第44話 女商人ギルティ?

 フー姉とデートをした次の日、俺はいつものように午前中に仕事をしてからゲームにログインをする。


 家の中に出現した俺の目の前には正座をさせられているフー姉がいた。

 なんかデジャブだな。あ、説教をしているであろうリリアがこちらに気づいた。


「コウタさん、お話があります。心当たりはありますよね?」


 ……はて、キスのことかな?もしくは接吻のこと?いや、口づけのことかもしれない。一体全体どれのことなんだ。


「あるようですね。はい、こちらに座ってください」


「はい……」


「随分と人目のある広場でお熱いことをしていたと近所の方に聞きました。間違いないですか?」


「はい」


「それはフーリアさんを恋人として受け入れたと認識していいのですか?」


「いや、それは違う。いや、この言い方もなんか違うな。みんなに待ってもらっていることについてはまだはっきりと答えてはいないよ」


「……つまりまだ恋人ではないと。ではフーリアさんあなたに聞きます。今回の行為は違反行為ではないですか?」


「え?違うわよ。そもそも3人揃うまで関係をすすめることを禁じただけじゃない。だからもうそれは無効よ?仮に有効だとしても関係は進めていないわよ?」


「……ぐぬぬぬ」


「そんなに悔しいならあなたもすればよろしいじゃない。どうせなら今からしても私は何も思わないわよ」


「馬鹿にしてます?この状況でするとか惨めじゃないですか!そういう行為は雰囲気が大事なんです!それに私は恋人という関係性を築いた上でそういうことをしたいんです!ペリカさん、先ほどから興味があまりなさそうですけどあなたは気にならないのですか?」


「え?うん。ボクは別に気にしないのです。一緒にいてくれるだけでいいのです。そういうことを僕にもしてくれたらうれしいけど、順番どうこうとかは興味ないのです」


「そんな……私に味方はいないの?」


 ペリカの発言により自分だけが憤っている状況に少なからずショックを受けているようだ。俺は少なくとも罪悪感があるため、フォローをしようと思ったが、ペリカが続いて発言をした。


「だからコウタには関係を進めるならリリアちゃんを優先してあげてほしいのです。どうせフー姉も関係性にこだわりはないはずなのです」


「ペリカちゃん……」


 それを聞いたリリアはうるっとした瞳でペリカを見つめる。


「フー姉もあんまり意地悪したらダメなのです。悪ぶっていないでちゃんと意図を説明しないとリリアちゃんは誤解しちゃうのです」


「あらら、ペリカちゃんは何も考えていなさそうで鋭いわね」


「喧嘩なら買うのです」


「冗談よ。意図っていうほど大げさなものじゃないわよ。単純にコウちゃん一人に考えさせていたらいつまでかかるか分からないから、何かのきっかけになればってところとあなたたちを焚き付けようとしたのよ。リリアさんだと今までの立場的にも本当の限界まで我慢しそうだったし。……まあ、私の欲望もすこしはあったけれど」


「8割くらい欲望なのです」


「もう~ペリカちゃん、シー!」


「……フーリアさん、そんなことを考えてくださっていたのですね。それなのに私が勝手に怒ってしまって……」


「リリアさん、私も少しやりすぎましたし言い方も悪かったです、ごめんなさい。それに8割欲望ですし」


「ふふっ。そうですね」


「そうよ、いつまでもごちゃごちゃ考えているコウちゃんが悪いのよ」


「ええ、そうですね」


 ……あれれ~、おかしいぞ~。女性陣が思いのたけをぶつけ心通わせた感じになり良い話だな~で終わりそうだったよね。


「コウタ、ギルティなのです」


「安心して。今まで通り答えはせかさないから。答えがどうでもよくなるかもしれないけど」


「私も自分の中で許せる範囲の中で攻めてみますね」


 はい、待たせている俺が悪いです。判決、コウタ有罪!待たせている分の攻めは受け入れる覚悟を決めました。

 そうしてお話も一段落したところで来客がやってきた。


「初めまして。私はハンター協会スローライフ村支部の支部長、ラッセルと申します。本日からこちらの村で勤めさせていただきますのでご挨拶に伺いました」


 目の前には茶褐色の髪色で眼鏡をかけた知的な雰囲気のある男性がいた。

 ハンター協会の支部長か。勝手な偏見だったけどハンター協会っていうくらいだから腕っぷしの強そうなゴツイ人が来るのかと思っていた。失礼かもしれないけど正直強そうには見えないし見る感じ線が細い。


「初めまして。私はコウタと申します。この家の裏にある牧場を管理しています」


「おや、あなたがコウタさんでしたか。お話は伺っています。精霊やモンスターについて何かお悩みがあればいつでもハンター協会をお尋ねください。それとこちらお近づきのしるしとしてどうぞお受け取りください」


 渡されたのはスイッチのようなものがついた金属の箱だった。スイッチの上側にSOSの文字が記載されている。


「これは緊急用の救援装置です。こちらのスイッチを押すとハンター協会に位置情報が送信されます。もしモンスターに襲われそうになって危ないときは押していただくと駆けつけることができます。初回は無料ですが2回目以降からは料金をいただきます。短期間に呼び出し回数が増えれば増えるほど料金が高くなるのでお気を付けください。まだそこまで危険な生物は確認できていませんがいつどのような事態に出くわすかわかりません。もし、村の外で活動したい場合にハンター協会で護衛を依頼することも可能ですので是非ご活用ください」


「ありがとうございます。そのうち伺わせてもらいますね」


「はい、ぜひお待ちしております」


 挨拶を終えたラッセルさんはすぐに別の家に向かっていった。


「コウタ、今日はボクとデートするのです。さっさと仕事を終わらせるのです」


「うん、わかったよ」


 森で危険なモンスターにあったら最悪の場合は救援装置を利用させてもらおう。それじゃあ、さっさと畑仕事終わらせて森デートに行きますか。

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VRMMOを引退してソロゲーでスローライフ ~仲良くなった別ゲーのNPCが押しかけてくる~ オクトパスボールマン @takoyaki0924

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