第4話 デートおまけつき!

 リリナとのデートの日がやってきた。場所は横浜みなとみらい。待ち合わせの15分前に宅川と茶野がやってきた。


「よう。今日はよろしくな!ちゃんと二人を見守らせてもらうからな。まあダメ出しもするけど」


「よろしくね。ちゃんと優しくエスコートしてあげてね」


 BSS二人がなんかウエメセでほざいてくるのふぁっきん。僕はもう憂鬱だ。そしてリリナは時間通りにやってきた。デニムのミニスカートにハイヒール。そしてノースリーブのシャツ。胸の谷間が見えているセクシー系。こういう時はどう褒めるのか。まあ無難に褒めるべきなんだろうけど、僕は二人に監視されている。ぜひこの二人には今日のデートは失敗だったと認識して欲しい。


「宇佐美さん。今日はウルトラエロセクシーだね。谷間に指いてもいい?あとパンツ見えそうだけど見てもいいよね?可愛いしいいよね?」


 僕の誉め言葉を聞いてBSS二人はドン引きしている。宇佐美は頬を赤く染めて逆にもじもじしている。それをセクハラによる羞恥だと思ったのだろう二人は僕を睨みながらダメ出ししてくる。


「いまのはないだろ。普通にキモい」


「うん。いくらなんでも彼女相手にする言動じゃないよね」


 宅川はともかく茶野も童貞だと僕は確信した。僕の実感ではエッチした後の女の子はセクハラ染みた言動を好むようになるという性質があると確信している。実際に宇佐美は照れながらもどことなく微かに微笑みを浮かべている。


「あの二人とも。あたしは気にしてないから」


 それを聞いてBSS組はなんともリリナを憐れんでいるようなかなしそうな顔になる。デリカシーのないやつに付き合わされてるけど、頑張って体裁を取り繕っているように見えているのだろう。まあとりあえず出発である。その時リリナが自然と僕の腕を取ろうとしたので、僕はさらりと避けた。一応視線を送って注意を促す。リリナは不満げな顔を一瞬したけど、納得はしてくれたようだ。





 横浜は遊ぶところが意外とない。ショッピングモールだらけだし、海しかねぇ。


「あや、酒々井くん。今日は綺麗な感じだね。前みたいな恰好じゃないの?」


「まあ今日はまともなデートだし気合くらい入れますよ」


 今日の僕はまっとうなおしゃれスタイルだ。


「前みたいな格好って何?」


 宅川が興味を持ったのか口を挟んできた。こいつら後ろでじっとしてる気ないんだな。リリナがメッチャ冷めた目で見ている。


「バンドマンみたいな感じ?でねネイルが黒いの」


「え?ネイル?男なのに?」


 宅川が驚いている。別に男がネイルしたっていいやんけ。


「そうなの。ネイルサロンに行ってあたしを放っておいてネイルしてもらってたんだよ。変だよね」


 リリナは楽しそうに言った。


「変わり者アピールか?」


 茶野がちゃちゃいれてくるけど、べつにそんなんじゃない。


「ただそういうのが好きなだけ」


 僕はこの話を打ち切った。とりま海沿いに歩いて他愛ないお喋りをする。そして公園に辿り着いたのだが、並ぶベンチのすべてにカップルが座っていちゃいちゃしていた。リリナはそれを羨ましそうに見ていた。


「座るかい?」


 リリナはこくりと頷く。僕は空いているベンチを確保して座り、その隣にリリナが座った。BSS二人組はそれを羨ましそうに見ている。いたたまれねぇ。本来ならここでイチャイチャタイムで胸尻お腹を揉み倒すのだが、BSS組の前でやるほどの度胸はない。


「もう行こうか」


 僕は立ち上がりショッピングモールの方へと歩いていく。リリナは僕の隣を歩く。BSS組はその後ろをついてくる。





 ショッピングモールについてお茶することになった。リリナはタピオカティーを僕は特製プリン生クリームキャラメルソースバニラアイストッピングを頼んだ。タピオカは600円。僕のプリンは1200円。当然僕は男女平等なので堂々と割り勘した。


