第35話 生まれ育った村で彼と幸せになります
「ミレイ、俺を受け入れてくれてありがとう。俺、本当は不安でたまらなかったんだ。あんな酷い使用人がいる屋敷で生活させてしまった事。あと一歩間違っていたら、本当にミレイを失っていたかもしれない、そう思うと、本当に俺、怖くて…正直もう王都は懲り懲りだ」
「アレックが責任を感じる事はないわ。確かにあの人たちには酷い目に合わされたけれど、きちんと裁かれたのでしょう。それに私には、やっぱり王都での生活は無理だって、気付かせてくれたし。でも、アレックは本当にそれでいいの?せっかく総裁の座まで登りつめたのに」
「何度も言うけれど、俺はミレイと幸せに暮らすために、剣を取ったんだ。ミレイに楽させてやりたい、立派な屋敷に住んで、綺麗なドレスや宝石をこれでもかと与えてやりたい。それがミレイも望んでいる事だと思っていたんだよ。だからこそ、色々と準備をした。でも…ミレイはそんな物、全く望んでいなかったみたいだけれど」
そう言って苦笑いしているアレック。
「ミレイはこの村で、働きながら平和に暮らすことを望んでいたんだよな。気が付かなくて本当にごめん。これからはのんびりこの村で暮らそう」
「ありがとう、アレック。さあ、お腹が空いたでしょう?ご飯にしましょう。すぐに準備するわね。せっかくだから、ルイーザさんに貰ったパンも食べないと」
急いで食事の準備をする。まさかアレックが帰って来るなんて、夢にも思わなかったから、そんな豪華なものは準備していない。でも、確かお肉があったわ。
家にある材料を駆使し、今できる料理を急いで作っていく。
「お待たせ、早速食べましょう」
「この短時間で、こんなにも沢山の料理を作ってくれたのかい?ミレイの手料理、久しぶりだな。早速頂くよ」
嬉しそうにアレックが頬張る。
「そうそう、この味。やっぱりミレイの料理が一番おいしいな。王都では豪華な料理ばかり食べていたが、なんだか物足りなくて。俺にはミレイの料理が口に合う様だ。これからはずっと、ミレイの料理が食べられると思うと嬉しいよ」
「もう、アレックったら。大げさなのだから。でも、嬉しいわ。明日はアレックの大好きな、お肉の煮込みを作るわね。後、お肉サンドも」
「それは嬉しいな。俺も明日から、仕事を探さないとな。それから、街の皆にも俺たちが近々結婚する事を伝えないと。ミレイ、お前、この村に帰って来てから、色々な男どもに言い寄られているらしいな。本当に油断も隙も無いのだから!」
「別に言い寄られてなんて…」
いない事もない。
「とにかく、明日は皆に俺が帰って来た事を伝えよう。大々的に結婚式を挙げる必要もないから、明日にでも籍を入れて。来月教会で、ひっそりと結婚式を挙げよう」
「ちょっと、アレック。急展開過ぎない?」
いくら何でも、急すぎる。そう思ったのだが…
「急じゃないよ。俺たち、十分すぎるほど待ったと思うんだ。それに早く籍を入れないと、またミレイがどこかに行ってしまうといけないもんな」
「もう私はどこにも行かないわよ。でも、アレックの気持ちは分かったわ。それじゃあ、明日婚姻届けを出しに行きましょう」
本当にこの人は!でも、そんなアレックが私は大好きなのだ。
翌日
「それでは婚姻届けは受理いたします。アレック殿、ミレイ殿、おめでとうございます」
朝一番で役所に行き、無事婚姻届けが受理されたのだ。
「ミレイ、これで俺たち、晴れて夫婦だな。随分と遠回りしてしまったけれど、やっとミレイとずっと一緒にいられる!」
嬉しそうにアレックが私を抱きしめている。
「さあ、皆にも報告に行きましょう。私達が夫婦になった事」
「そうだな、俺たちが夫婦になった事を皆に伝えて、もう二度とミレイを狙う男どもが近づかない様にしないと!」
「もう、アレックったら」
そんな話をしながら役所を出ると
「「「「アレック、お帰り。それから、2人とも結婚おめでとう」」」」
何と、役所の外にはたくさんの村人が集まっていたのだ。これは一体…
「ミレイちゃんとアレックが、朝一番に役所に行くと言っていただろう?だから、私が村の人たちを集めたんだよ。アレック、おかえり。それから、2人とも結婚おめでとう」
アリおばさんが笑顔でそう教えてくれたのだ。
「アレック、お前のお陰でこの国は平和になった。まさかこの国の英雄が、アレックだなんてな」
「せっかくミレイちゃんだけ帰って来たのに、まさかアレックまで帰ってくるだなんてな。俺、ミレイちゃん狙っていたのに…」
「俺もだよ。でも、アレックが帰って来たんじゃあ仕方がない。アレック、今度こそミレイちゃんの事、幸せにしてやれよ」
「ミレイ、よかったね。随分と辛い思いもしたけれど、やっとアレックと結ばれて」
「ありがとう、皆」
私達の為に皆がわざわざ集まってくれ、こうやって祝福してくれる。それが嬉しくてたまらない。
「ミレイ、俺たちこんなに皆に祝福されているのだから、絶対に幸せにならないとな」
「ええ、もちろんよ」
アレックがこの村を出て行った時、悲しくて辛くて心が潰されそうだった。それでも5年、アレックを待ち続けた。戦争が終わった後も、私たちはすれ違ってしまった。
でも…
やっと今日、アレックと結ばれることが出来たのだ。随分と遠回りしたけれど、これからはずっと一緒だ。
「アレック、帰って来てくれてありがとう。私、今とても幸せよ」
「ミレイこそ、俺を受け入れてくれてありがとう。ミレイ、愛しているよ」
「私もよ、アレック」
しっかり握られたこの手を、もう私は絶対に離さない。生まれ育ったこの故郷で、アレックと共に未来を歩んでいきたい。それが私の一番の幸せだから…
おしまい
~あとがき~
これにて完結です。
最後までお読みいただき、ありがとうございましたm(__)m
幼馴染を追って王都に出て来たけれど…うまく行きません @karamimi
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