んでいることに気づく。


「あん──ご主人さま、ボクを求めてくれてるの?」


 聞き覚えのある、だが聞いたことがないほど妙に甘ったるい声に、俺の意識は一気に覚醒する!


「エル! 生きてるか!」


 一つ一つ弾を摘出した、あの作業を思い出して飛び起きる。


 周りはすっかり明るくなっていた。

 差し込む日の光が、ちいさな、けれど美しく透き通る泉を照らす。

 その陽射しの中で、あちこちが血でよごれたエルマードがそこにいた。

 金色の毛皮の、狼の姿をした獣人のまま。

 ──俺の、下で。


 自分が掴んでいる柔らかいもの・・・・・・の正体に気づいて、俺は慌てて彼女の上から飛び退く。


「ご主人さま、もっとボクの上にいてくれてもよかったのに」


 身を起こしていたずらっぽく微笑む彼女に、俺は大きく横に首を振る。そんなこと、していられるものかっ!


「でも、ボクの体から弾を抜いてくれたの、ご主人さまだよね?」

「それはそうだが……すまない、慣れないことでな。痛むか?」

「痛いのは痛いけど……だいじょうぶ。ボク、強いんだよ!」


  胸を張ってみせるエルマードに、俺は改めて、彼女が女の子・・・なのだと気づく。


「……エル、これを着ろ。せめて上だけでも」

「んう? どうしたの?」


 ……気づいていないようだった。ややつんと上を向く自分の胸の、その豊かさに。

 言うしかあるまい。誰かが言ってやらないと、この先、ずっとこのままだ。


 ──で、森の中に可愛らしい悲鳴が響くことになった。


「……だ、だって、今までそんなこと、ボク考えたことなかったもん……」

「いや、考えるだろう! お前、変身する時も服を全部脱いでいたんだし」

「あれは、服を着てると破れちゃうからだってば。それに脱いだって、すぐに毛皮でふっかふかになるから、気にしてなかっただけで……!」


 胸を隠しながら、上目遣いに、恨めしげな様子で俺を見る。


「……ご主人さまに言われるまで、ボク気づかなかったもん。ご主人さまが悪いんだよ……!」

「お前な、人のせいにするな。それくらい自分で気づけ」

「ボクの姿を見た人、みんな怖がるばっかりだったもん。ご主人さまだけだもん、おっぱいを隠せ、なんて言ったの。だから、急に恥ずかしくなっちゃっただけだもん」

「ほぼ全身が毛皮で覆われていても、胸だけは素肌を晒しているんだぞ? 隠すのが当然だろう」

「そんなの気にするひと、ご主人さまが初めてだったの!」

「じゃあ自分でも気づいたんだ、これからは気を付けろ」

「う~っ……!」


 エルマードはしばらく耳をぱたぱたさせながら唸っていたあと、ぷいっとそっぽを向いてしまった。


「……ご主人さまの、えっち」

「お前なあ!」


 昨夜は、弾を取り出すたびにあふれ出す血に、彼女を失う恐怖を感じて震えながらの作業だったというのに。


 そして気が付いた。

 俺だってあちこち撃たれた。ライヴァの野郎に腹を撃たれたときは、今度こそ死ぬものだと思ったりもした。


 それなのに、だ。

 傷が、治っている。


 いや、たしかに傷は残っている。無理をすれば開くかもしれない。

 だが、どう考えても夜に撃たれたばかりの傷痕ではないのだ。撃たれた場所をさすると、確かに痛みは残っているが、どう考えても、腹に穴が開いている感触がない。傷がふさがりかけなのだ。

 馬鹿な、確かに腹を撃たれたときの痛みは覚えているというのに。目が覚めたら一週間が過ぎていた、とでもいうくらいの状態だ。


「……まさかエルマード、お前が……?」


 おそるおそる聞いてみると、エルマードはにっこりと笑ってみせた。


「んう? ご主人さま、ボクの体から、弾、抜いてくれたんでしょ? ボクだって、がんばったんだよ!」

「がんばった……? どうやって」

「んー? えっと、爪と歯と舌で」


 どうやら、俺の体のあちこちに食い込んだ弾丸は、主に爪と牙でほじくり返し、あとを舐めて綺麗にした、ということらしい。覚えがないというのはつまり、気絶していたのだろう。……気絶していて本当によかった。


「……それにしたって、もう治りかけって、どうなっているんだ? まさか、エルは法術が使えるのか?」

「そんなことできないよ。弾だって、治りかけてた傷をこじ開けて取ったんだから、ご主人さまが変なんだよ。ケガが治るの、早すぎだよ」


 馬鹿野郎。俺が人外みたいな言い方をするな、まったく。


 おそらくだが、エルマードの仕業に違いない。彼女が変身できるのは、錬素オドを使って何らかの法術的な能力を発揮しているからだろう。法術として体系化されていなかったとしても、そういう能力がある種族だということに違いない。そうでなければ説明がつかない。


