第11話
ジリリリリリリリ
鳴り響く目覚まし時計の音で目を覚ました。7時にかけていた目覚ましを止める。窓からは日差しがさしこみ、車が道路を疾走するエンジン音が聞こえていた。枕元に置いてあるスマートフォンを拾い上げ、電源を付けると弟からメッセージが入っていた。
「寝坊しないように、ね。」
知らず笑みがこぼれる。返信はもう少し経ってから返そう。朝食を済ませシャワーを浴び、新しいスーツに身を包む。昨日のうちに用意しておいたご祝儀袋には、フリーターには限界の2万円が入っていた。
「ゆうた、そして瞳ちゃんへ。」から始まる手紙を読み直し、嚙まないように最後の練習を終わらせた。上野動物園のパンダの展示を見てから式場に向かおう。あの日以来、寝坊で怒られることが少し増えた。
アリとアブラムシ 井上 表裏 @asa-asada
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