「おいちょっとまて」


「え?なに?」


「なにじゃねぇよ!なんで割り勘なんだよ!というかお前の方が高いもん頼んでじゃねぇか!実質奢らせだろそれ!」


「悪いけど、割り勘論争はNGね。僕らは割り勘って決めてるんだ」


 ラブホ代以外は割り勘というのがリリナと僕のルールだ。


「そもそも割り勘自体ダサいのに、自分の方が高いの恥ずかしいと思わないのかよ!」


 僕は首を傾げる。そこに恥ずかしさを覚えること自体が理解できない。


「あ、宇佐美さん。タピオカ分けて。プリンにあいそうなんで」


「わかった」


 リリナは僕にタピオカを分けてくれた。


「タピオカを女子から奪う?!なにそれ?!ひどくない?」


 そうかな?女子ってむしろセックスした相手には食べ物を積極的に分ける習性なくない?個人的には本能由来なんじゃねえかと信じてる。


「信じられない。酒々井君がデート慣れしてないのはわかったけど、いくらなんでもちょっとないよこれは」


 であるか。でも個性じゃん。そういうのって。ここのカップルのペースでやればいいだけの話だよ。やり方にこだわるのは童貞と行き遅れおばさんだけだと思う。


「まあまあ酒々井君は個性派だから」


 リリナが僕を庇う。


「リリナは優しすぎる。いくらなんでもこれはないぞ!」


「そうだよ!」


 BSS二人組の抗議は続く。僕はフルシカトしてプリンをスプーンで口に運ぶ。だが途中でそのスプーンのプリンを咥える誰かが現れた。


「もぐもぐ。これ美味しーですね先輩!」


「…栗花落?なんでここにいるの?」


 そこにいたのは栗花落だった。清楚系のロングワンピ。だけど横から見るとおっぱいの形がはっきりとわかるなんちゃって清楚系。そしてムスクの甘くて蠱惑的な香水がどこか悪い女のイメージを植え付けてくる。


「たまたまここに買い物にきててぇ。せんぱいがいたから声かけちゃいました!失礼しまーす!」


 栗花落は俺の隣に座った。それをリリナは嫌そうな顔で見ている。


「酒々井。お前、須和さんと知り合いなのか?」


「まあ同じ学校だし、ちょっと顔見知り」


 僕はプリンを食べながらそう答える。


「…間接キス」


 隣のリリナがそう呟いた。だけどそれは僕にしかたぶん聞こえていなかった。


「それより先輩彼女できたんですねー宇佐美さんでしたっけ。美人さーん。可愛いー素敵ですね!きゃー!」


 栗花落はリリナを興味深げに見ている。というかこいつ。絶対に知ってて介入してきたな。栗花落は常々俺を揚羽から救い出そうとしているのだが、時たま俺が出かけた先で偶然出会うことがある。僕は確信している。こいつ絶対にストーカー。


「ねぇねぇリリナさーん。先輩どうですか?」


「どうって?」


「エッチ!リリナさんって経験豊富なんでしょ?他の人と比べてどうですか?うまいですか?うまいですよね?あれはどうですか?じゃすとふぃっと?」


 リリナが顔を真っ赤にする。それを見て栗花落はにやにやとしている。


「そ、そんなのわからない」


「へぇ。わからない?あれぇ?うーん?でも経験豊富なんですよね。なのにわからない?ああ!なんだごめんなさいー!噂は嘘だったんですね!ごめんなさいビッチ扱いしちゃって。てへ」


 BSS組は経験豊富って話が実際に嘘であることを知っているだろうけど、改めて他人に確認されてどこかホッとしている。いやぁその気持ちわかるよ。好きな人が旦那とやりまくってる僕にはよくわかる。


「でも彼女だし先輩のは知ってるってことですよね?わたし経験ないんですけどエッチって気持ちいいんですか?」


「うん。なんかふわふわしてジーンってする感じ…あっ…」


 リリナまさかの自爆。空気が一瞬にして凍り付いたのを感じた。あ、お腹すげぇ痛い。トイレ行ってもいい?だめ?駄目だよねぇ…。僕は逃げ場がないことを悟ったのである。

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カノジョにDVされている俺を小悪魔後輩がNTRしようとしていますが、BSSしていたタワマン人妻のヒモになったのでもう遅い。手遅れだ。 園業公起 @muteki_succubus

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