 俺の傷の治りが早いのも、彼女が意識的に、あるいは無意識的にその力を発揮したのではないだろうか。体を作り替えるような法術なんて聞いたことがないが、彼女はそれをやってしまうのだ。可能性はある。


 それにしても、爪と牙と舌って。ナイフを使った俺も苦労したというのに。

 太ももの付け根なんて、どうやって──


 ……そこまで考えて、俺はそれ以上考えるのをやめた。

 胸を隠すだのそんなことを指摘する俺はえっち・・・だの、くだらないことで俺が悪者だが、エルマードだって、俺の体のあちこちに牙を立てたり、そこを舐めたりしたわけだ。


「な、なな、なに……? なんでそんな目で……あっ! ち、ちがうよ! ボクはご主人さまを助けるためにがんばっただけだもん! み、み、見てなんかないもん!」


 急に顔が赤くなってくるエルマード。顔は比較的毛が短いからなのか、それとも毛の色が薄いからなのか。ケモノに近い顔のくせに、その赤く染まった具合がよく分かる。


「……見たんだな?」

「み、見てないよ! ほんとに見てないんだから! においかいだりとかつついてみたりとか、ほんとに全然、しなかったもん!」

「……なるほど?」

「はうっ⁉」


 慌てて口を押える彼女の仕草に、俺は乾いた笑いをもらしてしまった。

 まったく……


「まったく、本当に、くだらない──」


 変な笑いがこみ上げてくる。

 ああ、そうだ。

 くだらない──本当にくだらないことで、口論ができる。


 生きているからだ。

 切羽詰まっていないからだ。


 くだらないことを言い合えるほど、ちゃんと、生きているからだ……!


「んうっ⁉ ご、ご主人さま……? どうしたの、急に、ボクのこと、そんな……」

「生きている……俺たち、生きているよな……?」

「え? うん、ボクたち、生きてる、よ……?」


 ふかふかの彼女を抱きしめながら、俺は「生きている……」と繰り返した。

 言わずにはいられなかった。


 彼女は、俺の手から、こぼれ落ちなかった。

 今度は、今度こそは、取りこぼさなかった。




「……体は、痛むか?」

「だいじょうぶ……。普通に歩くくらいなら」

「狼の姿の方が、傷の治りが早かったりするのか?」

「うーん……たぶん、ね。でも、目立つでしょ? 血も止まったし、この姿でもなんとかなるよ」


 俺の腕の中にすっぽりと収まるようにして、今、エルマードはヒトの姿に戻っている。いや、狼の獣人姿が本来の彼女の姿だというのなら、ヒトに擬態している、と言った方が正しいのだろうか。


 ヒトの姿に戻った時、その美しい白い肌のあちこちに弾の赤黒い傷跡を残す姿を見て、胸が痛くなった。特に、彼女の小ぶりな胸の、その間にある弾の跡。本当に見事に、心臓の上だった。エルマードが最後に倒れた原因はその一撃だったというから、俺をかばってくれた彼女には、本当に感謝しかない。

 

「傷の治りっていうなら、ご主人さまの方が心配だよ? だって、弾を抜くためにボク、穴を開けちゃったようなものだもん」

「それは大丈夫だ。俺の方こそ、血は止まっている。……本当に、お前がどうにかしたんじゃないのか?」

「ボク、ほんとになんにもしてないよ? 弾を抜いて、血を舐めただけ」


 仮にそれが明け方だとしたら、血が止まって傷がふさがっているという現状はなんなのだろう。やはり彼女が無意識にでも、俺の体に何かをしたとしか思えない。あるいは彼女も俺も、この森で一週間ばかり気絶したままだったとか。

