第22話 誤解と変わる関係

【仁】視点

秋穂と電話で話た後、何かあったのかもしれないと思ったが状況が分からない。

声から何かショックな出来事があったのだけは解る。

何だか胸騒ぎがするが、秋穂と話すまでは状況が掴めないので待つしかない。


20分程するとインターホンが鳴り、確認用の液晶画面を見ると秋穂だった。

部屋に招き入れて秋穂を見ると顔色が悪い、相当ショックなことがあったのだろう。

何故、樹を頼らない?

多分ではあるが、樹に関わる何かなのだろう。

樹の話と言う事は・・・雪にも・・・


「さっきぶりだな」

「直ぐに会ってくれて、ありがと」

「疑似でも彼氏だからな」

「ふふふ・・・そうね」


秋穂は力なく笑った。


「今日は泊めて欲しいの・・・」

「それはまずくないか?」

「今夜だけは一人になりたくないの!本当の恋人として接するだよね・・・」

「そういうルールではあるな」

「同盟者でしょ」

「そうだな・・・」

「話したいこともあるの・・・」

「大事なことなんだな・・・」

「そうね・・・雪美に関することでもあるわ」

「分った。泊って行けよ」

「ありがとう」


焦燥している彼女に先ずシャワーを浴びるように進めた。

俺はパジャマ代わりの洋服とバスタオルを用意して洗面所を後にした。

30分後着替えて現れた彼女にソファーに座ってもらいビールを飲みながら話を聞くこととした。

内容は先ほど秋穂が見たこと全てで、「樹と雪美が泣きながら抱きしめ合っていたけど、そこから先は見ていられなかった」と言って泣き崩れた。

俺も今泣いているのであろう。

涙らしきものが頬を伝って下へと落ちていった。

俺たちは何方からともなく泣きながら抱き締め合っていた。

そして一線を越えた。


慰め合っての行為かもしれないが彼女のその肌が艶めかしい。

俺は雪との時よりも激しく行為に及んでいる。

俺は雪に当てつけるように、秋穂もきっと樹に当てつけるようにお互いを求め合い激しく乱れれた。

秋穂の漏らす喘ぎ声を聞いていると更に俺は興奮して更に激しく彼女を求めた。

気が付くと朝を迎え、横に何も身に着けていない秋穂の寝姿がそこにあった。


スマホで時間を確認しようと画面を見ると、雪から電話とメッセージが届いていた。

今は見る気になれずそのまま時間だけを確認し画面を閉じた。


【桃花】視点

真司と2人で行動するのは始めてだ。

高校時代から樹を通しての友人ではあるが、知人を少し超えた位の軽い感じの関係性だったのでなんだか不思議な感じがしてしまう。

高校時代、樹の周りでトラブルが起きると彼も必ず巻き込まれると言った感じでトラブルと全く関係ないのに何時もトラブルの近くにいる第三者というのが彼の立場で、私がそのトラブルに介入すると調停するような立場に何時もなっていた。

生徒会長やってた私が普通は調停する立場なのだが、私的にはその立場は面白くないので何時も彼に任せていた。

彼は善人でお節介焼きなのだろうが、そこは凄く好感が持てる。

きっと彼の長所なのであろう。

そんなことを滔々と考えていると真司が話し掛けて来た。


「桃姫と2人で行動するとか初めての事だから何して良いか解らん」

「そこをリードするのが彼氏ではないのか?」

「関係も色々あるだろ?主夫も要る位だし、男が何でもリードというのも決まりでは無いだろ?」

「言っていることは解るが、私はお前以上に恋愛初心者だぞ、リードするのは恋愛の先輩としての勤めではないのか?」

「恋愛の先輩って・・・まぁノープランなのは理解した。そうだな~・・・喫茶店で話しながらプランなり何なり考えるか」

「了解した。それから疑似でも恋人なんだから桃姫は無いんじゃないか?」

「ああ・・・そうだったな・・・桃花、喫茶店で話そうか」

「OK、了解した。し・ん・じ」


喫茶店は真司の行き付けらしい。

喫茶店へ行くと顔見知りがそこにいた。

春人と静夏の2人が居た。

折角なので相席することとした。

他愛の無い話、4人でしているが、以前よりも静夏が真司を見る目が違う気がする。

何がと言われると恋愛経験の乏しい私には分かり兼ねるが、そんな気がする。

心境の変化でもあったのだろうか?

本当の恋人同士なのでおかしい訳ではないが、SGが良い方に作用しているのだろう。


【静夏】

以前よりも気持ちが軽くなった気がする。

樹っちに言われた「SGが終わってから考える」は問題の先送りの様に最初は感じた部分もあるが、そのことが自分を見詰直す事になり今は仁君の事で悩むことが減った様に感じる。

その分、真司の事を考える時間が増えた。

彼の事を考えると前以上の愛おしく感じる。

自分では不思議な感覚に感じるが、本当の恋人を思うのはごく当たり前のことある。

今まで自分がそれを出来ていなかったことを痛感するが、この感覚は心地よく罪悪感の欠片も感じない本当に満ち足りた気持ちになる。

偶々、真司と桃花さんと行き付けの喫茶店で出会って相席しているが、真司と会えたことが嬉しくて嬉しくて仕方がなかった。


【春人】視点

何か吹っ切れる出来事でもあったのだろうか?

静夏さんに初めて会った時、仁君の事が好きなんだろうという印象を受けたが、今の彼女を見ると心境の変化があったのが直ぐに解る。

真司さんも桃花も気が付いていると思うが、特に言う必要も無いだろう。

真司さんは元から静夏さんの事が好きだったと思うがこの変化をどう見るのだろうか?


ふと外の風景を見ていると意外なものが目に入った。

ジーとそっちの方を見ていると皆も気になったのか俺の視線の先を追った。

そして、静夏さんが「あっ」と少し声を漏らし、その意外な光景を相当驚いた顔で見ている。

他の面々も驚いた顔をしたが、桃花だけはニヤリと笑っている。

俺には玩具を与えられた子供の様に見えるのだが、多分、彼女の心の中は当たらずとも遠からずだと思う。

彼女は好奇心と言う魔物に魅入られた人なので・・・

親戚なので俺も似たところはあると思うが、彼女程では無いと思いたいところである。

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スワップゲーム 生虎 @221t2

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