ヒットラー総統、最後の言葉!!!

立花 優

第1話

 1945年4月。








 コツコツと、不気味な足音が、ベルリンの地下総統本部に響いた。








「ヒットラー総統、ついに、ソ連軍は、このベルリンに侵入して来ています。いかが、なされますか?」








多分、下級士官であろう部下が聞いた。








「対戦車砲、全部100門で、食い止めるのだ」








「しかし、総統閣下、肝心の弾薬が全くありません」








「ならば、エルベ川の堤防を、決壊させて、ソ連軍の侵入をくい止めろ!!!」








「しかし、総統閣下、ベルリンの地下街には、数万人のドイツ人が避難しています。


 ここで、エルベ川の堤防を決壊すれば、ソ連軍の進軍はある程度は止められるかも知れませんが、我が国民の数万人が水死しますよ」








「そんなもん知るか。まず、我々の生死が問題じゃ無いのかね?」








「ハイル・ヒットラー!!!」








 こうして、エルベ川の堤防は、強制的に壊された。水没死、約5万人とされている。








 しかし、米英に先を越されたく無いソ連軍は、破竹の勢いで、ベルリンに侵入して来た。








 もはや、これまでである。








 約1週間後、コツコツと、不気味な足音が、再び、ベルリンの地下総統本部に響いた。








 赤いビロードの布の上に、一丁の拳銃が置いてある。ドイツが世界に誇る拳銃のワルサーP38である。








「総統閣下、誠に、忍びがたいのですが、これで潔い死を、御決断下さい!!!」








「余に、死ねと言うのか!!!」








「そうは言いませんが、既に、ゲッベルス宣伝省は服毒自殺して、先ほど、焼却処分を致しました。


 歴史に名を刻む総統閣下が、見苦しい死を選ばれたら、後生の笑いものになります。」








「そうか、事態は、そこまで来ているのか?」








「残念ながら、現実からの逃避は不可能であります。総統閣下」








 だが、ここで、ヒットラー総統は、今までの歴史をも変える、トンデモ無い事を、口走ったのだ。








「やはり、あの大金に目がくらんだこの俺が馬鹿だったのか?








 それにしても、本物のヒットラー総統は、一体、何処に、逃げたのだ?昨日まで、隣の防空壕に潜んでいたのに!!!」


 

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