 ……それこそありえない。


「それより、ご主人さま?」


 エルマードが、妙にうれしそうに俺を見つめてくる。


「なんだ?」

「二人で明かした一夜──もう、三夜め、だよ?」


 ──婚約を成立させる儀式の一つ、三夜の契りのことか。こいつ、本当にこだわっているんだな。


「……昨夜のは数に入れるな」

「そんな、責任から逃げる男みたいなこと言わないでよっ! むしろボクとご主人さま、今度こそちゃんと肌を重ねて一夜を過ごしたんだから」

「肌を重ねて、って……。何もしてないだろうが」

「何もしてなくたって、ちゃんと肌を重ねた一夜だったもん!」

「お前、肌を重ねるってのはな……」


 柔らかな草の上に敷いた、俺の上着。

 その上に、彼女を押し倒す。


「ごしゅ、じん、さま……?」

「こういうことをするってことだ、エル」


 俺はわざと無表情を作ってみせると、その、艶やかだが血の気のない小さな唇に、そっと、影を落とす。

 目を見開き戸惑う彼女が、きゅっと目を閉じた。


「あ……んむ……」


 押さえつけた手首の先──しなやかな指が、俺の手首に絡まる。


「ご主人さま……」

「アインと呼べって」


 少し考える仕草をして、エルマードが微笑む。


「……だんなさま」

「誰が旦那だ」

「えへへ、ボクのだよ?」

「……まったく」


 その生意気なことを言う口を、改めてふさいだ。




 死んでもいいと思っていた。

 だが、今日、今、このとき。

 死ぬつもりは、なくなった。

 いや、死ぬ理由が消滅した。




「……まだ痛むか?」

「ううん? だいじょうぶ」


 微笑みながら泉で体を洗う彼女の白い肌が、真昼の日差しを浴びてきらきらと輝く。


「それより、ボクの体のこと、心配してくれてるんだ?」

「当たり前だろう」

「ふふ、どうして?」

「どうしてって……」


 言葉に詰まる。だが、言わなければ。


「……お前のことを、大切に思っているからさ」


 自分でもへたれな人間だと思うが、逃げてしまった。愛しているなんて、今はまだ、言えなかった。


「えへへ……うれしい」


 エルマードの笑顔は、本当に見ていて、心が安らぐ。

 かつて、こんな気分になったことがあっただろうか。


「でも、一つだけ、不思議だ」

「んう?」


 小首をかしげた彼女に、苦笑しながら続ける。


「俺は、どうしてこんなにも、お前に惹かれるんだろう。俺は今まで、縁が少ないというのもあったけれど、こんなにも女性に惹かれたことはなかった」

「それは、アインがアインだからだよ」


 謎めいた微笑みを浮かべるエルマードに、俺は聞き返す。


「……どういう意味だ?」

「ボクをつがい・・・に選んだひとだよ? ボクの秘密を知って、それでもボクを選んでくれたひとだよ? ふふ、こう言ったら変だけど、普通のヒト・・だったら、ボクを選ぼうなんて、思わないでしょ?」


 そう言って、彼女はくすくすと笑った。


「そうでしょ? だんなさま」


 ──彼女の言わんとしていることが、なんとなく分かった。

 ああ、俺はおそらく、普通とは違うのだ。兄四人と同じ両親から生まれていても、なんというか、先祖返りみたいな何かをもって、生まれてきてしまったのだろう。

 きっと、彼女の存在に惹かれてしまったのだ。


 だが、それが全てだとは思いたくない。

 たとえ彼女を欲する衝動が本能であり、運命であったとしても、もっと別のところ──心の部分で俺は彼女を求めていると。


「……だいじょうぶ。ボクはずっと、おそばにいるよ。だってボク、強いから! だからずっと、ずっと……」


 その柔らかな微笑みがひどく大人びて見えて、俺は胸が熱くなる。

 だが、その体に食い込んだ弾丸は、決して夢ではなかった。

 白い肌に醜く残る傷痕は、後に残るかもしれないと思うと、やりきれなくなる。


「気になるの?」

「……なるさ。俺を守ろうとしてできた傷なんだからな、それは」

「えへへ、だんなさま、優しいね」


 微笑んだ彼女は、薄い胸を張ってみせた。


「でも、ボクがだんなさまをお守りできた傷だもん。だいじょうぶ!」


 傷痕を誇る、ということなのだろうか。男なら勲章でも、女性にそれを求めるのは酷に感じた。だが、エルマードはそれも笑ってみせる。


「ボクがだんなさま以外に肌を見せることなんて、もう無いんだから。ボクの体の秘密は、だんなさまだけのものなんだよ?」


 ボクはもう、だんなさまのものだから──そう言って、少し、はにかんでみせながら、泉から上がってきた。


 白い肌を伝う水滴が、日差しを浴びて水晶のように光り輝く。

 体の傷自体は、もう血が流れるほどではない。


「エル」

「んう? なあに?」

「……俺がお前を幸せにする。必ず幸せしてみせる」


 目を丸くするエル。自分で言っていて恥ずかしくもあるが、俺はそれを噛み殺す。


「俺が、お前の居場所になってやる。必ずだ。……だから、もう少しだけ、時間をくれないか?」


 俺の言葉にエルマードは微笑み、そして、うなずいた。

 真剣な表情で。


「……うん。ボクも、がんばる。ボクだって──」


 特甲種として、箱詰めにされる運命だったかもしれない彼女。

 悪夢の技術が残り続ける限り、それがまた俺たちに牙を剥くかもしれないのだ。


「あの悪魔の計画をぶっ潰して、晴れて祝言だ」

「うん。ボクもお手伝い、するよ」


 水に濡れた黄金の髪に手を差し込みながら、俺は彼女の体を、その未来を、決意と共に抱きしめた。




第1部  失ったものは戻らない、二度と

 ── 了 ──


 ──────────

 お読みいただきありがとうございます。

 感想や評価をいただくたび、本当にありがたく読ませていただいています。

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 本作は、「白銀の騎士と金色の従者②」に続きます。

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 白銀の騎士と金色の従者②

 ~這い上がり騎士はケダモノなボクっ娘と共に牙を剥く~

 https://kakuyomu.jp/works/16817330669209840672

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白銀の騎士と金色の従者①~どん底騎士はわんこな少女を従えて、不条理世界をぶっ潰す!~ 狐月 耀藍 @kitunetuki_youran

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